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軽減税率議論よりも先にすべきことと新聞の思惑

来年4月に予定されている消費税増税に関する議論が盛り上がりを見せてきました。昨日は自民、公明両党が休日返上で軽減税率の実施に関する議論をおこなったとか。政権奪取後早くもアベノミクス効果が株価上昇、円安傾向を生み出したと自信を深めた安倍政権は、「来年の実施」を前提に着々と外堀固めをすすめているようです。

ただちょっと待ってくださいよ。増税に関しては確かに、現行5%の消費税を14年4月から8%、15年9月から10%に引き上げる法案が昨夏成立していますが、ここには「景気条項」というものが一応設けられていていたはずです。ところがこのところの報道は、どうも予定のスケジュールどおりでの実施がすでに決まったかのような報道姿勢に思えてなりません。

今一度、復習しましょう。増税のスケジュールどおりの実施を前に、13年度4~6月の経済回復状況を見て、実施の可否を判断するとなっていたはずです。ただ問題点は、この法案には、「2011年度から20年度までの平均で名目3%、実質2%」を目指すという中長期での経済状況の好転が政策の努力目標として盛り込まれているに過ぎず、増税前の経済状況を具体的な数字を提示した実施条件とはなっていない点です。要は首相のさじ加減ひとつでこの条項はいかようにもなるわけです。

法案内容の詰めの段階で、経済回復を判断する明確な指標を条件として入れるか否かの議論があったものの、最終的には政府が「景気好転が確認された」と判断すればGOが出せるというモノに落ち着いてしまったのでした。この点は、財務官僚に操られた野田政権と政権交代が視野に入っていた官僚寄り自民党の利害が一致したことで二大政党の相互牽制が効かず、片手落ち法案の感が強くなってしまったわけです。あの当時から、十分嫌な予感は感じさせられてはいたのですが、結局景気動向に関係なく実施できる“増税ありき”法案であるという懸念がぬぐえないのです。

問題はメディアの対応にもあります。それは冒頭でも触れたように、現段階で新聞各社がこの点を全く振り返えることもなく、増税の施行細則詰めの議論報道にばかりに走っている点です。税負担の公平の原則の立場からも、軽減税率等の問題は確かに重要ですが、事の順序から言えば新聞各社が今なすべきことはこう言った実施細則の詰めよりはむしろ、実施スケジュールを左右する「経済状況好転の判断」を何の数字を持っておこなうかを決めさせることなのではないのでしょうか。

ここを決めないことには国民の増税のスケジュールどおりでの実施に関する最終的な納得は得られないわけであり、私は夏の参院選における最大の争点をそこに持っていくべきなのではないかとさえ思うのです。結局このまま、「首相の政治的決断に増税実施の可否をゆだねます」となってしまったのでは、専門家の意見を無視した野田政権下での原発再稼動となんら変わりないのではないかとさえ思えます。

現段階で経済の専門家による判断指標の策定を急ぎ、秋になってからの“後出しじゃんけん”をさせないために、「この指標は○○以上なら実施、未満なら実施延期」という誰の目にも明らかな増税の実施可否のルールを今国民に提示した上で、実施の可否決定は明快にすすめられるべきだと思うのです。

本題からはややそれますが、新聞がこの点にことさら言及しないのには、理由がある気もしています。そのヒントは、公明党が主張する軽減税率対象品目に新聞が入っていた点です。「コメ」「みそ」「新聞」という並びに違和感を覚えない人はいないでしょう。なぜ「新聞」が?当然公明党の思惑は、同党支持団体の主要財源が新聞購読料であるという理由なのは想像に難くないのですが。

大手新聞社サイドはどうか。軽減税率の対象品目になるかならないかは、ビジネス上においては増税の影響を回避する意味でとても重要な問題であり、どの業界も「うちを軽減税率対象にして欲しい」と政府財務省に働きかける等、業界をあげて軽減税率対象品目化をめざすのが至極当然な動きでもあるわけです。現に新聞協会も、「新聞を含む知識への課税強化は民主主義の維持・発展を損なう」との公式コメントを出してもいますから(言っていることはよく分かりませんが)、新聞は業界あげて軽減税率対象の座を虎視眈々狙っているのです。

これは政府財務省にとってみれば、格好のメディア言論操作のチャンスです。新聞の軽減税率化をちらつかせつつ、計画通りの増税実施を既定路線姿勢で報道をさせ、国民に景気条項の存在など忘れさせてスムーズに増税実施になだれ込むことできれば御の字な訳ですから。若干なりとも言論統制のにおいを感じさせられることは、非常に不安な心持にさせられます。ここ2~3日の新聞報道では、軽減税率の対象として「新聞」の名は各紙とも引っ込めているようで、世間の批判を浴びないよう細心の注意が払われているようにも思えるのです。

本題に戻ります。今なすべきは「経済状況の好転」を判断する数値の決定です。企業経営においても、事業の成否を判断する際に目標となる数値の達否をもっておこなわないなら、すなわちそれは“どんぶり勘定”以外の何物でもないのです。判断指標としてGDPがよいのか、消費者物価指数がよいのか、あるいは様々な指標をミックして出される新たな指標が必要であるのか、論理的に増税実施の可否を国民に説明できる指標を今決めるべきだと思うのです。いずれにしても、“後出しじゃんけん”だけは絶対に許してはいけません。

増税が単に増税にとどまらずに、景気の先行きに大きく影響を及ぼす重大な問題だけに今黙っていてはいけないのだと思うのです。財政再建の観点から消費増税の必要性は認めつつも、不況下での増税実施には最大限の慎重さもって臨む必要があるのです。官僚や政治家や一部財界の既得権益擁護目的に利用されては絶対にいけません。新聞各紙はその自覚をもって増税実施に向けて今なすべきことを、自己の利益を捨てでも訴えかけて欲しいと思います。

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