- 2021年06月17日 16:22 (配信日時 06月17日 11:15)
「海に散骨、墓の撤去で各数10万円」爆増中の"墓じまい"を強行して痛い目にあう人の特徴
1/2先祖が眠る墓を撤去する「墓じまい」の件数がこの15年間で約2倍に増えた。ジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳氏は、「遠方にある墓の維持は面倒で、年数万円の管理費などがもったいない、という人もいますが、お墓の撤去費用、新規の供養墓への納骨費用、あるいは海洋散骨費などで、計100万円以上かかることもある」という――。
墓じまいの風景 - 撮影=鵜飼秀徳
この15年間で約2倍「墓じまい」の知られざる落とし穴
「墓じまい」が増えている。
墓じまいとは、先祖代々、継承されてきた墓を撤去し、遺骨を別の場所の永代供養墓に移したり、海洋散骨したりすることである。
しかし、そこには落とし穴が隠されている。近年の「ブーム」に乗って、安易に墓じまいをしてしまったがために、むしろ金銭的にも精神的にも大きな負担を強いられるケースが出ているのだ。そうした事実を知らぬまま強行して痛い目にあう人も少なくない。もし、墓じまいしたいと考えているなら、今一度立ち止まって、冷静にこの記事を読んでから判断しても遅くないはずだ。
近年の墓じまいの急増ぶりを数字で示そう。
厚生労働省「衛生行政報告例」によると、最新の調査である2019年度の改葬(事実上の墓じまい)の数は全国で12万4346件。5年ごとに遡って改葬数の変化を見てみると、2014年度では8万3574件。2009年度では7万2050、2004年度では6万8421件だった。15年前の水準の倍近くになっている。
墓じまいとは、かつては絶家に伴う「無縁化」のことを指した。だが、墓地継承者(縁者)が存在するのに墓じまいする動きが近年目立っている。あえて厳しい言い方をすれば、縁者がいるのに墓じまいする行為は「墓暴き」に近い。
墓じまいを希望する人の5つの共通項
墓じまいを希望する人の共通項としておおむね、以下の5つが挙げられる。
①「墓を承継する子や孫がいない」
②「お墓の維持にはコストがかかるうえ、管理が大変。子や孫に迷惑をかけたくない」
③「都会に移り住んでいるため、故郷の墓の管理ができない」
④「そもそも墓は不要。散骨でいい」
⑤「菩提寺の住職が気に入らない」
「何10万円もの離檀料を請求された」「住職が離檀させてくれない」
それぞれが、もっともな理由のようにも思える。
墓じまいは、墓が菩提寺にあるか、公共霊園にあるかにより対応が変わってくる。より厄介、と思われているのは前者、寺院に墓がある場合だ。
菩提寺に先祖代々の墓がある場合、墓じまいと同時に離檀(檀家をやめること)することになる。その際、住職と檀家との間で、「何10万円もの離檀料を請求された」「住職が離檀させてくれない」などのトラブルが報告されている。
高額の離檀料を払わなければ、改葬許可証(墓じまいの場合は墓地管理者の同意が必要)にサインしないというのは、人質ならぬ「骨質」を取っているのと同然であり、もってのほかである。
そもそも「離檀料」の法的根拠は存在しないので、仮に菩提寺から非常識な料金を請求された場合は断ってよい。一方で、菩提寺に長年お世話になったお礼として、常識の範囲内(数万円程度)でお布施を包むのは最低限の「マナー」というものだろう。
住職がどうしても離檀を受け入れない場合は、行政書士や弁護士などの代理人を立てるのもよいし、あるいはその寺院の檀家総代(檀家の代表)や、所属する包括宗教法人(寺院が所属する宗派の宗務庁)に苦情申立てしてもよいかもしれない。
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Xavier Arnau
以上のような事例は、前出リストの⑤「菩提寺の住職が気に入らない」に該当する。明らかに寺院側に問題があり、改善の余地がない場合は、菩提寺からの撤退を考えても致し方ないかもしれない。そのようなトンデモ和尚のいる寺院は早晩、潰れてしまうのがオチだろう。公共霊園での場合、墓じまいはこうした面倒なことはない。
「お墓の維持は高コストで管理が大変」という人が一番損する恐れ
対応が比較的簡単なのは、①「墓を承継する子や孫がいない」場合だ。菩提寺住職に相談し、先祖代々の遺骨はその境内にある永代供養塔などに移し、最後に納骨される自分や配偶者も永代供養塔への納骨予約をしておけばよい。
墓じまいを希望する理由の典型例は、②「お墓の維持にはコストがかかるうえ、管理が大変。子や孫に迷惑をかけたくない」かもしれない。しかし、このコスト重視での墓じまいを考える人こそが結果的に一番、損をする恐れがある。
そもそも墓にかかるコストとは、年間の管理費(に加えて護持費を設定している寺も多い)と法事の際のお布施だ。管理費は年に1万~2万円程度が多い。
管理費の根拠は、常日頃の墓地・境内清掃の人件費や水道代などの固定費を、檀家の頭数で割った数。墓地の管理費を寺院だけで負担するのは不可能なのだ。清掃にかかる費用だけで、小規模な寺院ですら年間100万円以上はかかる。
だが、管理費を取っていながら、墓地の雑草はボーボー、いつもゴミが散乱しているような寺の場合、「管理費を払っているのだから、きちんと清掃してもらいたい」とクレームをつけるべきだろう。
護持費は伽藍の修繕積立金のようなものだ。一般的には管理費・護持費を合わせてもせいぜい2万~3万円だ。お墓の年間コストといえば、これだけである。
法事は1周忌や7回忌、33回忌などそうは頻繁にあるものではないし、法事のお布施も払う側が決めればよい(常識的には3万~5万円程度)。
この年間数万円のコストを「払い続けることはできない」と考え、墓じまいに到る人が出てきているのだ。だが、墓じまいをするというのは、「寝た子を起こす」のと同然である。住職や墓地管理者が改葬許可証にあっさりサインしてくれたからといって、「やれやれ、これで将来的にコストがかからずに済んだ」と考えるのは早計だ。むしろ逆である。
墓じまいの風景 - 撮影=鵜飼秀徳
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