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インスタグラム・ショッピングが楽しくて、「海辺の部屋」まで買った - 鈴木綾

この間人生で初めて一人飲みをして、インスタグラムですごい買い物をしてしまった。

ロンドンのバーとレストランはまだ屋外席のみが解禁で、友達とパブの外で飲んだ。暗くなったら気温が急に下がってきたので寒さで震えながら飲むのはそこまでにした。帰ったのは8時ごろでまだちょっと飲み足りないなーと思って、ウイスキーをちびちび飲みながらボーッとしてYouTubeで動画を見た。知らないうちに相当酔っ払ってしまったらしくそのまま寝た。

そこから数日間後、ドアベルが突然鳴った。

「お客さんの鏡を持ってきました」とインタホーンの向こうの人が言った。

鏡?

私が迷ってすぐ答えらなかったら向こうが言った。

「これは鈴木綾さんの家ですよね」

「そうです」

玄関を開けた。

タバコくさい、ラフな普段着を着ているおじさんが家に巨大な鏡を持ってきてくれた。鏡を見た瞬間に思い出した。酔っ払った夜、インスタグラムで似たような鏡を見た記憶があった。焦ってメールをチェックしたら、私が酔っ払った日にインスタグラムの鏡を買っていた!

この鏡は洋服屋さんの試着室に置いてあるみたいに大きく、額がまったくない、単なるガラス一枚。作業員たちはベッドルームに置いた。高さが2メートルもある鏡は、「今日のコーディネート」を撮るのに最適。要するに、インフルエンサーたちのための鏡。

「君、背がちっちゃいからこれを自分で動かさないで。死ぬから」とおじさんが無愛想に私と目を合わさずに注意した。

あ、そう。

実はインスタグラムでショッピングするのは初めてではない。「意識高い」バカの私は、できるだけアマゾンや他の大手ネットスーパーでは買い物をしたくない。物流センターの超過酷労働環境で訴えられているアマゾンを特に避けている。せっかく独立系のブランドを発見できる素晴らしいツールができたのだから、一人や少人数で頑張っているクリエーターたちや起業家を支援したい。

今回のコラムを書くにあたって計算してみた。この半年間でインスタグラムで見つけて買った商品の合計は、なんと1200ポンド(約19万円)。鏡以外に洋服、ビンテージのグラス、毛布、帽子、幅広い商品を買っている。不揃いの買い物に見えるけど、考えてみるとインスタグラムで買った商品は全部写真の写りが良いもの。

2019年にチェックアウト機能を導入してからインスタグラムは静かにショッピング機能を増やして、プラットフォーム上のショッピングを促している。もちろん、インスタグラムは中国のネットショッピングアプリより全然遅れているけど、これは西洋の消費者たちにとって相当大きいな変化。

今やなんとインスタグラム利用者の8割はプラットフォームを使って「商品やサービスを購入するかどうか決める」。周りを見回してもインスタグラムで物を買っている人は増えている。

「昔は食べ物や旅行の写真を載せていたけど、最近商品の購入を検討するために使っている。友達のアカウントや写真より、ブランドや会社のアカウントで商品の情報を見てるのが多い」とある女友達が話した。

新しい商品は、フォローしているインフルエンサーを通して発見する。あるいは「このアカウントに似ているアカウント」機能で発見している。新しいマンションのための雑貨を探していたときはこの機能が特に役に立って、ロンドンのいろんなビンテージ家具のお店を見つけることができた。

面白いのは、私は全くハッシュタグで検索しないし、周りにハッシュタグで物を検索する人が少ない。ロンドンで家具屋さんを探していたときは何回もハッシュタグで調べてみたけど、情報があまり出てこなかった。一方で、日本人は世界平均の5倍の量でハッシュタグを使っているらしい。その違いの理由がわかった人がいれば、教えて下さい!

この間、鏡よりさらにすごい物をインスタグラムで買ってしまった。

家具を探していた時から、フリーマーケットで見つけた家具をインスタグラムで売る若い女性をフォローしている。彼女は60、70年代のポップな家具が好き。私の好みではないけど、なんとなく好きだし、ロックダウンの真っ最中にインスタグラム・ショップを立ち上げた彼女を支援したかった。ある日彼女のストーリーズで気になる情報があった。「今年の夏から海辺でレンタルアパートを始める」という彼女。家具やデザインを特別にキュレーションした「彼女流」のアパートだ。

ホテルが解禁になったらすぐ埋まっちゃうんじゃないかと思ったので、すぐ彼女にダイレクト・メッセージを送って予約した。

このコラムを書きながら、私はこのインスタグラムハウスの窓から海を眺めている。浜辺沿いの遊歩道で人がチャリに乗って太陽を浴びている、走っている、犬を散歩している。さっき電動車椅子の群れも通った。

書きながら、ヴァージニア・ウルフの『自分ひとりの部屋』を思い出す。「女性が小説を書こうと思うなら、お金と自分ひとりの部屋を持たねばならない」。そんな「自分ひとりの部屋」はネットという仮想空間で借りられるとヴァージニア・ウルフが知ったら何と言うだろう。

部屋は、期待通りデザインが素晴らしい。彼女はマグカップとコースターまで考えている。リビングの本棚はデザインや建築に関する本がテレビの隣に並んでいる。非常に洗練されている。絶妙にキュレーションされているにもかかわらず、「これとこれとこれを触っちゃいけない」という「博物館」感が全くなくてとても暖かくて心地いい。

オーナーが用意してくれた、美味しいコーヒーを飲みながら自分がそこにいることをすごく不思議に感じた。直接会ったことがない人の家のことをネットで知って、ネットで連絡をとって、直接見たことがない家に泊まった。そこまでネット上の情報を信用してるんだな、と思った。

そして私は、さらにその信用関係の構造に貢献している。到着前にオーナーがメールで案内書を送ってくれた。「インスタに載せるのは自由だからどんどん載せて下さい」到着した瞬間からインスタにどんどん載せている。私が投稿する情報は次の人が泊まりたくなるためにここの信用度を高める。

見たことがないけど、きっといいと思って買うドキドキ感がインスタグラムの楽しみ。インスタグラムで泊まっている家の写真を見たけど、本物はもちろん遥かにいい。何が届くのかな、どんな経験になるのかな、というミステリーのはインスタグラム・ショッピングのハマりどころ。私が酔っ払って鏡を買ったときはきっとそう考えていただろう(笑)。

このあいだ、人を家に呼ぶのがOKになって、会社の女性友達を招いてちょっとしたホームパーティをした。酔っ払って買った鏡の話をしたら、友達たちは興味津々になった。

「見せてー」

ベッドルームを案内したら、みんなが鏡に夢中になって写真をいっぱい撮っていた。

「これはインスタ映えするよ!」

「めっちゃいい写真撮れるじゃん」

自分の家でインスタ映え観光スポットができたような気がした。楽しい。

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