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昨年のバッシングを戦い抜いたパチンコ店幹部がいま語る経営哲学

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誰かのせいにするネタが尽きた

 ライブハウス、劇場、パチンコ店、歌舞伎町、夜の店全般、観光地や旅行業界、そして居酒屋、飲酒――1年以上の間にどれだけの”悪”がやり玉に挙げられただろう。為政者の笛に踊らされた連中は、次々と悪人を吊るしては別の獲物を探した。

「あのときバッシングした人の中にも、いつの間にかバッシングされる側になった人もいるでしょうね」

 私は舞台関係者ではない、音楽関係者ではない、パチンコ業界や水商売でもない――2020年の5月ごろ、こんな感覚でバッシングに加担した人々も、やがて旅行業界が、観光地と旅行者がバッシングされ(Go To トラベルを実施したのは日本政府である)、2021年に入ると居酒屋、外飲みから酒そのもののバッシングにまで繋がった。それぞれの愛好者も順繰りに窮屈となった。まさか酒までこんなことになると予想した人は少なかったのではないか。ナチス政権下の『彼らが最初共産主義者を攻撃したとき』がまさか令和の日本で繰り返されるとは。しかし大多数の日本人は当時のドイツ人より賢く気づきも早かった。いまやオリンピック翼賛運動には批判的、それどころか最大の悪は、その為政者どもが一般国民の命より大事にしていたはずの、オリンピックなる大運動会である。

「オリンピックはパチンコよりエビデンスないでしょう」

 学校の部活も運動会も修学旅行も中止にして大運動会、オリンピックを強行する。多くを奪われた子どもたちの80万人以上がそのオリンピックを学校行事として観戦する予定というシュールっぷり。100人以上のパーティーを主催する医師会会長と医師免許を持つ与党政治家がいるのだからエビデンスとして有効とでも言うのだろうか。それなら「さざ波」だし「屁みたい」と偉い方もおっしゃっているようなので、尊重しないのは失礼かもしれない。

「誰かのせいにするネタが尽きた、とも言えますね」

 つまるところ、上級国民はコロナを撒き散らさないが日本の一般国民は撒き散らすから駄目、それどころか国民が悪いと一般国民を”人流”と称し”悪”に仕立てようとしている。もう悪者のタネがないのだろう。東京都に至っては国より厳しい措置で飲食店や映画館を締め上げている。パチンコ・パチスロ店舗の団体である東京都遊技業協同組合は個々の判断に委ねるとしてかわした。多くの業界が今回は小池百合子都知事の言いなりにはならなかった。それでも映画館と百貨店は従った。肝心の協力金は約束通り振り込まれていないのに。

「声を上げなければ駄目なんです。それまでの努力に自信を持つべきなんです」

 西口さんが語ってくれた「声をあげる」「自信をもつ」という言葉――。百貨店はプライドに賭けて、神経質なほどに「新型コロナウイルス感染症の拡大予防ガイドライン」を徹底している。映画館に至っては先に西口さんが語る通りクラスターなど発生させていない。それもコロナ禍まっただ中に『鬼滅の刃』を上映、空前の動員を記録したにも関わらずだ。その他に『銀魂 THE FINAL』『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』などヒット作連発でもクラスターは起きていない。興行関係者の努力の賜物であり、立派なエビデンスだ。昨年のバッシングを戦い抜いたホール関係者ならではの言葉だろう。

 そして西口さんの言う通り、映連(日本映画製作者連盟)はついに6月1日からの営業再開を認めろと声を上げた。百貨店はすでに売り場拡大、営業時間延長で反旗を翻した。飲食店の一部は振り込まれない協力金に業を煮やして営業を再開している。その結果、都も映画館や百貨店を時短、もしくは土日のみ現状ママの調整に入った。それまでの仕事と努力に自信を持つ彼らが声を上げ、誇り高きエッセンシャルワーカーとして西口さん言うところの「支持してくれるお客様」のため、政府の考えるより現実的な”ウィズコロナ”へと踏み出した成果だ。オリンピックのためならどうなってもいい様子の政府や都を尻目に、多くの一般国民の決意は固まりつつあるようだ。「東京大会を実現するために、我々はいくつかの犠牲を払わなければならない」IOCに心底舐められている日本政府、国民の大部分は大運動会ごときにそんな犠牲は望まない。

「いまやオリンピックが悪なんて滑稽ですよね」

 あとはいつもの蕎麦屋でよもやま話。次々に悪を仕立て上げたあげく「オリンピックが悪」なんて笑い話にもならないが、ライブハウス、劇場、パチンコ店、歌舞伎町、夜の店全般、観光地や旅行業界、飲酒の次の悪がオリンピックになるとは。オリンピックを目指す老人たち(自民党4役の平均年齢71.5歳!)、彼らは一般国民のためではなくオリンピックのために「人流を抑えなければ」と嘆く。しかしその人流こそ一般国民一人一人の、声なき声そのものである。自治体の半数近くが「ワクチン接種は年内に終わらない」と嘆く体たらくをよそに、一般国民は国に頼ることを半ば諦め、たくましくウィズコロナを生きようとしている。バッシングに耐え抜いたパチンコ業界同様、それまでの努力に自信を持って。

【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)/本名:上崎洋一。1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。出版社勤務を経てフリーランス。全国俳誌協会賞、日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞(評論部門)受賞。『誰も書けなかったパチンコ20兆円の闇』(宝島社)、『ルポ 京アニを燃やした男』(第三書館)。近日刊『評伝 赤城さかえ 楸邨、波郷、兜太から愛されたコミュニスト俳人』(コールサック社)。

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