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「ダメ。ゼッタイ。」ポスターを貼らないで!薬物依存症家族会の悲痛な叫び

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写真:大麻使用罪創設に反対する記者会見を行う関連団体(2021年6月1日) 提供:大麻仕様材創設に反対する依存症関連団体・支援者ネットワーク

田中紀子(ギャンブル依存症問題を考える会代表)

【まとめ】

・危険でない薬物である日突然「犯罪者」に。非犯罪化の推進を。

・薬物依存者や家族を苦しめる「ダメ。ゼッタイ。」ポスター。

・薬物問題は刑罰では解決できない。税金は社会的支援に投入を。

■刑務所などの矯正施設に支援の情報を!

ご存知の通り薬物事犯の再犯者率は現在でもおよそ7割に及んでいる。しかも年代が上がるごとに再犯者率も上がり、50代以上では84.9%にも及んでいる。

▲資料 「覚醒剤事犯の再犯者率推移」 出典:公益財団法人 麻薬・覚醒剤乱用防止センター ホームページ

人が薬物依存症に陥るには様々な背景がある。

再犯を防止するには、その人の背景を見つめ直し、大きな原因となっているものに、心理療法や環境改善、精神的な支援や場合によっては生活保護などの経済的な支援、また社会復帰への道筋をつけていかなくてはならない。

私たちは常々薬物の再犯を防ぐには、こうした人との繋がりをどうやって作るかを、矯正施設に伝えたいと願ってきたが、現在の刑罰のシステムは執行猶予、仮釈放、刑期満了のいずれの場合でも、殆ど何の支援にも繋がれぬまま社会に出されてしまう。

薬物依存症の回復施設と言えば「ダルク」が有名だが、このダルクの調査を研究者が行ったところ、施設利用開始時における法的状態としては、満期釈放後 14.5%、執行猶予中(保護観察なし)8.3%、仮釈放中7.5%、執行猶予中(保護観察あり)4.0%、保釈中1.4%、いずれもあてはまらない63.9%となっており、矯正施設から回復支援に繋がって来る人は利用者のうち3割強しかいない


しかし現行制度ではこれも当然の結果で、考えてみても頂きたいが、刑務所に行かないまでも、日本では大麻やLSDなど大して健康被害のない薬物をわずかばかり所持していただけで、20日前後勾留されてしまうのである。

世間を騒がせた某女優さんの場合など、ごくごく微量MDMA 0.198g、LSDを0.685g所持していただけできっちり20日間勾留され、その上、まるで重大犯罪を犯したかのような騒ぎぶり、芸能界からも社会復帰すらさせてなるものかといった人権侵害コメントがまるで正義かのように取り上げられるのが日本である。

20日間も突然勾留され、会社に連絡する手段も奪われ、無断欠勤が続けば当然に解雇されてしまうだろう。つまり逮捕や収監という刑罰で、薬物問題を解決しようとすれば、社会的信用、人との繋がり、キャリアの喪失など社会復帰への条件がどんどん悪くなり、孤独と孤立からますます薬物が必要な状況に陥ってしまう可能性が大きいのである。

孤独と孤立に追いやられた薬物依存症者は、刑罰の回数が重なれば重なるほど、矯正施設からでたあとは「とにかく働かなくては」と追い詰められていく。その上収監されている間は環境的に薬物を止めているので「自分でコントロールできる」と依存症問題を否認してしまう。まず薬物依存の治療をし、その上で住まいや職場の環境調整をしていく必要があるが、孤立している薬物依存症者にはその余裕がない。

しかしながら、そうは言ってもなんとか再犯率を下げ、薬物に人生を支配されてしまった人々を救い出さなくてはならない。そこで現在私が代表をつとめている、一般社団法人ARTS「清原和博さん、高知東生さん、塚本堅一さんの著書を矯正施設に届けたい」というクラウドファンディングを立ち上げた。(※下図)


清原和博さん、高知東生さん、塚本堅一さんの著書には薬物使用に至った背景、例えば清原さんなら引退したアスリートのセカンドキャリア問題、高知さんなら過酷な生い立ち、塚本さんならLGBTなどご本人が抱えてこられた心の内が余すことなく吐露されている。

その上、現在歩まれている回復のレールにいかに繋がったか、そしてそのレールにのったことで状況がどう変化していったか、といった経過がつぶさに描かれている。

我々はこのお三方の著書を、全国の鑑別所、少年院、少年刑務所、保護観察所、刑務所にできるだけ多く配本し、病院や回復施設、自助グループといった支援先に繋がることができるようにしたいと願っている。

収監中、暇な時間は本を読むくらいしかやることがないと聞く。また1冊の本との出会いが人生を変えることもよくある。著名人の自叙伝となれば興味を持って貰えるのではと考え、清原さん、高知さん、塚本さん、出版社、法務省矯正局の全面協力を得てプロジェクトにこぎつけた。一人でも多くの方の手に届き、人生を変える決断に繋がるようご支援頂けたらと願っている。

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