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闘いのゴングが鳴った「6G開発競争」――中国に負けられない日米の死活問題 - 山田敏弘

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2030年代には到来するという6Gの世界(写真はイメージです)

現実社会とデジタル空間が一体化するという「6G」時代に向けて、早くも各国の主導権争いが始まっている。強気の中国、5Gでの後れを取り戻そうと研究開発を急ぐ日米。国際安全保障をも左右する勝負の行方は――。

 物理学者で発明家のニコラ・テスラは、1926年のインタビューでこんな言葉を残している。

「世界中で完全にワイアレス通信が敷かれれば、世界全体が巨大な頭脳になる」

 この「予言」は100年ほどが経った今、着実に現実になりつつある。

 移動通信システムは現在、4G(第4世代移動通信システム)から5G(第5世代移動通信システム)への移行が世界でスタートしている。5Gは新型コロナウイルス感染症の蔓延などで失速した印象は否めないが、コロナ後には、IoT(モノのインターネット)などで利用が本格化していくだろう。

 そして早くも、5Gの次を行く6G(第6世代移動通信システム)の開発競争が熱を帯びている。

中国「6G白書」が見通す未来

 中国国営の新華社通信は2021年6月、中国政府系の6G推進団体「IMT-2030(6G)」が、「6G全体ビジョンと潜在的キーテクノロジー白書」を発表したと報じている(日本語記事:https://www.afpbb.com/articles/-/3350608)。

 記事では、白書についてこう書いている。「6Gは5Gを基礎に、全てのモノがつながる『Internet of Everything』が全ての知能がつながる『Intelligence of Everything』へと飛躍し、物理世界と仮想世界を結び付けるとの認識も示した。人々の生活の質を持続的に向上させ、社会の生産方式の転換と高度化を促進するほか、人類社会の持続可能な発展という究極の目標に貢献するという」

 テスラが予測した「頭脳」のイメージと重なる。

 中国科学技術省は中国国内で5Gの一般利用が始まった2019年11月1日の数日後に、国策として6G開発を進めると宣言。以降、実際に研究はかなり進められていると聞く。

 2020年11月には6Gに関係する試験衛星を軌道に打ち上げたことも判明している。

 今回の白書では、2030年頃には6Gの商用利用が可能になると見て、研究開発をさらに加速させる指針を明らかにした。

 中国共産党系の英字紙「グローバル・タイムズ」によれば、中国は6Gに関して、5Gのように通信機器を世界に売り込んでいくという方法ではなく、「中国独自に6Gという根本的なシステムそのものを構築することを狙っている」という研究者の発言を紹介している。

現実社会とデジタル空間が一体化する世界

 6Gの時代には、どんな世界が広がっているのか。それを繙くにはまず、現在サービス提供が始まったばかりの5Gについて知る必要がある。

 今主流となっている4Gと比べると、次世代の5Gでは、通信の速度が現在の100倍速くなり、扱えるデータ容量は1000倍にもなる。わかりやすい例で言うと、今なら映画1本をインターネットでダウンロードするのに5分ほどかかっているものが、5Gを使えば、3秒ということになる。

 また5Gには、通信の際の遅延がほとんどなく、数多くのデバイスと同時に接続できる。通信中のタイムラグは1ミリ秒(1000分の1秒)以下になり、電話などでも声が届くのに間が空くようなことはなくなる。さらに、1平方キロあたり、100万台の機器を同時に接続できる多接続が可能だ。データ通信も安定し、電力消費量も低い。

 そんな次世代の通信システムが当たり前のように使われるようになるのには10年ほどがかかると言われているが、その先にあるのが、5Gからさらに進化した6Gである。

 システムとしては、6Gは5Gと比べて通信速度が10倍になる。同時に接続できる機器の数も10倍になり、消費電力は100分の1になる。社会全体から身の回りのものまで何もかもが、私たちの自覚できないほどネットワークに組み込まれる。とにかくより速く、より多接続になると見られている。

 現在とは比べものにならない速度と多接続の環境になることで、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)などの先端技術を織り混ぜた「XR」と呼ばれる世界が当たり前になる。XRの世界では、現実社会とデジタル空間がすべてデータ化され、シームレスに一体化しているだろう。

 そうなると、現在私たちが抱えているさまざまな社会的問題を解決できるとも言われている。

 例えば、少子高齢化とそれに伴う労働人口の不足、地球温暖化などへの対応も、6Gのテクノロジーが適応していくという。リモートでのコミュニケーションやオートメーションなどが単純労働を担い、消費電力も少なくなることで電力の節約に貢献する。これらが大規模に行われれば社会的なインパクトを生むのは間違いない。

 中国の「IMT-2030(6G)」の白書は、6Gが応用されるさまざまなビジネス分野を想定している。

 例えば、巨大なクラウドを使ったXR、ホログラムを使ったコミュニケーション、神経回路への接続、知能による相互通信、デジタルツイン(実際の空間の情報を取り込んでサイバー空間上に同じものを再現すること)などを提唱。こうした技術を、デジタルトランスフォーメーション(日本では「DX」と呼ばれるが、この呼び名は世界的にはあまり使われておらず、そのままデジタルトランスフォーメーションと呼ぶのが一般的だ)で、医療分野や製造業などに組み込むという。

 6Gの時代には世界がSF映画にまた近づいているということだろう。

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