記事

「読み終えたら即メルカリ」は許せない? 中古売買は電子書籍にはない紙媒体の長所


先月、
「新刊本はメルカリで意外と高く売れる!」TSUTAYA一部店舗のPOPが批判を呼ぶ CCC「配慮欠けた」とキャンペーン中止
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2104/26/news143.html
という記事を目にしました。

「作家への敬意を欠いている!」等の意見がSNSで多く寄せられたようです。

僕も作家の一人として、CDや本などの著作物で生活をしている立場からすると、確かに作品が本屋さんで購入してもらえることなく、メルカリ等の中古売買で消費されきってしまったら、著者としての収入面が厳しくなります。

加えて店舗のPOPに買取価格が表示され、時間と共に価値がどんどん下がっていき、「1円」と表記されたりなんかしたのを目にしたら、「俺の作品1円か…」と虚しい気持ちになると思います。

さらに、並んでいる本たちの値段は同じなのに、隣の作品より僕の作品の買取価格が低いなんてのも、ちょっと辛いかもです。そう思うと、確かに配慮に欠けた表示の仕方なのかなと思ったりもしますが、記事によれば、TSUTAYAさんがこのキャンペーンを始めた理由は、

「店頭で新刊本のメルカリ査定価格が分かったら、新刊本を購入する機会が増えるという自社調査の結果を受けて」

とのこと。

確かに購入側の立場からすると、そう思います。

下取り可能なら購買意欲が増す事実

Pixabay

最近ではAppleのオンラインショップでも、パソコン等の購入ページに“下取りを開始”というリンクが加わっていて、すぐに下取り査定額が表示されます。

だったら今持っているMacを下取りに出せば、思いの外手軽に手に入るじゃん!となって、僕も先日下取りに出した上で新型iMacを買ったばかり。

やっぱり売れることが分かれば購入欲が高まりますし、今後のトレンドになる可能性もあります。

その結果、作者としても本の売り上げが伸びるわけで、歓迎して良い方法とも言えそうです。

でも、自身のグッズ売り場で、「グッズはメルカリで意外と高く売れる!」なんてPOPが貼られていたら、誰も幸せな気分にはならないと思います。

この表現が場所によっては不誠実になることは間違いないので、本屋さんでこのPOPを掲げるのもその対象となるかも知れません。

ただ、個人的にはこれはこれな気がしております。

音楽作品もCDからダウンロードになり、さらにはYouTubeで無料で音楽を聴くのが当たり前みたいな人も沢山います。

以前、RAG FAIRのフリーライブを見てくれた人から、「ファンになりました!家に帰ってYouTubeで聞きますね!」と言われたことがあるんです。

良かれと思って伝えてくれたのだと思いますが、「それじゃ、なんにもプラスにならないんだよなぁ」なんて感じたことがあります。

違法アップロードとそうでないものの違いを分かっていない人も多いでしょう。世の中があまりにも無料サービスや聴き放題、読み放題全盛で、昔に比べて1作品に対する単価、価値が下がっているのではないでしょうか。

無料だからこそクオリティを下げてはいけない

Pixabay

「この先、ミュージシャンはどうやって生きていくんだぁー!無料で聴けるものだって、経費がかかっているんですよー!」と葛藤していた頃、僕のラジオ番組にゲストで来てくださった、SING LIKE TALKINGの佐藤竹善さんに音楽業界の未来はどうすれば?と質問したことがありました。

竹善さんからは「だからこそクオリティを下げちゃいけない。それが僕らの使命だと思う」と答えが返ってきたのです。

僕は大先輩のその言葉に自分が恥ずかしくなりました。

その通りです。

どんな状況でも音楽はなくならない。文化はなくならない。
厳しい状況であればあるほど、本物しか生き残れない。
僕はなんて生温い環境で作品を作っていたのだ…。

どうであれ、もっと作品と向き合おう。その時強く思いました。

そういう向上心を持っていれば、今回のメルカリで本を売ったらお金が戻ってきますよー!のPOPは店舗のビジネスの方法であって、我々作家がとやかく言う立場ではないと思います。

