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京都で開催された高等教育研究会・大学職員フォーラム「教育の質的転換に向けた大学教職員の役割」に参加してきました。

high190です。

ご挨拶が遅くなりましたが、2013年最初の記事ということで本年もどうぞよろしくお願いいたします。

3年連続で参加している高等教育研究会主催の大学職員フォーラムが1月12日(土)に開催されたので、今年も参加してきました。*1今年の内容を備忘録としてまとめておきたいと思います。

また、その他の参加者の方もまとめを公表されているので、そちらも是非ご覧下さい。*2

リンク先を見る

基調報告

(1)大学改革実行プランと大学教育の質的転換について

文部科学省高等教育局高等教育企画課高等教育政策室専門官 小山田享史氏

  • 大学改革実行プランについて
      • 我が国が直面する課題、想定される課題を踏まえ、求められる人材増を議論。文科省としては、大学政策の基本政策として大学ビジョンを策定することとしている。大学改革実行プランのスケジュール(6年間のPDCA)平成24年度→改革始動期、平成25・26年度→改革集中実行期(あわせて中教審でも制度的な議論)、平成27~29年度→改革検証・深化発展期。
  • 8月28日公表の答申「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)」について
      • 大学において速やかに取り組む事項
        • 学長を中心とした教学マネジメント体制の確立、プログラムとしての学士課程教育
        • 自動車を作る場合のロジックを大学教育に当てはめて考えた場合
            • 目的(学位授与方針)は何か?自動車を作る際、個々の部品を相互連携しないと自動車にならない。完成後は製品がうまく走るかどうかを含めて評価をしなければいけない。環境性能の高い自動車のコンセプトであっても、内容を社会にアピールしなければ売れないので、分かりやすい形で社会に性能を示していくこと、販売後のクレームへの対応・改善が必要になる。企業と大学では事業活動が異なるが、製造者責任のようなものが大学教育にも求められているのではないか。
      • 大学以外において速やかに取り組む事項
        • ファカルティ・ディベロッパー、IRの専門家育成に関して、大学間連携での対応を模索。
        • 教育サポートスタッフの充実、図書館機能の充実などを行う大学への支援。地域社会・企業については、大学と連携した学生支援等を要望。
      • 大学は主体的に学ぶところとの原点に立ち返るために
      • この答申を契機に「大学で学士課程教育の質的転換のために今どのような行動を始めるか」「その好循環の確立のために何が必要か」ということを議論いただくことが重要。予測困難な時代を生き抜かなければならない若者や学生の力を伸ばすために、大学教育の質的転換に向けた認識の共有と全学的な教学マネジメントは必要不可欠で、そのために事務スタッフが果たす役割は非常に大きく、学生の視点に立って学生のために教育の質向上を図っていくことを不断に取り組んでいって欲しい。そういった取組は文部科学省としても支援していきたい。

話題提供1

(2)大学職員の人材育成と能力開発~これまでの取組とこれからの課題~

愛媛大学教育企画室副室長・教授 秦敬治氏

これまでの大学職員に関するSD活動(大学行政管理学会・大学教育学会等)、中教審答申等を踏まえた報告を行う。

  • 大学行政管理学会、大学教育学会等での研究活動
      • 大学職員の専門性に関する研究、教職恊働・カリキュラムマネジメント、事務組織機能評価などを行ってきた。
  • 大学職員が置かれている現状
      • 教職員のメンタルヘルスに関する問題が増えており、大学及び各部局・部署のベクトルと個人のベクトル合わない「ベクトルの不一致によるギャップ」で相互コミュニケーションの不足している可能性がある。
      • スタッフ・ポートフォリオの活用等により自学の職員がどのような能力を持っているかを把握し、かつキャリアアップサポートを行うことが重要。職員研修プログラムで個々の職員の能力を開発する。
  • SPODでのSD活動(四国地区大学教職員能力開発ネットワーク・Shikoku Professional and Organizational Development Network in Higher Education)
      • 人材育成ビジョンの策定、人事評価制度の構築、SDプログラムの構築・実施、スタッフ・ポートフォリオの構築・導入、SD効果測定などを行ってきた。
  • 中教審の答申を受けて、職員に求められること
      • 客観的データを重視する視点、IR・点検評価
      • 迅速な改革・大学による改革努力
      • アクティブ・ラーニングに向けた環境整備・情報収集
      • 課題共有の必要性、大学ビジョンと個人ビジョンの関係性
      • 体系的・組織的な教育実施、カリキュラムマネジメントの担い手となる職員(職員なら教育を客観視できる)
      • 専門スタッフの育成と教育課程編成(カリキュラムマネジメント)への組織的参画
  • 今後の大学側の対応
      • 職員のグローバル化
        • 単に語学力を付けることでなく、カリキュラムマネジメント等について他国の大学職員と話す能力等、グローバルスタンダードの高等教育担当者でいられるかが重要。
        • 人材育成ビジョンの策定、ジョブ・ディスクリプションの明確化、新規採用の厳格化にあわせて、体系的、継続的、段階的なSDの実施と自前講師の育成による「プロ集団化」が必要となる。
        • オーストラリアの大学を調査した際、向こうの職員はスペシャリスト採用なので異動が無い代わりに、全体の労働時間の4分の1は別の部署で仕事をするよう、人事制度が設計されていることが分かった。

