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「相談」は問題の解決だけではなく、ストレスを溜めない必要なもの - 「賢人論。」第141回(中編)樺沢紫苑氏

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医学や脳科学に基づいたビジネス書が大ヒットしている精神科医の樺沢紫苑氏は、認知症の脳科学研究にも従事し、多くの高齢者の悩みとも向き合ってきた。認知症高齢者の介護の悩みのタネとなっている夜間せん妄や徘徊に対して、『精神科医が見つけた 3つの幸福 最新科学から最高の人生をつくる方法』で紹介する取り組みで、どのように解決の手がかりが得られるのかを語っていただいた。

取材・文/みんなの介護

せん妄は散歩で防げる

みんなの介護 認知症高齢者の介護でよく問題になるのが、夜間のせん妄です。効果的な予防方法はありますでしょうか?

樺沢 「朝散歩」というのを私はおすすめしています。朝散歩をするとセロトニンが活性化して、体内時計をリセットしてくれます。

高齢者が夜中に起きるのは、体内時計が狂ってしまっているからなんですよ。朝きちんと散歩して、太陽の光を浴びると「今、朝ですよ」ということを脳と身体が認識してリズムが整います。

けれども、家の中や施設から一歩も出ない状態で生活していると、体内時計がリセットされない。そうなってくると体内時計がずれまくってしまうんですね。

朝の日向ぼっこでもいいんですよ。寝たきりの高齢者でもベランダの日の当たるところに行って、ご飯を食べてもらうとか、朝の30分間ぐらい座っていてもらう。起きてからできれば1時間以内、無理なら午前中に日向ぼっこをしてもらうというのが体内時計のリセットになります。また、朝散歩や日向ぼっこは、脳内物質の指揮者と言われているセロトニンを活性化するので、脳のバランスを総じて調整してくれます。

せん妄などの夜間の不穏状態というのは、脳内物質のバランスがおかしくなった状態です。そのため、朝散歩や午前の日向ぼっこは間違いなく効きます。また、人間というのは太陽の光を浴びてから15~16時間後に眠気が出てきます。

ですから、7時に散歩をして太陽の光を浴びると、ちょうど22時から23時ぐらいに眠気が出てくるんです。不眠症で睡眠薬を飲んでいるご高齢の方は、5人に1人以上いると思います。

散歩をすると、眠気が自然と出てきます。そして睡眠にも深く入りやすくなる。そうすると、夜間の不穏のリスクも大きく減らすことができるようになります。

みんなの介護 介護現場において夜間に対応できる職員も限られる中、夜間せん妄などはストレスや業務の負担になっています。そういったところから始めるだけで改善がみられる可能性が非常に高いというのは興味深いです。

徘徊とは自動運動装置である

みんなの介護 徘徊についてもなにかできることはありますでしょうか?

樺沢 徘徊ってなんだというと、自動運動装置だと思っています。運動は脳にいいのですが、普段から運動不足になっていることで、脳が強制的に運動させようとしているんじゃないかというのが私の考えです。誰もそんなことを言っている人はいないんですけども。だから足腰が悪くない徘徊のご高齢者って本当に、何キロもてくてく歩いて行っちゃうじゃないですか。逆に言うと、普段から運動しておけばそんなことにはならないんですね。夜間のせん妄と徘徊は、実はこんなに簡単な方法で予防できるということです。

あと、全力で介護するという問題もありますね。寝たきりは日本しかないと言われているんですけども、それは、本来だったら歩かせるべきところを「そんなに痛いんだったら無理して歩かなくていいよ」と言ってしまう部分が問題。家族が良かれと思って言っていることが、本当は介護状態や認知症をひどくしている可能性があるんですね。座ったままで手の運動や、立ったり座ったりの簡単な運動、体操でもいいので、そういうのを日常で行うことが必要です。

介護はマラソンと同じで全力でやると必ず燃え尽きるんですよね。なので、「介護は7割ぐらいの力でやればいいんじゃないか」というのが、私の考えです。本人になるべく動いてもらうなどして、ご自身の能力を奪わないようにすることも大切です。

みんなの介護 なるほど。各家庭で予防の知識を持つ人が増えることで、日本の介護問題は解決に近づくでしょうか?

樺沢 家族が知識を持つことが高齢者の介護予防につながると私は考えています。本を書いたり、YouTubeでの配信を通して、一人でも多くの人に知ってほしいと思っています。皆さん健康に関する知識や情報をあまりにも知らなさすぎるんですね。1日20分の散歩で認知症を半分に減らせるわけだから、全員やったらいい。それだけで医療費の問題はほとんど解決しますよ。1日20分の散歩で寿命が5年延びると言われています。たったそれぐらいの運動で、生活習慣病を予防することができるわけです。

こういうことを知っているか知らないか。皆さんも健康の情報をちゃんと集めて勉強していかないと、良かれと思ってやっていることが、実は病気の原因になっているということもあり得ます。

みんなの介護 孤独の解消というところで、悩みを周りに話せず抱え込んでしまう高齢者の方に対してはどのようにアドバイスをされますか?

樺沢 趣味に関するサークル活動がすごく良いと思うんですね。老人クラブ的なものや習いごとなどです。そういうところに行くと、自然とおしゃべりをしますよね。それに、お友達もできやすい。だから、コミュニティ(人の集まる場所)に参加するということがとても大切ですね。それは、いわゆる町内会とかでもいいんです。ご高齢の方が町内会の役員をするというのは、社会に参画するきっかけになるので、ご本人にとって良いことなんですよね。習いごとなどをしていないと、家にいるだけでどこにも所属していないケースが多くなりますよね。それが孤独なんです。週1回のサークル活動を通していろんな人達に会ったら必ずおしゃべりしますし、終わった後に皆でお茶に行くこともある。

あと趣味があるとお友達もできやすい。悩みを誰かに相談しましょうと言っても、普段から話をしてない人にいきなり打ち明けるわけにはいかないんですね。だから普段から雑談でいろいろなことを話せる友達をつくっておく、ということが重要なのです。そのためには、何かしらのコミュニティに参画することが大切です。ご高齢になると、次々と昔の親友も亡くなっていきます。そのため、家の中ばかりにいるのではなく、そういった趣味を通して友人を増やしていくことが心の安全装置になります。

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