「作者に失礼だ」と発信してくれるのはありがたいですが、それを言うならCDのレンタルだって作者に失礼ですよね。

一つの作品を不特定多数の人が回し聞きするわけで、教室で1冊の少年ジャンプを回し読みしているのと同じ状況です。

でも、僕もお金のなかった時代には、レンタルがあったからこそ聞けた、読めた作品が沢山あります。だから、レンタルという仕組みが不必要だとは思いません。

本屋さんで新刊を買って、読み終えたらすぐに買い取ってもらったり、メルカリ等に出品したりするパターンは、噛み砕けばCDやDVDをレンタルすることと変わらないのではないでしょうか。

その観点から考えたら、作品の裾野を広げる意味でも、メルカリでの流通価格表示は意義があるかも知れません。

ただレンタルに関しては、借りられた数によって権利者に報酬が支払われています。(詳細を書くと長く難しくなるので割愛)でも転売(メルカリ等)には権利者への報酬はありません。

記事によると、TSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブは、

「新刊の購入者が増加するのであれば、出版業界全体が利益を得るサイクルとなり得ると考えておりますし、それを凌駕するほどメルカリでの購入者が増えるのであれば、メルカリでの売買による差益を、出版社様や著者様に還元する仕組みの構築も企画していく必要があると考えております」

とコメントしており、これは実現可能ならば大歓迎のアイディア。

出品時にバーコードを登録するなど、どういう仕組みならそれが可能かは、相当な話し合いが必要な気もしますが、不可能ではないと思います。

これが実現すれば、売る方も「作者への援護射撃にもなってる!」と、いつもより心地よく出品出来るかも知れませんよね。早期の実現を願います。

「紙の本」は売れるというメリットを手放すな

Pixabay

リアル店舗の本屋さんの売り上げが落ちていく中、なんとか本が売れる方法はないだろうか?と知恵を絞って出たアイディアがメルカリ表記なんだと思います。

世間の少数の意見だけで安易にこのメルカリ表記を取り下げると、いよいよ出版業界、店舗も窮地に陥ってしまう可能性が高くなってしまうのではないでしょうか。

電子書籍の普及が進んでいく中、紙が電子書籍に勝てる要素としては、中古で売れるというのは大きいと思うのです。

「紙ならば読んだ後に売れる!」

これを売り文句にしても全く問題ない気がするのは僕だけでしょうか。

正直CDに関しては、音はすでにデジタルなので、パッケージに商品価値を持たせる以外、デジタル化は避けられないし、それで良いと思っていますが、紙媒体に関しては、紙で読むという行動は、不思議とそれに代えられない何かがありますよね。

音楽でいうなら、紙媒体と同様なのはアナログレコードでしょうか。

最近、アナログレコードの売り上げが伸びていて、購買層は昔を懐かしむ世代かと思いきや、アナログレコードを知らない若い世代の購入が伸びているのだとか。

「むしろ新しい。インテリアとしてカッコ良い」

ということらしいのです。

やはりアナログなものはいつの時代も人間にとって大切なもので、なくならない方が良いですね。

Pixabay

窮地に追い込まれているに等しい本屋さん。

「紙だと読んだ後に売れますよ」

という電子書籍に勝てる唯一の要素を、紙媒体好きの我々が押さえ込んではいけない気がするのですが、みなさんはどうお考えになりますか?

著者プロフィール



土屋礼央(つちや れお)
1976年生まれ、東京都国分寺市出身。RAG FAIRとして2001年にメジャーデビュー。 2011年よりソロプロジェクト「TTRE」をスタート。FM NACK5「カメレオンパーティー」TBSラジオ「たまむすび(木曜パートナー)」NHKラジオ第一「鉄旅・音旅 出発進行!~音で楽しむ鉄道旅~」などに出演中。主な著書に「ボクは食器洗いをやっていただけで、家事をやっていなかった。」「FC東京のために200兆円で味スタを満員にしてみた」「なんだ礼央化―ダ・ヴィンチ版」など。

Twitter - 土屋礼央 @reo_tsuchiya

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