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「生命保険をポジティブに変えたい」住友生命が"割引のなくなる保険"を売り出したワケ

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住友生命の健康増進型保険「Vitality」は、加入時に保険料が15%割引となるが、健康増進などを怠ると最終的には割引がなくなってしまう特殊な設計だ。日本で唯一というこの保険の狙いはどこにあるのか。この4月に就任した高田幸徳新社長に、立教大学ビジネススクールの田中道昭教授が聞いた――。(後編/全2回)

※本稿は、デジタルシフトタイムズの記事「住友生命新社長 高田幸徳氏×立教大学ビジネススクール 田中道昭教授対談」(4月1日、4月8日公開)を再編集したものです。

住友生命の高田幸徳社長(左)、立教大学ビジネススクールの田中道昭教授(右)
住友生命の高田幸徳社長(左)、立教大学ビジネススクールの田中道昭教授(右)

健康診断の数値が悪くても、半分以上は病院に行かない

(前編から続く)

【田中】高田社長が中心となって10年前に策定したブランド戦略から、さまざまな商品やサービスが生まれています。健康増進型保険“住友生命「Vitality(バイタリティ)」”もその一つです。

【高田】健康には身体的、精神的、社会的とさまざまな種類がありますが、われわれは保険会社ですから、まずは身体的健康をどのようにサポートするかを考えます。身体的健康のためには、自分自身の健康を知ること――具体的には健康診断の数値を把握すること――が第一ステップです。ただ、数値が多少悪くても、半分以上の人は本当に悪化するまで病院に行きません。そこで、健康改善のために、運動や食生活、社会参加など日々の取り組みをポイント化して継続してもらう仕組みを、第二ステップとしてプログラムに組み込みました。

「Vitality」には、さらに先があります。実は人間は本質的に不健康になりたい動物。自分を律して健康になるより、おなか一杯に食べたり、だらだら寝て過ごしたいという欲求が強いのです。そこで第三のステップとして、さまざまな事業者と手を組んで、特典を付けて楽しくやっていける枠組みもつくりました。たとえば3月には『ポケモンGO』と提携して、ゲームをしながらVitalityで歩数をカウントし、目標をクリアすることで『ポケモンGO』の中でアイテムを入手できるようにしました。このような取り組みで楽しく健康増進していただいています。

高血圧だったお客の約半数が「血圧が10ポイント以上」改善

【田中】実際、加入者の行動変容は起きていますか。

【高田】行動経済学によれば、人間には一度得たものを失いたくないという心理が働きます。その傾向を利用して、Vitalityは加入した段階でまず保険料を15%割引します。この割引を維持し、さらに保険料を安くするために、健康診断や日々の運動などをポイント化して取り組んでいただこうという設計です。

アンケートでは、Vitalityに加入したお客さまの約9割が、日々の行動が変わった、あるいは健康に取り組むようになったと回答されています。健康に関しても、血圧の高いお客さまの約半数が血圧が10ポイント以上下がったという結果が出ています。さらにうれしいのは、家族との対話が増えたというご回答が多かったこと。健康は一人でストイックにやると、なかなか続きません。身近な応援者はご家族ですから、ご夫婦やお子さんと一緒に取り組むと効果があると思います。

保険の「ネガティブなイメージ」を変えたかった

【田中】一般に、保険はサービスを実感しづらい商品だと言われています。Vitalityは効果を感じられるという点で斬新ですが、どうしてこのような商品を作ろうとお考えになったのですか。

【高田】保険は「生老病死」、つまり長生きや介護、病気、死亡という4大リスクに対して経済的に備える仕組みとして開発されました。これらのリスクはどちらかというとネガティブなものばかりですよね。お客さまもそのようなイメージを抱いておられます。私が入社してすぐ、営業をやっていた頃は「入ったけど、かけ損だった」とよく言われました。保険金をお支払いするようなことが起きなかったなら本当は喜ぶべきですが、保険はそのように受け取ってもらえないのです。

ネガティブなイメージですから、営業に行っても基本は断られます。100人に声をかけて、話を聞いていただけるのは10人です。さらに聞いてもらってご契約に至るのが、ようやく1人。99人のお断りがあるわけですから、私たちも少なからず傷つくわけです。そうした経験もあって、生命保険をポジティブなものに変えていきたい、加入いただくことで明るくなれる商品を作りたいという想いはずっと持っていました。

立教大学ビジネススクールの田中道昭教授
立教大学ビジネススクールの田中道昭教授

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