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日本での実態|バスソルトとは何か3

「アッパー系」と呼ばれる脱法ドラッグ

脱法ドラッグの市場は、基本的に、麻薬や覚せい剤などの乱用状況を反映して変化しています。日本では、長年、覚せい剤が最も広く出回り乱用されているので、日本の脱法ドラッグ市場は、その影響を強く受けてきたということができます。
日本の脱法ドラッグ市場では、以前から、「アッパー系」と呼ばれる製品が販売されてきました。その中心は、アンフェタミンの仲間に属する化合物で、覚せい剤(メタンフェタミン)と似た作用がありながら、法規制の対象になっていないものが、次々と登場していたのです。「アロマ」「リキッド」などと称する小ビン入りのカラフルな液体状製品や、「試薬」「ケミカル」などと称する小さなカプセル容器に入れた粉末状の製品が販売されていました。
2007(平成19)年に指定薬物の制度が導入された際には、それまで出回っていた多様な脱法ドラッグが、一斉に指定薬物に指定されて法規制の対象になりましたが、その中には4FMP、HMDMA、BDBなどアンフェタミンの仲間の化合物も多数含まれていました。
また、当時の脱法ドラッグ市場では、MDMAに似た作用を売り物にする製品も多数出回っていました。前述したように、MDMAは化学構造からいうとアンフェタミンの仲間に属し、覚せい剤と共通する性質も持っています。これを少し変化させたのがメチロンで、カチノンと同タイプの構造をもつ仲間です。メチロンは、MDMAに似た脱法ドラッグとして人気を集めていましたが、2007(平成19)年に麻薬として規制されました。

さて、日本の脱法ドラッグ市場では、人気のあった「アッパー系」の成分や、メチロンが、2007年に相次いで規制対象になったわけですが、その後継品として、相次いで登場してきたのがカチノンの仲間の化合物です。
下の図は、近年指定薬物や麻薬に指定された薬物から、カチノンの仲間を抽出し、それらが日本の脱法ドラッグ市場に出回った時期をおおまかに示したものです。なお、それぞれの薬物が実際に出回った時期を正確に把握することは困難ですが、買上げ調査の結果などからおおよその出回り時期を推定しました。
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↑日本で出回ったカチノンの仲間の薬物(小森榮が作成)

こうした成分のほとんどは、「アッパー系」のドラッグとして、あるいは性感を高める効果をうたったドラッグとして、主に液体状で販売されてきました。粉末状の製品も流通していましたが、出回る量は限られていました。下の写真は東京都の試買調査でエトカチノンが検出された例ですが(2011年7月)、小さなガラス瓶入りの液体状ドラッグが、「アロマリキッド」として販売されていました。こうした製品形態は、以前からよく見かけてきたものです。
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↑東京都「プレス公表概要(平成23年7月)」より転載
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kenkou/iyaku/d_taisaku/chousa.files/H23.7.pdf

「バスソルト」成分が急増

市場に変化が見え始めたのは、2011年ころからです。欧米で「バスソルト」として話題になっている製品が、そのまま輸入されて一部で出回り始めたのです。同時に、国内で出回る製品からカチノン系の成分が検出されることが増え始めました。欧米で人気を獲得した「バスソルト」の成分が、日本にも本格的に流入してくるようになったのです。依然として、液体状の製品が主流でしたが、このころから、次第に粉末状製品の流通も増え始めたようです。
やがて、「バスソルト」の成分は、「ハーブ」として販売される乾燥植物製品に添加されて出回るようにまります。折から「ハーブ」旋風が勢いを増す中で、より刺激的な効果を得られる「ハーブ」として、カチノン系の薬物を添加した製品が急速に人気を獲得し始めたのです。2012年にはいって、買上げ調査で検出されるカチノン系の成分は急速に増加しました。
下の写真は、最近の買上げ調査でカチノン系の成分が検出された例です。乾燥植物に添加した「ハーブ」製品や、液体状の製品から、MDPVやα-PVPが検出されています。
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↑埼玉県の買上げ調査でMDPVが検出された例(2012年8月13日発表)
埼玉県「指定薬物を含有する違法ドラッグの発見!」から転載
http://www.pref.saitama.lg.jp/page/ihoudrug24-2.html

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↑新潟県の買上げ調査で「ハーブ」製品からα-PVPが検出された例(2012年11月15日発表)
新潟県「県の脱法ハーブ買上調査で新規指定薬物が検出されました」から転載
http://www.pref.niigata.lg.jp/iyaku/1352757661469.html


また、このころ、日本でも「バスソルト」への関心が急に高まり始めました。きっかけは、2012年5月に米マイアミ州で起きたいわゆる「ゾンビ事件」で、当初は「バスソルト」の影響だと伝えられたことからでした。結局、この事件では当事者の体内から脱法ドラッグ成分は検出されなかったのですが、「バスソルト」の強烈な作用が世間の注目を集め、このころから、わが国でも、白い粉末状の脱法ドラッグを「バスソルト」と呼んで使う人たちが増え始めたようです。

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