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マリ、アルジェリア情勢

 マリのクーデター、そして、その後、イスラム勢力AQMI(Al-Qaida au Magrebh Islamique)によるマリ北部地域の制圧、フランス軍の空爆、アルジェリアへの波及と、非常に西アフリカ情勢が大荒れです。マリのクーデターについては、昨年このようなエントリー を書いていました。ついでに現地の世界遺産関係でもこのようなエントリー を書いていました。かつて、セネガル大使館勤務時にマリ担当として幾度となく首都バマコを始めとして出張した身としては残念でなりません。今回、アルジェリア南東部イン・アメナスでの人質事件では41名とも言われる関係者が人質に取られています。いち早く安全に救出されることを、遠く北九州市の地から祈るばかりです。

 これはフランスの新聞を読んでいれば誰でも分かっていることなのですが、マリの混迷する情勢に対する国際的な介入はアルジェリアの同意が鍵だということは幾度となく語られていました。理由は後で書きますが、時折ル・モンドを読んでいるだけでもそういう内容の記事がかなりありました。詳細は知りませんけども、今回、フランスがアルジェリア領空内を通ってからの空爆を含む軍事介入したのを見て、私は「ああ、何処かでアルジェリアとの調整が付いたのだろうな。」と思っていました。日本の外務省も国連で、パリで、そして現地での情報収集で、アルジェリアと国連安保理常任理事国との調整内容をある程度は知っていたはずです。

 アルジェリアという国は、ちょっと意外に思うかもしれませんが面積的にはアフリカ最大の国です(かつてはスーダンが最大でしたが、南スーダン独立後はアルジェリアが最大)。あの国の転機は1991年の選挙でして、イスラム勢力が圧勝したのを受けて、軍がクーデターを起こして選挙を無効とし、暫くはゼルーアル大統領の下で軍政の状態でした。それを機にイスラム勢力が反政府勢力としてサハラ砂漠を後背地として暴れていました。私がフランスにいた当時は、首都アルジェ市内でもテロ行為が頻発しており、在アルジェリア日本大使館勤務というのは世界でも有数の難関地とされていました(大使館と住居を一つの敷地内に置き、敷地外への外出は基本的に禁止。外出する際は防弾車で移動というライフスタイルでした。)。1999年に民政移管して、アブデルアジーズ・ブーテフリカ大統領が選出されてからはかなり収まってきていましたが、それでも非常事態宣言は最近まで継続していました。

 何故、マリ情勢への国際的な介入がアルジェリアの同意を要するかと言えば、色々とありますが、私的には3つの要素があると思います。一つ目は、そもそもアフリカの地で旧宗主国フランスが軍事攻撃をすることに対する根源的な反発、そして、それに乗じて反政府活動を活発化させるイスラム主義者の存在というのがあるでしょう。二つ目は、やはりリビア情勢でカッザーフィーから重火器を与えられてしまったイスラム主義者(AQMI)がマリに流れましたが、別にマリにだけ流れ込んだわけではなく、勿論、アルジェリアにも流れ込んでいます。そこに火が付くとアルジェリア内政に跳ね返るというのがあります。三つ目はトゥアレグ族の存在です。トゥアレグ族については、かつて、このようなエントリー を書きました。国を持たない民、トゥアレグ族はモーリタニアからリビアくらいまで砂漠の民として移動しており、すべての関係国で少数民族独立武装運動みたいなことをやっています。マリでも、アルジェリアでもトゥアレグ族対策というのは非常に機微なところがあって難しいのです。こういうイスラム主義者、トゥアレグ族、リビアでの紛争で戦った兵士達(AQMI)が混然一体としているのが現状です。これら勢力がどう絡み合って、今の状態を構成しているのかは私には分かりません。

 そういう意味で、マリでのフランスの空爆はアルジェリア内政にそのまま跳ね返ることから、国際情勢ウォッチャーの中ではある意味「常識」として、アルジェリアの対応に注目が集まっていたということです。不謹慎な言い方かもしれませんが、今回のマリ空爆を受けた日本人人質事件に接してアルジェリアは「やっぱり、こういうことになったか。」というふうに思っているかもしれません。

 情報がまだ交錯しており、詳細はよく分かりません。ただ、何となく直感的に思うのはトゥアレグ族ネットワークが何らかの役割を果たさないかなということです。マリではトゥアレグ族の反乱に、イスラム勢力が寄生したかたちで最終的にはトゥアレグ族は脇に追いやられたかたちですが、AQMIとトゥアレグ族には一定のコンタクトが維持されているのではないかと思います。それはアルジェリアでも同じでしょう。サハラ砂漠に根を張っているトゥアレグ族と完全対立するかたちでは、AQMIも活動するのは難しいでしょう。

 人質はチュニジア領内に連れ去られたとの情報もあります。いずれも広大な砂漠地域であり、場所の特定すら難しいでしょう。アルジェリア、チュニジア、ニジェール、リビアといった関係国、更にはBPのサイトで働いていた職員の母国との国際的な連帯が今こそ重要です。繰り返しになりますが、党派を超えて安倍総理、岸田外相のオペレーションの成功を祈ります。

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