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「『俺より稼げたら家事やるよ』のウソ」妻の稼ぎが増えても夫の家事が全然増えない理由

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妻が夫と同等かそれ以上に稼いでいても、夫の家事・育児の分担が増えない。拓殖大学の佐藤一磨さんの研究で、妻の経済力は夫の家庭進出に影響しないことが明らかになりました。妻が家計の8割~すべてを担っている場合でも、夫の家事分担割合は15%どまり。その理由とは――。

男性が自宅でリラックス

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/diego_cervo

夫婦喧嘩必至の言葉をなぜ吐くのか

筆者は経済学の視点から、女性の幸福度を研究しています。特に興味を持っているのが、「女性が幸せになる条件は何なのか」という点です。

このような仕事柄、女性がどのような点に悩んでいるのかを書いた記事をよく読みます。

この中で「おっ!」と思ったのが、「俺よりも稼げたら家事をやるよ」と題された複数の記事です。

これらの記事では、妻が夫に家事・育児へのサポートをお願いした際、上記の内容を言われて悔しい、ということが書かれていました。

この記事を読んだ私の感想は、2つです。

1つ目は、夫の態度についてです。

正直な感想は「無茶しやがって。骨は拾ってやる」です。上記のような内容を言ってしまえば、夫婦喧嘩は避けられないでしょう。それなのになぜそんなことを言うのか、といった感じでしょうか。

「俺よりも稼げたら家事をやるよ」は妥当なのか

2つ目は、「俺よりも稼げたら家事をやるよ」が経済学の視点から見て、妥当なのかという点です。

経済学の視点から見た場合、今回の問題は、家庭内において仕事と家事・育児の負担を夫婦間でどのように配分するのかという問いに読み換えることができます。

家庭内における時間配分の問題は、家族の経済学といわれる分野で長年分析されており、大きく2つの理論が存在しています。

これらの理論に照らし合わせた際、「俺よりも稼げたら家事をやるよ」は妥当なのか考えてみたいと思います。

分業の理論=夫婦それぞれが得意分野に特化する

さて、ここから理論の話になっていきます。少しだけお付き合いください。

家庭内における家事・育児時間の配分に関する理論の1つ目は、「分業の理論」です。

この理論はそもそもなぜ人々が結婚するのかという点を説明するための経済理論なのですが、家庭内における夫婦の家事・育児時間の配分を説明するのにも役立ちます。

分業の理論のポイントは、夫婦それぞれがパートナーよりも得意な分野に特化することで、独身時よりも多くの生産物を生み出すことができると指摘している点です。

最もわかりやすい例は、「夫=仕事、妻=家事・育児」という組み合わせです。

男女間賃金格差が大きい社会の場合、妻よりも夫が外で賃金労働に従事した方が世帯所得の上昇に寄与します。これに対して、妻は夫が外で働くぶん、家事・育児全般を担当することになります。

交渉の理論=夫婦間で交渉し、さまざまな配分を決める

2つ目の理論は、「交渉の理論」です。

この理論は家庭内におけるさまざまな資源配分の決まり方を説明するための経済理論であり、その中に家事・育児時間の配分も含まれています。

書籍

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/jovan_epn

交渉の理論のポイントは、家庭内の人々(主に夫と妻)がさまざまな資源配分のあり方を決定する際、「経済力が交渉力の強さに反映される」と考えている点です。

平たく言えば、「お金を多く持っている方が自分に有利なように家庭内の資源配分を決めることができる」というわけです。

一般的に余暇と家事・育児では後者の負担が重いため、家庭内で所得水準が高い人ほど、家事・育児時間が少なくなると予想されます。

両理論とも、日本の女性の家事・育児負担が大きくなると予想

分業の理論と交渉の理論について見てきましたが、これらの理論から、日本の家庭における家事・育児の時間配分はどのようになると予想されるでしょうか。

日本では依然として男女間賃金格差があり、女性の所得水準が男性よりも相対的に低いため、いずれの理論からも「女性の家事・育児時間が多くなる」と予想されます。

この理論の予想と日本の現実は合致しているように見えます。

これらの理論のポイントは、経済力、特に夫婦間における相対的な所得水準の高さが家事・育児時間に影響を及ぼす点です。

いわば、「お金稼ぐ方が家事・育児しなくてもいいよね」という主張に理論的根拠を与えています。

冒頭の「俺よりも稼げたら家事をやるよ=俺よりも稼ぎが少ないんだから家事はお願いね」という話は、あながち間違いではないというわけです。

ここまで読まれた読者の方の中には「経済学はなんて冷たいんだ」と思われるかもしれませんが、少し待ってください。

妻が稼ぐようになれば、本当に夫は家事をするのか

このような理論から得られた予想が本当に正しいかどうかは、実際のデータを見てから最終的な判断を下した方が良いでしょう。

そこで、実際にデータを使って、「夫婦で同じ額を稼ぐようになれば、夫の家事・育児時間も大きく増えるのか」という点を見ていきたいと思います。

経済力が重要なポイントであるならば、夫婦それぞれの稼ぎが同じになった場合、家事・育児時間も夫婦間で均等になりそうです。

はたして実態はどうなのでしょうか。

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