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「国の指示待ちでは遅すぎる」福岡市が国より早くハンコ廃止を実現できたワケ

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福岡市は2020年9月末、約3800の書類への押印を廃止する「ハンコレス化」を実現した。福岡市の高島宗一郎市長は「行政手続きをできる限り効率化し、職員という限られたリソースを、人のぬくもりが必要な部署に配置したい。この発想を職員が理解してくれたことが大きい」という――。

※本稿は、高島宗一郎『福岡市長高島宗一郎の日本を最速で変える方法』(日経BP)の一部を再編集したものです。

福岡市役所=2015年1月7日、福岡市中央区(裏面)
福岡市役所=2015年1月7日、福岡市中央区(裏面) - 写真=時事通信フォト

2020年9月末、約3800の書類への押印を廃止

2020年にアドビ社が行った調査により、「コロナ禍の影響で業務がテレワーク化したにもかかわらず、紙書類や押印のため、やむなく出社している人が6割にのぼる」ということがわかり、大きな話題となりました。それを受けて「ハンコ文化」を見直し、ハンコレスを推進したり、電子契約を導入したりする企業も増えているようです。

そんな中、2020年9月末、福岡市では、役所に提出する約3800の書類への押印を廃止し、国に先駆けて、ハンコレスを実現しました。

福岡市では数年前からハンコレスと行政手続きのオンライン化の取り組みを進めていたのですが、それは、市民のみなさんができるだけ役所の窓口に並ばなくて済むようにすることはもとより、高齢の方の増加に備えて、職員を福祉の相談など、人にしかできない業務にできるだけ充てていくためでした。

行政手続きをできる限り効率化し、職員という限られたリソースを、人のぬくもりが必要な部署に配置していくという発想です。

大半のハンコは「本人確認」の役割を果たしていない

この、行政手続きのオンライン化を進めようとしたときに、妨げとなったのが物理的なハンコでした。

しかし、よく考えてみてください。ハンコは、本当に本人確認の役割を果たしているでしょうか?

実は、役所に提出される書類の大半は、役所に登録した実印でなく、三文判でも何でも「押していればいい」とされています。ですから、極端な話、他人が役所の売店で売られている三文判を押して書類を提出しても、本人の申請として受理されてしまうのです。

にもかかわらず、市民も職員も、ハンコを押すことが慣例化してしまっており、誰も現状に対する疑問を抱くことがないまま、押印という儀式が続いていました。

福岡市だけではハンコレス化できない届もある

なお、国や都道府県でもようやく押印廃止の動きが進んでいますが、婚姻届や出生届、転入届など、国や県の法令で押印(や署名)が義務づけられており、福岡市だけではハンコレス化できないものもあります。

ただし、たとえば、福岡市に引っ越してきた人の転入届は、あらかじめ自宅などでオンラインで住所や名前などの情報を入力。役所の予約を取ったうえで、指定の日時に役所に行って、プリントアウトされた書類に署名するだけで済むようにしています。

国やほかの自治体のハンコレスが進まない限り、完全なハンコ撤廃にはなりませんが、それでも、市民のみなさんの負担は、かなり軽減されたのではないかと思います。

福岡市の成功事例を参考に、内閣府がそのノウハウをマニュアル化し、広く全国の自治体へ提供しています。今後、ほかの自治体にもハンコレスとオンライン申請の波が広がっていくことを期待しています。

印鑑をケースにしまう手元
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/emiekayama

職員からの「ハンコをなくして本当に大丈夫なのか」

ちなみに、ハンコレスへの取り組みを始めた頃は、職員からも、「ハンコをなくして本当に大丈夫なのか」「市民との間でトラブルになるのではないか」「今、そんなに問題が起きてないのに、なぜわざわざなくさなければならないのか」といった声が上がっていました。

正直、公務員にとっては、市民サービスが向上してもしなくても、給料は変わりません。ハンコレスによって市民のみなさんの手間が省けることはわかっていても、ハンコレスにするために、今までの書類や手続きを変えるのは、ただ手間がかかって面倒くさいだけ。そう考えていた職員も、少なからずいるのではないかと思います。

実際、「ハンコレスを実施する」と決めてから、「どの書類にどのようなハンコが真に必要なのか」を整理し、手続き的な課題をクリアするのに、2年近くの月日がかかりました。

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