話題提供2

(3)教育の質的転換に向けた取組-中央教育審議会(2012年8月28日)答申への京都産業大学の対応-

京都産業大学学長室課長(教育支援研究開発担当)森洋氏

  • 京都産業大学のミッションとして「型破りな大学」を目指す。
      • 8月答申と本プレゼンの関連部分に関する前提共有
        • 答申で示された「速やかに取り組むことが求められる事項」への対応として、専門的な支援スタッフによるプログラムとしての学士教育課程の育成について明示、アセスメントテスト、ルーブリック、学修ポートフォリオ、CAP制、ナンバリング、専門家(ファカルティ・ディベロッパー)の養成や確保、活用などを行っていく。
        • 学長室に置かれた「教育支援研究開発担当」で、3つのワーキンググループ(学部FD推進WG・大学院FD推進WG・高等教育調査・研究WG)を運営し、各調査の結果は必ず全学にフィードバックしている。具体的には、学生実態調査(学生の行動特性・コンピテンシーを調査)、ゼミ活動実態調査、学習成果実感調査等(授業評価アンケート、授業週14回目に実施、学部のカリキュラム改革の基礎データとして提供)を行っている。
        • 教育の質向上のフレームワーク「京都産業大学PDCAスパイラル(教育改善システム)」を専門スタッフと共に構築している。現場は一番情報を持っているが、上層部から理解されていないと感じており、指示が上から「降ってくる」と感じている。モチベーションを落とさないために、ミドルアップ・ダウン・マネジメントによる「対話」を促進して、現場に対し主体的取組を誘発・実践してもらうことで、当事者意識を共有してもらう。
        • 学内のマネジメント研究科への進学を若手職員に推奨している。職員に必要な能力は教育学よりも経営学と定義。自己啓発制度、FD/SD研修、自主勉強会「むすび塾」を実施。
        • 専門スタッフを嘱託職員として雇用して改革に着手。専門スタッフと職員が共に働くことでOJTによる能力開発、専門スタッフの知見・能力による業務の質向上・改革のスピード化、実質化
        • 教員のロイヤリティと職員のロイヤリティの違い(教員と比べて職員は組織への忠誠度が高い)
      • 職員間のコミュニケーションの促進「対話」と「場」の環境
        • 職員間の対話を行うコミュニケーションの場が伝統的に存在している。具体的には、年末に職員互助会が主体となった全職員参加の大規模な忘年会を実施し、理事長、学長、副学長を招待。
        • 今後、京都産業大学が取りうる方向性として、戦略的経営機能と教育研究開発機能の統合(戦略企画・大学ガバナンスとFD等教育研究開発の統合)、オフェンス機能の強化(横断的組織改革、教学システムの再構築等)、ミドルアップ・ダウン・マネジメントで「対話」を促進し、継続的なPDCAが回す(早期の企画段階から関係部署との連携によって、当事者意識を持ってもらう)。
      • 学生・教員・職員の方向性、ベクトルを合わせる。学内に「卒業生の将来が、わが大学の理想を示す。」との広告を掲示。

質疑応答では、京都産業大学の森課長が報告された「専門スタッフ」について、各大学の方から質問が飛んでいました。大学教育に関連する高度な分析能力等を持った人材の確保と活用をどのように行うかが、これからの課題ですが、具体的にどう採用・育成していくか悩んでいる大学は多いと思われ、処遇や募集方法などの質問が出ていました。その他にも大学教育に対する社会の評価、SD・FDのあり方とスタッフポートフォリオの活用方策、設置認可・高大接続についての質問が出るなど、密度の濃い質疑応答になりました。高大接続については、アメリカで実施されているCLA*3やETS*4などの汎用的能力を問うテスト等の話が出ましたので、今後の高大接続を巡る議論を調べるにあたっても良い勉強になりました。

今回は行政担当者、教員、職員と大学を取り巻くそれぞれの立場の方から教育の質的転換をいかに捉えるかの貴重なお話を伺うことができました。個人的には教職員のメンタルヘルスについての対応など、大学を取り巻く環境の変化に伴う大学内でのコミュニケーションの変容に、どう対処していくかがこれからの課題だと思います。大学教育の質的転換に合わせて、教育以外の面も様々に質的転換していくことが求められていることを再確認した、有意義な研修でした。また来年も可能であれば参加したいですね。

*1:京都で開催された「高等教育研究会」の大学職員フォーラムに参加してきました。 http://d.hatena.ne.jp/high190/20120110

*2:高等教育研究会「教育の質的転換に向けた大学教職員の役割(図書館の中では走らないでください!) http://d.hatena.ne.jp/klarer-himmel13/20130113

*3:Collegiate Learning Assessment http://www.collegiatelearningassessment.org/

*4:Educational Testing Service http://www.ets.org/

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