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新版 超ヒマ社会をつくる2 超コロナ戦略

近著「新版 超ヒマ社会をつくる アフターコロナはネコの時代」。その一部を、しみ出します。

第1章「超コロナ戦略」から。

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○ぼくらは2割死ぬだろうか

バタン。地球は病原菌に閉じ込められた。人は死に、葬儀もできず、泣き叫ぶ。怒りをぶつける相手がいない。経済が潰れる。神にすがる。歌う。14世紀のペスト、19世紀のコレラを凌ぐ地域に広がる。2次の世界大戦を上回る地帯が被害を受ける。甲子園の夏が取りやめになったのは米騒動と太平洋戦争の2回。一次大戦と二次大戦。それに次ぐ事件である。戦争だ。

2020年1月に中国・武漢で特定されたウィルスは、2021年初頭に世界で8000万人を感染させていた。大戦後、核の脅威があり、地域紛争があり、テロがあり、震災や台風があり、それら危機に何とか折り合いをつけてきた人類を待ち受けたのが、目に見えない疫病だった。

見えない敵をどう抑えるか。いや、戦う相手ではないのかもしれない。風邪やインフルエンザのように、折り合いをつけ、同居していく相手なのかもしれない。ペスト流行では当時の世界人口の2割が死んだという。そんな事態にならぬことを祈る。

世銀は2020年の世界の経済成長率はマイナス4.3%とはじく。2020年のGDPはアメリカは2017年の規模に縮小した。フランスは2010年に、日本は2012年の規模に減るという。大変です。でも、どうだろう。ペスト並みに2割の人口が失われなくても、事態が悪化して、経済が2割死ぬと想定したら。そしたら、ぼくらは2割死ぬだろうか。

んなこたああるまい。今GDPは550兆円で、2割少ない450兆円というのは1990年、バブルの時期だ。平成の始まりだ。あの頃、ぼくらは案外幸せではなかったか。豊かじゃなかったか。バブルが弾けたって、さほど気は滅入らなかった。令和の始まりに、仮にそれくらい落っこちたって、という腹ぐくりも、あっていい。いったん落ち着こうぜ。

しかしまだ世界はこうもバラバラだったのか。それぞれの国の仕組みが。中国の独裁政権は徹底的な封鎖と顔認識技術を導入した追跡をかけ、抑え込んだと胸を張る。大統領制のフランスも厳しい外出規制・ロックダウンをとる。同じ大統領制でも合衆国のアメリカは地域差が激しく、感染者数が世界一となった。[トップ・オブ・ザ・ワールド](カーペンターズ)

日本と同じ議院内閣制のイギリスは集団免疫の獲得という独自路線を図るもジョンソン首相が感染入院し、ロックダウンを余儀なくされた。インドは警官が外出する民衆に腕立て伏せをさせるが、アメリカに次いで感染者数が世界2位だ。ロシアは何が起きているのかよくわからない。

どの仕組みがコロナに効くのか。まだ結論は出ない。だがこれは政治と危機管理に関する地球規模の実験だ。成功・失敗のテストが多数同時に走っている。よその国の結果を待って対応する暇がない。いずれまた来るであろう世界同時の危機に、今回の多元的な実験は何を遺産とするだろう。

日本にとっては、敗戦以来の、3.11を上回る全国規模の危機。まだ評価するには早いが、今のところ踏ん張っている。コロナによる死者数は2021年1月時点でアメリカは35万人、インド15万人、イタリア7.5万人。日本は3700人。アメリカの1/100だ。だいいちコロナ後の日本の死者数は、インフルエンザなどの死者が減ったことで、全体に減っている。

社会的な混乱にしろ、経済の落ち込みにしろ、欧米に比べればましだ。敗戦国であり、政治にさほどの権力を与えていないこの国は、幸か不幸かロックアウトもできない。緊急事態だと宣言して、対応をお願いするだけ。学校もコンビニも映画館も開いている。買い物もジョギングもOK。東京はニューヨークやパリやロンドンの姿とは大違いだ。

どれだけコロナを抑えられるかは、自粛と忖度にかかっていた。国や自治体の「要請」という空気のようなものの効き目は、それを受けた民がどれだけ空気を読んでジシュクし、どれだけソンタクするか次第だ。自粛自粛自粛。忖度忖度忖度。平成の日本を縮こまらせてきた主犯である、空気を読むこの2つのクセに頼るほかない。

政府や自治体の対策よりも、民衆の文化が効いていたという説もある。ヤレと言わなくても距離を取る。むやみに人混みに行かない。もともと握手をしない。離れてあいさつする。キスもハグもしない。パンのように手で食べるものは少ない。家に土足で上がらない。風呂に入る。医療体制のようなインフラも大事な要素だが、文化や習俗がコロナを抑えた面もあるのかも。

反面、怖いデータもある。大阪大学らの調査によれば、コロナ感染を自業自得とみる人は、アメリカ1%、イギリス1.5%、中国4.8%に対し、日本は11.5%だという。病気はその人のせいなのだ。ピア・ツー・ピアの相互監視で同調圧力をかけて抑え込む。お上いらずだが、民衆の見えない視線で空気を読み合う。

日本のコロナ対応は成功のレガシーとして残るかもしれない。クールジャパンの新しいネタになるかもしれない。あるいは中国の高圧な権力よりも重たい空気社会が抑え込んだ例として認知されるのかもしれない。

さて、問題はデジタルである。世間の底が抜けず、なんとか体制を持ちこたえているのは、SNSやネットで情報を共有してきた訓練のたまものでもあろう。9.11も3.11もローカルな事件だった。今回はスマホ・ソーシャルメディア普及後初の世界的危機だ。

情報空間にはフェイクもデマも多いが、それを上回る対コロナがんばろう作戦に満ちている。デジタルは反ウィルスの役に立ちたい。空気を読み合って圧力をかけるのにもデジタルの技が効いている。一方、日本はデジタル敗戦が叫ばれ、国や自治体によるコロナ対策が思うように進まない。脱コロナのカギはデジタルが握る。

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