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私たちの考えるインターネット選挙運動解禁

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画像を見る        谷本晴樹((財)尾崎行雄記念財団 主任研究員)                                         

1 なぜ今、改正案を作ったのか

 安倍首相が、今年の参議院選挙でのインターネット利用解禁を目指すことを明らかにし、野党も同様に解禁を主張していることから、一気に公職選挙法改正の機運が高まっています。しかし一方で、どのような「内容」のインターネット解禁が望ましいのか、その議論は必ずしも高まっているとは言えません。

 例えば、解禁について、なりすましや誹謗中傷への懸念がありますが、実はインターネットを全く考慮していない現在の公職選挙法の方がある意味「無防備」であって、昨年提出された自民党の公職選挙法改正案でもみんなの党の案(両案とも審議未了で廃案、以下の文章で自民案、みんな案と略称)でも、対策が初めて盛り込まれていました。

 今必要なのは、インターネット選挙運動を解禁すると誹謗中傷が増える、あるいは選挙が過熱するという漠然とした「イメージ」についての議論ではなく、それでは、現時点でどのような対策を盛り込んだネット選挙解禁が望ましいのかについての「内容」についての議論ではないでしょうか。

 またインターネットが本当に有効に活用できるかどうかについても、これから出てくるであろう法案の内容を、よく見なければなりません。例えば、自民案やみんな案では、せっかく自由にインターネットを使える条文を加えても、他の条文をそのままにしていたために、うっかりネットを使って公職選挙法違反となる可能性もあります。たとえば、第141条の3は、走行中の選挙カーでの選挙行為を「連呼」しか認めていません。これを変えないままだったので、選挙カーからtwitterで発言した場合、あるいは動画をストリームで流した場合に違反となる可能性もありました。また、演説会の告知でも制限があったり、第三者による公開討論会開催も禁止されているために、ネットで気軽に告知について拡散したら、問題となったかもしれません。

 私たちが改正案(以下、OVC改正案と略称)を発表したのは、ネット選挙解禁がついに実現が見えた今こそ、理想的なネット選挙の解禁とはどのような姿であるのか議論すべきだと考えたからです。

 なお、公職選挙法は1950年の制定以来、何度も改正を繰り返し、ただでさえ条文の多い「べからず法典」がさらに複雑なものとなっています。関係条文は多岐にわたっているため、この改正案には訂正すべき他の条文について、見落としがあるかもしれません。もしOVC改正案をご覧になって、矛盾している条文などがあれば、是非ご指摘ください。また皆様からのご提案についても積極的に受け入れ、さらに理想的な法案にしたいと考えております。  

2 OVC改正案の理念

 私たちが目指すのは、インターネットが選挙において、本当に有効に「使える」ようにすることです。そしてそれが同時に、公職選挙法の目的にあるように、人々の自由な意思によって、選挙が公明で適正に行われるような解禁の形でなければならないと考えます。  

3 OVC改正案の主な内容

(1)インターネットの利用を規制される「文書図画」の例外に。
 現在の公職選挙法は、選挙期間中に使用できる「文書図画(ぶんしょとが)」をハガキ、ビラなどに限定し、枚数まで定めています。ホームページやメールも禁止される文書図画に当たるという見解を1996年に自治省が示し、それが続いているわけですが、OVC改正案では自民案同様に、その例外に当たるという規定にしました。これだけで基本的に選挙期間中であっても、ソーシャルメディアを含めたネットの利用は自由となります(第142条の3)。  

(2)ネット「活用」に目配りした解禁を
 最初に述べたように、自由化しても有効な活用に障害が出るような条文は、なるべく改正しなければなりません。したがって先述の、連呼以外の選挙カーでの行為を禁じている「車上の選挙運動の禁止」(141条の3)は削除します。

 演説会の告知についても、現在の公選法は、その手段を限定していますので、インターネットを使えるようにします(201条の4など)。また現在のところ、選挙期間中に、第三者が公開討論会など集会を開催することは禁止されており、「合同個人演説会」という名目で、これと似たような集会を開催しているのが実情です。しかしこれではあまりにも制約が多いと言わざるをえません。第三者が誰でも討論会を開催し、これを誰もが自由に開催し、ネットで告知し、動画で中継もできるようにする必要があります(第163条の3)。なお、本条文改正に当たっては、構想日本の改正案を使用させていただきました。

 さらに、「政見放送」がYoutubeなどでアップされることで公職選挙法違反を問われる事案も発生しています。公職選挙法では、政見放送は5分30秒以内、テレビ5回、ラジオ3回までなどと定められているわけですが、実際には現在でも動画はアップされていて、検挙が追い付かないのが実情でしょう。そもそも、繰り返しじっくり候補者や政党の主張を、同じ時間という統一されたフォーマットで吟味できることは、有権者にとっても有意義なはずです。むしろこれは自由化することで、政見放送を見比べるサイトを誰でも自由に作れるようにした方がいいのではないでしょうか?(第151条の5)

 その他、当選のお礼などのいわゆる「あいさつ行為」も、インターネット上で行うことは何ら問題がないとおもわれるので解禁すべきだと考えます(第178条)。  

(3)誹謗中傷・成りすまし対策は?過熱する選挙は防げる?
 誹謗中傷対策については、ほぼ自民案と同じものです。成りすましなどについては、虚偽表示罪が適用され、2年以下の禁錮又は30万円以下の罰金が科せられることになります(第235条の5)。巨大掲示板などにおいて誹謗中傷が書き込まれた場合、候補者本人から、削除要請があった場合、2日(現行7日)以内に発信者から同意しない旨の回答がなかった場合、プロバイダ等が当該情報を削除するようにもなります。

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