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性教育はテキトーだけどセックスはしてOK 日本の中学生をめぐる大いなる矛盾


現行13歳となっている日本での性交同意年齢の引き上げをめぐる議論が、ネット上でホットになっている。

そもそもは、立憲民主党議員のおじさんが会議で「50歳近くの自分が14歳の子と性交したら例え同意があっても捕まるというのはおかしい」と発言したことを端を発している。

このおじさんの勇気ある暴言がなかったならば、ここまで議論が活発化していなかったかもしれないわけで、彼にはある意味感謝すべきなのだが、このおじさんの発言にあまりこだわりすぎて石を投げていても有益ではないし、問題の本質を見誤りすぎる気がする。

性交同意年齢を引き上げるか否かは、さまざまな論点が複雑に絡み合っている。

やれ引き上げなくたって多くの自治体は条例でカバーできているという意見(そもそも、50歳近くのおじさんは14歳の子と性交したら現時点で大抵はタイーホという信頼と実績なのだ)や、やれ中学生同士でも逮捕されるのかという指摘(日本よりは年齢を上に設定している諸外国はそうした場合の例外規定がある模様)など、いろいろな角度から議論が巻き起こっている。

そんな中、パターナリズムへの批判として、引き上げに反対している人たちがいる。

彼らの言い分をざっとまとめるとこうだ。子どもにだって物事を考え、判断する意思があり、親たちの所有物ではない。彼らにも自己決定の権利がある、というやつだ。

そういう人は、喫煙に飲酒、ギャンブルに投票、運転もできない今の子どもたちの憂うべき現状をどうとらえているのだろう、とは思うけど、それはともかく、彼らの言い草を鵜呑みにして「13歳の自由意志」を認めた上で、改善すべきことがあると思うのだ。それは日本の性教育だ。

このあいだ、たまたま見た『首都圏情報ネタドリ!』というEテレの番組で知って、安西先生ばりに「(俺が子どもの頃から)まるで成長していない…」と、現在の性教育事情にがく然とした。

その番組では、大学や高校で20年以上性教育に携わっている水野哲夫さんという人が出ていて、下記のように明かしていた。

文科省は今、“性教育”という言葉も使っていない。性に関する指導という言葉を使っています。何が違うかというかというとカリキュラムを作らなくていいんです。指導だから。個別指導でもいい体系的なカリキュラムを作らなくていい

だから、性教育は保健体育の授業に格納されたままなのだ。水野さんによると、現在、全国の中学校において、年間で性教育で割く時間は平均でたった3時間ほどなんだという。

日本の性教育が諸外国に比べて遅れているのは、すでに何年も前から言われている。今回、あらためて自分で調べてみると、日本の学習指導要領では、中学校では「受精・妊娠」は取り扱うが、「妊娠の経過」は取り扱わないことになっている。「妊娠の経過」とはつまり「性交」は取り扱わないということで、そのほか「避妊」「人工妊娠中絶」も指導内容に含まれていない、というのだ。

これは、ぼくが子どもの頃とまんま同じで、だからこそ安西先生なのだ。現行の日本の公教育だけでは性教育も満足に受けられない。それはつまり、ぼくもあなたも、性的に“未熟”なまま大人になるしかなかったということだ。今まで性被害に巻き込まれたり、性加害に加担しなかったのは、運が良かったにすぎない、というのは言い過ぎだろうか?

なぜ日本でここまで公教育の性教育がおざなりになっているのか、真の理由はわからないが、「寝た子を起こすな」という意見もある。

だが、一方、現行の性交同意年齢ではなぜか「(13歳でも)寝た子が起きてもいいよ?」と言っている。いや、言ってはいないが、これはもう“未必の故意”みたいなもんである。

先ほど紹介した番組では、草の根の運動としてYouTubeで正しい情報を伝えようとしている有志の人々の活動が紹介されていた。けれど、一国のあり方として、先の学習指導要領での性教育に対する消極的な姿勢と、現行の性交同意年齢は明らかに矛盾している。結論をいえば、日本のお粗末な性教育のレベルのままなら、一刻も早く同意年齢を引き上げるべき、ということになる。

性交同意年齢の引き上げが最終的になされるかはまだ分からない。

しかし、もし引き上げられたとして、性教育がこれまでと同じ残念な様相ならば最悪であるし、引き上げられずに性教育もこのままならば、最悪オブ最悪なのだ。

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