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もはやアイドル文化だけの発信地にとどまらない…K-POPのダンスはなぜ“世界的ブーム”になるのか 『K-POPはなぜ世界を熱くするのか』より #2 - 田中 絵里菜

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Snow Man、SixTONES、嵐…ジャニーズも真似した人気K-POPアイドルの巧みすぎる“ダンス×宣伝”術とは から続く

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 クリエイターたちが語るリアルな声、そしてプロモーションの視点を交えながら、世界的な音楽ブームへと成長した「K-POP」を体系的にまとめた書籍が、音楽好きの間で話題となっている。

 書籍のタイトルは、その名もずばり『K-POPはなぜ世界を熱くするのか』(朝日出版社)だ。ここでは、同書の一部を抜粋し、著者の田中絵里奈氏が考察した“日本と韓国のアイドルグループの振付”に関する決定的な違いを紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)

◆◆◆

フックソングとポイントダンスからの進化:振付

 K-POPのパフォーマンス、というと、一糸乱れぬ迫力あるフォーメーションダンスと、何度も反復されるキャッチーな振付が思い出されるはずだ。実際この2つはK-POPのダンスを構成する重要な要素であり、そのままK-POPの世界的なイメージを形作ってきたものである。


©iStock.com

 前者はよく「カルグンム(刃群舞)」と呼ばれ、刃のようにキレの鋭い動きを群れ全体でシンクロさせて踊ることを指す。

 2011年に、INFINITEが「BTD(Before The Dawn)」という曲で披露した、うつ伏せ状態からサソリのように起き上がる「スコーピオンダンス」は腕の角度まで皆がピッタリと合っていて、それ以降、一体感のある高スキルなダンスに対して「素晴らしいカルグンムだ」などと言って、韓国のメディアでは今でも「カルグンム」は称賛の言葉として多用されている(INFINITEは元祖カルグンムグループとして名を馳せた)。

 後者のキャッチーな振付については、2010年から始まった第二次韓流ブームの頃、日本のメディアが少女時代の「GENIE」の振付を「美脚ダンス」、KARAの「ミスター」のそれを「ヒップダンス」とネーミングし、ワイドショーでもしきりに取り上げられていたのを思い出す。

 世界的に大ブームとなったPSY「江南スタイル」(2012年)の、ステップを踏みながら手綱を引くような「乗馬ダンス」はマドンナもコンサートで披露した。TWICE「TT」(2016年)のサビで繰り返される、泣いた顔文字を表現した「TTダンス」も大流行したが、最近ではNiziU「Make you happy」の「縄跳びダンス」、「Step and a step」の「うさぎダンス」も記憶に新しい。こうしたパッと見ただけで覚えてしまいそうなダンスは「ポイントアンム(ポイントダンス)」と呼ばれる。

 2000年代後半から2010年代初頭のK-POP界では、ダンスがグループの知名度や人気を大きく左右したこともあって各グループが競って「◯◯ダンス」を生み出し、「カルグンム」と「ポイントアンム」はマストキーワードであった。

 たとえば、毎回さまざまなアイドルグループがゲストで登場する韓国のテレビ番組「週刊アイドル」には、自分たちの楽曲を2倍速にしても正確に踊れるかチャレンジする名物コーナー「2倍速ダンス」がある。

 そこで「ROUGH」という曲を完璧に踊りきったGFRIENDは、ハイレベルなカルグンムグループとして大きく話題になった(2016年)。ポイントアンムが自分も体を動かしてみたくなる「踊る対象」なら、カルグンムはアイドルグループの高いダンススキルを表す「見る対象」である。

 観客を圧倒するパフォーマンスを見せるメンバーを「ダンスマシーン」「踊神踊王(チュムシンチュムワン)」などと称賛する表現が多いことからも、韓国におけるアイドルのダンスに対する注目度の高さがうかがえる。「HIT THE STAGE」「DANCING HIGH」など、アイドルが高いダンススキルでもってバトルする番組もあるほどだ。

 また、ポイントアンムの流行には音楽的な潮流も関係している。第二次K-POPブーム時には、Wonder Girls「Tell Me」(2007年)、SUPER JUNIOR「SORRY, SORRY」(2009年)、T-ARA「Bo Peep Bo Peep」(2009年)、少女時代「Gee」(2010年)、KARA「Jumping」(2010年)など、曲名にもなっているフレーズを反復的なリズムに乗せて歌う「フックソング」が流行していた。

 前述のように2010年以降は韓国内でのヒップホップの台頭や海外作曲家を中心とするソングキャンプ的制作によって振付にも新たに変化が生まれてきているが、少女時代やPSY、最近のNiziUを見るかぎり、K-POPが海外に浸透していくにあたって「ポイントアンム」の貢献度は大きいと思う。

全体のシンクロから個人が織りなすグルーヴへ

 TWICEの「TT」やソンミの「Gashina」などで世界的に知られている振付を生み出し、韓国でもっとも振付料が高いといわれている1MILLION Dance Studioのコレオグラファー、リア・キムさんにK-POPのダンスの変遷について聞いてみると、やはり今から5年くらい前まではどのグループからも一目でわかるポイントアンムを振付に入れてほしいと依頼されることが多かったという。ダンスの一部を強調しすぎると全体的なパフォーマンスの流れが作りにくく、振り付けるにも苦労が多かったそうだ。

 しかし今ではポイントアンムをめぐる競争も落ち着いて、フォーメーションの移り変わりなどに力を入れた振付が増えてきている。K-POPライターのパク・ヒアさんは、全体から個への推移に注目する。

「ヒップホップの流行も影響して、2010年代に入るとBTSやBLACKPINK、WINNERなど、メンバー一人ひとりの個性を見せるダンススタイルが始まりました。ファンも今はアイドルの個々のメンバーに対してソロで楽曲を出せるほどの個性を求めるようになりましたから。ただ、自分独自のスタイルを自然に出しながらもグループとしてはひとつにまとまって見えなくてはならないので、その調整が難しいんです」

 それでは昨今のK-POPのダンスに新たなトレンドセッターはいるのか、リア・キムさんに聞いてみる。「現在のトレンドを誰か一人だけに紐付けすることはできませんが、最近はTWICE以来のJYPガールズグループであるITZYが、パワフルかつエキサイティングなパフォーマンスを披露して強く印象に残りました。彼女たち5人の登場によって、振付に新しい風が吹いたと思います。また、以前だと振付でセックスアピールをするような動きが重視されていましたが、今はK-POP全体でパフォーマンスの領域が広がっているのは良い変化だと思います」

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