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安倍総理は物価が上がると何故景気がよくなるか説明する義務がある!

 日銀は、本日の金融政策決定会合で、2%の物価目標値を採用することを決定し、併せて政府との共同文書の内容を決定すると報じられています。

 まあ、それしか道はないのでしょう。

 アベノミクスというか、安倍総理と浜田教授の金融政策に関する考えに従えば、それしかないということです。また、安倍総理が言うように、これだけ為替と株価が反応している訳ですから、その意味では勝負あったというべきで、だから誰もアベノミクスに反対できないムードが出来上がっているのです。

 まあ、それならそれでいいでしょう。民主的な手続きを経て政権が交替し、そして安倍内閣が誕生した。そして、その安倍総理が大胆な金融政策を主張している訳ですから、仕方がないと言えば、仕方がない。

 しかし、安倍政権の面々や浜田教授が言っているとおり、日銀には手段の独立性は認めるが、目標の独立性は認めないというのであれば、2%の物価目標値を日銀に押し付ける以上、政府として、否、安倍総理自身として、何故2%の物価目標値を設けることが必要であるのか、国民に分かり易く説明する責任があるのです。

 というのも、確かに専門家と同様に国民のなかにもインフレターゲットを設けることを強く主張する人々がいるのはそのとおりなですが、しかし、そのような人々は国民のなかの極一部に過ぎません

 もちろん、多くの国民が給料が上がるような時代に戻って欲しいと願っているのはそのとおりでしょう。しかし、同時に、多くの国民は、物価が上がれば生活が苦しくなるという不安感を抱いているのも事実。だから安倍総理は、この際、国民に向かって分かり易く説明すべきなのです。

 1月11日の、緊急経済対策を決定した際に行った記者会見でも、そのことについては何も言っていないのです。言っているのは、3本の矢とパイを大きくするという話だけ。

 まあ、私がこんなことを言えば、リフレ派の人々は次のように言うかもしれません。

 デフレから脱却すること優先課題と言っているのだから、そのための目標値を設けるのは当たり前ではないか、と。

 デフレの定義、物価が持続的に低下することと理解するのであれば、確かに、物価上昇率を恒常的にプラスに維持できれば、それでデフレから脱却したことになるのはそのとおりでしょう

 ですが、国民の多くは、それから後の話を聞きたいのです

 物価が毎年2%程度上がるようになったとしましょうついでに、可能性は低いものの給料も物価に合わせて毎年2%程度上がるようになったとしましょう

 しかし、それでは実質成長率がゼロということですから、今までと殆ど変りがない。なのに、物価が2%上がることがそれほど重要なことなのか、と。

 もっと言えば、実現の可能性がないことは言わない、というのが信条の安倍政権、物価上昇率の目標値を2%とする一方で、名目GDPの伸び率は3%を目標とすると言っている訳ですから、実質成長率は1%程度しかならないのです。

 できもしないことを言うよりも、何も言わない方がいいかもしれない。しかし、1%の実質成長率を実現することがアベノミクスのパイを大きくするという意味なのでしょうか?

 しかし、実質成長率が年率1%だったら、今までとどこがどう違うのでしょうか?

 例えば、これまでは仮に物価が毎年1%程度下落していたとして、その一方で、名目GDPの伸び率が0%だとすれば、実質GDPの伸び率は1%になる訳ですが、その状態に比べて何がどういいと言うのでしょうか?

 「縮小均衡の再配分(再分配)から成長による富の創出」というのは安倍総理の常套句です。

 ですが、実質成長率に変わりがなければ、どうして富が新たに創出されたと言うことができるのでしょう? パイの大きさは変わらないではありませんか? 富が増えたと思うのはお金の価値が落ちたために、名目ベースでそう見えるだけの話で、我々が享受できる食べ物や着る物、或いはそれ以外の様々な商品、様々なサービスの量に違いはないのです。

 だから、どういうメカニズムで富が追加的に創出されることになるのか、そこのところを分かり易く国民に説明して欲しいのです。

 で、その点について、どのような説明があり得るのかを勝手に想像すれ、先日も言ったとおり、シナリオは3つほどになるのです。

1. 物価が上昇すると、人々は、デフレ局面と正反対に、商品の価格が上がる前に購入しようとて消費が活性化するから。

2.物価が上昇する一方で、名目金利を上がらないようにすることができれば、実質金利が低下することとなるが、そうなれば企業の実質的な金利負担が軽くなるので、投資活動が促進されるから。

3. 物価が上昇するということは通貨価値が低下することを意味するが、そうなれば円の相対的な対外価値が低下する、つまり円が安くなるので日本の輸出にとって有利になるから。 

 
 さあ、如何でしょう?

 どれが安倍内閣の考えなのでしょう? 或いは、3つともそうであるとお考えなのでしょうか?

 しかし、それら3つの理由について、どれだけの国民が納得することができるでしょう

 毎年2%程度物価が上がるようになったとして、我々国民消費行動に変化が生じるのか?

 多分それほどの効果はないでしょう。これが、オイルショック後のモノ不足によって狂乱物価になった時のような状況になれば話は別ですが、2%程度の物価の上昇が起きただけでは、我々消費者は殆ど反応を示さないでしょう

 では、物価が上がる一方で金利が上がらなければ、実質金利が下がるので、それで企業の投資活動を刺激するという考えは如何でしょう?

 これも相当に怪しい。だって、物価が上がれば、当然金利はそれに反応して上がり始めるからなのです。

 百歩譲って、金利はそれほど上がらずに、実際に実質金利が下がったとしても、それによって企業が投資活動を増やすことになるかどうかは大いに疑問です。いずれにしても、そのことについては、企業経営者に聞け分かることなのです

 では3番目の、円安になるから日本の輸出にとって有利になるという考えはどうでしょう?

 まあ、そのような理由なら輸出企業は大歓迎するかと、一瞬想像する訳ですが、実際に幾ら円安になったとしても、それがインフレの結果としての円安であるならば、輸出企業としては、インフレになった分、製品価格を引き上げなければ採算が取れないので、従って、円安の結果、円ベースの輸出代金が増えても、全然利潤が増えことにはならないのです

 例えば、1ドル80円でどうにか採算が取れていた輸出企業にとって、急に1ドルが90円になれば、商品を1ドル分売る毎に80円得ていたのが90円になり、10円利潤が増える計算になりますが、もし、国内でインフレになった結果、80円のものが90円に値上がりしたとすれば、1ドル分の売り上げによる円ベースの売上代金が80円から90円に増えたとしても、それでやっとペイするだけのことですから、実質的には利潤は増えないのです。

 こんなことを私が言うと、どうして否定的なことばかり言うのか、とか、だったら対案を示せとか話を逸らす人々がいるのも予想しています。

 しかし、少なくても、総理は日銀に対し2%の物価目標値が正しいと主張したのですから、ちゃんとご自分で、国民に分かり易く説明する義務があるのです。

 「座して死を待つよりもいいではないか」なんていう言い方も最近よく見かけますが、それも変じゃありませんか?

 どうして、普通に行動しているだけで、座して死ぬことになるのでしょうか?

 その辺の発想にも危ういものを感じるのです。

 第二次大戦が始まったのも、元はと言えば、日本が不況に陥り、そして大陸に活路を求めることから始まった訳ですから

 あの当時も座して死を待つのか、なんて言って戦争に突入して行ったのです。

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