- 2021年06月15日 13:15 (配信日時 06月15日 11:15)
「テレワーク実施率6割超」本当はブラックな霞が関が"数字合わせの粉飾"にはしるワケ
1/2調査日だけ人流が減り、翌日からは元通り
まったくテレワークが進んでいないと思われてきた霞が関の中央省庁で、「驚くべき」調査結果が明らかになった。内閣人事局が6月4日に発表した国家公務員の5月のテレワーク実施状況によると、霞が関の中央省庁が63.6%に達したというのだ。

2020年11月12日、パレスホテル東京から見た眺望・霞ケ関の官庁街(左は検察庁、中央は東京地裁高裁、右は警視庁、総務省などが入る合同庁舎) - 写真=毎日新聞社/アフロ
新型コロナウイルスの感染防止に向けて政府は民間企業に出勤者の7割削減を求めているが、到底無理と思われてきた中央省庁も目標達成寸前まで行っているというわけである。新型コロナ対応や災害・危機管理、国会対応などで実施が難しいとされた職場の約7000人を除くと中央省庁の実施率は7割強になると報じられた。民間に7割と言っている以上、政府は実行しています、と言いたいのだろう。
だが、この調査には裏があった。
「霞が関周辺で5月19日だけ人流がガクンと減り、翌日はまた増えている」
6月3日の参議院内閣委員会で日本維新の会の音喜多駿議員がこう指摘した。NTTドコモがスマートフォンの位置情報などを分析した結果として、東京・霞が関では、5月19日の人出が前日比15.4%減、感染拡大前(2020年1~2月)と比べると40.2%も減っていた。ところが、翌日の5月20日には19.3%も増加。感染拡大前との比較でも28.6%減の水準にまで戻した。要は、1日ですっかり人出が元に戻ったのである。
「調査日」は事前に知らされていた
実は、この5月19日こそ、内閣人事局が「基準日」として指定したテレワーク実施状況の調査日で、事前に各省庁の職員に通知されていた。
民間でテレワークと言えば、パソコンをインターネットでつないで会社にいるのと同様に仕事をするイメージだが、霞が関の場合はまったく違う。何せ、役所のシステムにつなぐことができる持ち出し可能なパソコン自体がほとんどないうえ、私用パソコンでデータを扱うことも禁じられている。紙の資料をプリントアウトして持ち帰って仕事をしているというケースが少なくない。
また、この日の調査の場合、霞が関で働く約5万1000人のうち、63.6%に当たる3万2000人がテレワークしたことになっているが、ここには「休暇取得」で出勤しなかった人も含まれる。調査日に合わせて有給休暇を消化したり、代休を取得したりした役人も少なからずいたという。
調査前日に「明日だけはテレワークするように」という指示が回った職場もあったというから、明らかな「出来レース」だ。音喜多議員は「まったく意味がない」と批判したが、まさに霞が関の役所らしい「対応」だったと言える。
「7割にどれだけ近づけるか」に力点が置かれた
本来、この調査は「実態」を把握するために行われたはずだが、霞が関の行動パターンでは、7割という目標にどうやって近づけるか、に力点が置かれた。それを達成しなければ職場の長が問題視されるから、「基準日」だけは何としてもクリアしろ、ということになったのだろう。6割超という数字はどうみても「粉飾」まがいである。
ちなみに同じ調査は蔓延防止等重点措置が発出されていた地方の出先機関でも実施され、そちらのテレワーク実施率は地方で37.1%だったという。調査対象は約18万7000人で、こちらは、検疫や海上保安といった「現場」の多い職場なので、テレワークの実施は困難だというエクスキューズが付いていた。
霞が関では今、DX(デジタル・トランスフォーメーション)を合言葉に、デジタル庁の創設準備が進んでいる。長年自民党でデジタル化の重要性を主張してきた小林史明衆議院議員は、「DXは、Dつまりデジタル化よりも、X、トランスフォーメーションの方が重要だ」と語る。デジタル化によって仕事のやり方を根本から変えていくことにこそ、DX化やデジタル庁の意義がある。だからこそ、菅義偉首相は「役所の縦割り打破」をデジタル庁創設の理由にしてきたのではないか。

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks
本当の意味で「テレワーク」になっているのか
つまり、「テレワーク6割」が、なるべくその日に休暇を取った結果、では意味がないのだ。新型コロナが明ければ元の仕事の仕方に戻ろうというのが霞が関の意識なのだろうか。テレワークと言われた時にどんな仕事の仕方をしているか、本当の意味でテレワークと呼べる水準の仕事になっているのか、それをこの機会に検証しなれば何の意味もない。
行政改革担当相の河野太郎議員は「やる気になったらこれだけできる。これをベースにさらに改善してもう少しやってもらいたい」と会見で述べていたが、これが本当に「テレワーク」の結果だったのかどうか、調べてみる必要がある。河野大臣は抜き打ちでのチェックも行うとしているので、その結果とのギャップが明らかになると実態が見えるだろう。
もちろん、役所のことだから、誰言うとなく抜き打ちの「基準日」を皆が知るところとなり、その日だけ人出が減るということになるのかもしれない。
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