記事

直前にクイーンを襲ったキツすぎる“試練”…なぜ『ボヘミアン・ラプソディ』の山場に「ライヴ・エイド」が選ばれたのか - 平田 裕介

1/2

 映画『ボヘミアン・ラプソディ』(2018年)が6月4日に「金曜ロードショー」で放送される。観る者に大きな興奮と感動を与えた、クライマックスのライヴ・エイドでのシーン。その背景には、映画では触れられることのなかった出来事があったという。知られざる秘話の数々をライターの平田裕介さんが紐解いていく。

【写真】この記事の写真を見る(6枚)

※以下の記事では、『ボヘミアン・ラプソディ』の内容や結末が述べられていますのでご注意ください。


実際は約21分だった「ライヴ・エイド」パフォーマンス ©Getty Images

7万2千人もの観客がひしめくウェンブリー・スタジアム

「ご紹介できて光栄です。続いては……クイーン。女王陛下、クイーン!」

 7万2千人もの観客がひしめくウェンブリー・スタジアムを上空から捉えたカメラ(視点)が、ステージ目掛けて急降下する。ピアノに向かうフレディ・マーキュリー(ラミ・マレック)を筆頭に、各々のポジションに就くメンバーたち。意を決したような面持ちのフレディが、息を深く吸って吐き、「ボヘミアン・ラプソディ」のイントロを弾く。そこから「レディオ・ガ・ガ」「ハマー・トゥ・フォール」「伝説のチャンピオン」と続いていく怒涛の約13分30秒。

 刺さる場面ばかりの『ボヘミアン・ラプソディ』だが、やはりズブズブととどめを刺されるのはライヴ・エイドでの演奏シーンだろう。何度観ても、何度聴いても、興奮するし、感動するし、ウェンブリーのオーディエンスと共に歌いたくなる。プレイを終えた4人がステージの袖に戻って幕が閉じ、「ドント・ストップ・ミー・ナウ」のPVと「ショウ・マスト・ゴー・オン」が流れるエンド・クレジットには、涙腺が緩んでどうしようもなくなってしまう。

 そして、観終えるたびにクライマックスにライヴ・エイドを据えたことに唸りに唸ってしまう。

 クイーンにとってエポックなライブ公演は数多い。

 初期の名演とされる1974年のレインボー公演、『ボヘミアン・ラプソディ』でも撮影されたがカットとなった1975年の日本武道館公演、同年のクリスマス・イヴに行われたハマースミス・オデオン公演、1979年のカンボジア難民救済コンサート、1986年のウェンブリー・スタジアム……。コアなファンに話を聞くと、1976年1月30日のボストン公演や1977年12月11日のテキサス公演なども出てくるので、もう収拾がつかなくなる。

 膨大なクイーンのライブ公演から、ライヴ・エイドをクライマックスに選んだのは何故なのか?

劇中の父のセリフが伏線だった

 もちろん、物語の収まりと映えを良くするにはうってつけの公演であることは確かだ。なにかと衝突していた父ボミがフレディに聞かせていた“善き思い、善き言葉、善き行い”がライヴ・エイドとして実践されることで、彼はフレディの選んだ道、生きざまに理解を示す。

 実際にはすでに1979年のカンボジア難民救済コンサートに参加して“善き行い”を果たしているが、こちらの会場となったハマースミス・オデオンは収容人数が5千人の屋内劇場。ライヴ・エイドのウェンブリー・スタジアムは9万人の収容が可能なうえに、米フィラデルフィアのJFKスタジアムとの二元開催、世界84カ国で衛星同時生中継、視聴者数は19億人。

 どちらも意義のあるイベントで比べられるものではないが、規模などを考えるとライヴ・エイドのほうがどうしたって画になるし、選んでしまうだろう。

 さらに言うならば、プレイした時間も作劇的にうってつけなのである。映画では4曲プレイで約13分30秒だが、実際は6曲プレイで約21分。あくまで筆者の主観だが、尺が134分の作品であれば、クライマックスに配するには長すぎず、短すぎずの絶妙なバランスだと思う。公開当時は6曲=21分にしたっていいじゃないかと思っていたが、そんなことは制作側も重々承知していたようで「愛という名の欲望」「ウィ・ウィル・ロック・ユー」の演奏シーンもしっかり撮影されており、6曲プレイで21分55秒の〈完全版〉が「“ライヴ・エイド”パフォーマンス映像」としてブルーレイの特典に収められている。

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    飲食店の酒提供に対し小刻みな制限をかける小池都知事 科学的根拠はあるのか

    深谷隆司

    06月20日 16:18

  2. 2

    年上の高齢男性から告白されるということについて

    紙屋高雪

    06月21日 09:11

  3. 3

    共同通信『慰安婦謝罪像、東京で展示を検討』 とんでもないことで許せぬ

    和田政宗

    06月21日 08:22

  4. 4

    「反ワクチン」言説は支持しません。が、Amazonなどからの一斉排除はいささかの懸念が残る

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

    06月21日 08:18

  5. 5

    元トップAV女優・上原亜衣が語る“身バレの現実”と“動画戦略”

    文春オンライン

    06月20日 16:01

  6. 6

    『閃光のハサウェイ』ヒロインの作画が驚異的! とにかく丁寧に作られた映画だった

    キャリコネニュース

    06月20日 14:29

  7. 7

    ワクチン接種の義務付けをめぐる「公共の福祉」と「個人の自由」日本とアメリカで違い

    中村ゆきつぐ

    06月21日 08:35

  8. 8

    【驚愕】自民党系の横浜市長選候補者がカジノ反対へ

    木曽崇

    06月20日 11:57

  9. 9

    やはり世代交代ですね。小此木さんの横浜市長選挙への転進にエールを送る

    早川忠孝

    06月20日 17:30

  10. 10

    戦争映画としての「閃光のハサウェイ」

    諌山裕

    06月20日 09:58

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。