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  • 2021年05月31日 08:50 (配信日時 05月31日 06:00)

「東京五輪」アスリートが優先接種を続々と嫌がっている理由 - 新田日明 (スポーツライター)

どうもスムーズには進みそうもない。日本オリンピック委員会(JOC)は東京五輪に参加する日本代表選手団、指導者ら一部関係者を対象に6月1日から新型コロナウイルスのワクチン接種を開始することを発表。しかし、すでに一部のメディアでも報じられているように早くも複数の国内競技連盟(NF)から接種を辞退したり、難色を示したりする選手が相当数出ているという。

(Pict Rider/gettyimages)

日本は約3600万人の高齢者への接種だけでなく、医療従事者約470万人の接種も完了していない。こうした中、国際オリンピック委員会(IOC)を通じて米薬品大手ファイザー社から無償提供されたワクチンを選手約600人と監督、コーチら約1600人の計約2200人を対象に優先接種を始めていく。

国内では「なぜアスリートや東京五輪の関係者が国民を差し置いて特別扱いされるのか」などといった批判が噴出していることもあり、前出のNFからは「優先接種を辞退もしくは嫌がる選手は自分たちが先にワクチンを打つことに罪悪感を覚えているからではないか」との見方も出ている。だが、それだけではない。どちらかと言えば、ワクチン接種で副反応が生じる可能性を懸念するアスリートが圧倒的に多いようである。

そもそも新型コロナウイルスのワクチンに関しては、パンデミックに対応するため〝突貫工事〟で主要各国において開発が進められた背景がある。本来ならば長い年月を要する新薬の臨床試験もスピード化された事実はどうしても否めない。こうして急ピッチで突き進んだワクチン開発の流れと副反応の発生率の高さとの因果関係は未だ不透明だが、いずれにしてもこれから優先接種を受けようとしている国内アスリートたちの不安につながっていることは紛れもない事実である。

米国の疾病対策センター(CDC)発表のデータによれば、2回接種が原則のワクチン(ファイザー製とビオンテック製を対象)の副反応として複数の症例が報告されている。一番多いのは接種部位の痛みで1回目が約68%、2回目は約75%。倦怠感や疲労感は1回目で約29%、2回目に約50%、頭痛がそれぞれ約26%と約42%。

他にも筋肉痛や発熱、腹痛や下痢などの症状が現れるケースもあるという。しかもCDCだけでなく欧米の医療機関や専門家からは高齢者より若年者に副反応が出る確率が高いデータも示されており、特に高度なパフォーマンスが都度要求されるアスリートたちには早い段階から接種に関して「時期や期間も含め細心の注意を払う必要性」が訴えられ続けてきた。

だが残念ながら日本は周知の事実として、ワクチン接種がOECD(経済協力開発機構)の加盟国の中で「最低ランク」とされるほど大きく遅れをとっているのが現状だ。この遅れこそが東京五輪に参加する国内アスリートたちの優先接種にも足かせとなっている。NFの中から「JOCや大会関係者は優先接種を本気で勧めたいなら、もっと早い時期からスタートさせるべきだった。副反応が生じる可能性を考慮すれば、6月ではどう考えても遅過ぎる」との不満が噴出しているのも無理はない。

実際、取材を進めてみると現場はかなり混乱している。まだ体操の種目別や新体操、陸上競技の男子十種、女子七種など代表選手が決まっていない競技も多くある中、アスリートたちからは「ワクチン接種による副反応でパフォーマンスへの悪影響は本当に全く出ないのか」と不安視する声も少なくない。NFの一部関係者も「6月に代表選考にかかわる大会を控える選手たちにとって2回の接種はスケジューリングを見ても、かなり無理がある」と指摘し、次のように本音を漏らす。

「すでに代表の座を射止めている選手にとっても開幕まで2カ月を切った6月以降から順次ワクチン接種を行っていく流れは、調整が大会直前で追い込み段階となることと照らし合わせて考えれば非常に難しい。副反応が現れ、自分の力が出せなくなり東京五輪の大会本番で不本意な結果に終わってしまったら、それこそ本末転倒。優先接種を受けたがらない選手が数多く出てくるとしても責められないし、やむを得ないと思う」

IOC(国際オリンピック委員会)は東京五輪へ参加する代表選手に対しワクチン接種を推奨しているが、絶対条件ではなくあくまでも任意としている。各国の接種の進捗状況に差があり、それを考慮しているからだ。ただ、ワクチン接種が順調な米国の有名アスリートたちの間で副反応例が実際に頻発しているケースを知れば、現段階で受けるか否か迷っている日本の選手たちをさらに及び腰にさせてしまうかもしれない。

陸上の米国代表ジャスティン・ガトリンもすでに接種を終えているが、やはり直後は強い倦怠感と「ヘビー級のボクサーに殴られたような頭痛に数日間さいなまれた」ことを報道陣に告白している。

どのように解決の道を模索していくのか

MLB(メジャーリーグ)では開幕当初、接種した日本人メジャーリーガー2人が副作用に悩まされた。5月中旬にタンパベイ・レイズからロサンゼルス・ドジャースにトレード移籍した筒香嘉智内野手もレイズ在籍時の4月末にワクチン接種で副反応を起こし、負傷者リスト入りしたこともあった。投打の二刀流で大活躍中のロサンゼルス・エンゼルス大谷翔平投手も今季開幕前の接種で体調不良に陥ったことを明かしている。

ちなみに今月23日にはプロ野球とJリーグ合同の「新型コロナウイルス対策連絡会議」終了後のオンライン会見の場で、NPB(日本野球機構)の斉藤惇コミッショナーが「ワクチンには副反応がある。アスリートの場合は、やはりコンデイションがベストを出すためには非常に重要。選手の立場からすると非常に悩むと思う」と発言。

同じオンライン会見でJリーグの村井満チェアマンは今後ワクチン接種の重要性を訴えていく一方で「受けない人の不利益がないことが必要。パフォーマンスへの影響をしっかり理解して向き合わないといけない」とも述べた。NPBもJリーグもそれぞれ野球とサッカーの競技で東京五輪に代表選手を送り出す組織だけに両トップの言葉には重みがある。

いざフタを開けてみたら、ワクチンの優先接種を受ける日本代表選手は副反応に対する懸念から当初の見込みよりも大幅に人数が減りそうな雲行きだ。しかしながら、参加するアスリートがワクチン接種を徹底できなければ当然ながら感染リスクが高まる。東京五輪開幕まで残り2カ月を切った中、日本政府や大会関係者が強く訴え続けている「安心安全の大会開催」への大きなネックとなってしまうのは必至だ。果たして、どのように解決の道を模索していくのか。その時間は限りなく少ないが、現実から目を背けてはいけない。

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