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「トップの売上は月580億円」急拡大する中国ライブコマースの危険な裏側

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5月25日、中国政府はライブコマース産業の規制を強化する新法を施行した。一体どこに問題があったのか。中国ITライターの山谷剛史さんは「中国では、ライブコマースにおいても胡散臭いニセモノが販売されている。今年の3月には著名インフルエンサーの販売商品にもニセモノが含まれていた。今後もニセモノ問題が解決することはないだろう」という――。

「かわ尊ぷ」と書かれた怪しい釣り竿がどんどん売れる

「釣り竿、サイズは各種あるよ!」「釣り竿を買ったら、これもこれもつける。計7点お土産につけちゃうよ!」

「かわ尊ぶ」という謎の日本語書かれた釣り竿を販売
「かわ尊ぷ」という謎の日本語書かれた釣り竿を販売(筆者提供)

中指に金色の指輪をはめたポロシャツの中年男性が熱く語る。中国では街中でおなじみの光景だがライブコマースだ。

男性が売ろうとしているのは「かわ尊ぷ」という謎の日本語が書かれた釣り竿だ。中国の釣り竿は日本製を偽る商品が多く、「かわ尊ぷ」の他にも「カンマ鯉」や「手に日る」など謎の日本語の商品がライブコマースでも売られている。要はニセモノだ。

「見て。落としても大丈夫だから頑丈。」

男性は釣り竿を手放し、地面に落ちた釣り竿がタイルにあたり「ガラーン!」と大きな音を立てる。拾っては落とし拾っては落とし、その度に「ガラーン!」と見ているスマホが大きな音を鳴らす。

「質問ください。えっとなになに? 130サイズの長さはどれくらいですか?」。男性は画面を覗き込む。「わかった、みてくれ」。そういうと男性はスッとかわ尊ぷの釣り竿を伸ばし、水の入ったペットボトルを釣り竿の先端にくくりつけてカメラの方角を変え、手際よく実演する。

中国の「泥臭い生活空間」を垣間見れるライブコマース

一方こんな光景も。ライブコマースで眼鏡を販売する深センの眼鏡企業「普莱斯眼鏡」は、スタッフが社内の配信部屋からメガネのラインアップ情報を発信しつつ、メガネを買いたい視聴者から質問が来たら丁寧なやりとりをし注文を受け付けている。

同社には配信部屋が複数用意され、各ライブコマースサービス向けにスタッフをおいて配信。注文を受けたら2時間で製品を完成させスピーディに配送する。

中国で普及したライブコマースアプリを利用すると、格差社会中国の様々な光景が数限りなく見られる。ライブコマースは解釈のしかたによっては、「覚えておきたい最新中国ビジネス」であり「中国ECトレンド」である。

また一方でライブコマースアプリをだらだらとみていると、以前のいかにもなECサイトでは感じなかった、「泥臭い生活空間」そのものの中国を、スマートフォンやタブレットで見ることができる。

「ジャパネットたかた」のようなECサービスとも言えるが、むしろ中国のリアルショップがそのままウェブ上に移ってきたようなものだ。不本意にも新型コロナウイルスの影響で長く住んでいた中国に行けていない筆者にとっては、懐かしくも胡散臭い風景がそこにあった。

ところで中国のライブコマースが普及した背景についてだが、各所に書かれているので簡単にまとめておこう。

コロナ禍をきっかけに急速に普及

2020年の年始に中国で新型コロナウイルスが感染拡大し、感染地域を中心に人々の動きが制限された。

特に武漢がある湖北省で感染が拡大していったが、それ以外の地域においても各住民に極力外出させないよう、都市において「小区」と呼ばれるマンション団地の入口で出入りを制限し、農村においても各村に通じる道を封じ検問所を設置した。

人々は家や庭で待機するしかなく、百貨店をはじめ各店舗も客足が途絶えたため商品を売りようがない。そこで注目されたのが、コロナ以前にも公開されていたライブコマースのサービスだ。

このサービスによって、コロナ禍における商品の売買が促進されていった。さらに、中国における新型コロナウイルスの感染状況が落ち着いてきた2020年6月と11月に行われた2大ネットセールにおいてもライブコマースは注目され、一気に普及して今に至る……と、こんな感じである。

ライブコマースでさくらんぼを直販する農家
ライブコマースでさくらんぼを直販する農家(筆者提供)

中国の調査会社「iiMedia Research」によれば、ライブコマース企業市場規模は、2019年の4338億元(約7兆円)から2020年には9610億元(約16兆円)と前年比2倍以上の成長を記録した。(※1)

ライブコマースが普及したことにより、中国のネットビジネスでは様々な変化が起きた。アリババ、テンセント、バイトダンスなどの大手がライブコマースで競合するようになったのだ。

ライブコマースに合わせた専用ディスプレーや、外国語にリアルタイム翻訳できるサービスなどが開発され、CGを活用したVTuverが配信する試みも行われた。

また、安心安全を求める消費者と、農作物を売りたい農家、それに農村の経済をITで改善していきたい政府と事例を作りたいIT企業によって、農村がライブコマースで農作物を売るようになった。ライブコマース人気に合わせて新技術が登場したわけだ。

(※1)https://www.iimedia.cn/c1061/78301.html

1万人のライバー育成を掲げる自治体も

ライブコマースが急速に普及していくなかで、桁違いの販売額を叩き出すスタープレーヤーやMCN(マルチチャンネルネットワーク:ライブ配信者のタレントマネジメントとコンテンツ制作配信をサポートする組織)が台頭し、のちほど紹介するが一部のスタープレーヤーが売上額の多くを占める結果となった。

MCNはライブコマースで稼げる組織と認知され、当初は数多くのMCNが資金調達を受けた。また、社会的な認知度が高まったこともあり、ライブコマースによる販売を地場産業にすべく、MCNなど関連企業を誘致する自治体も出てきている。

例えば広州市が行った「広州市商務局関于印発広州市直播電商発展行動方案(2020~2022年)」では、「2022年までに1つのライブコマース集中産業地区の建設、ライブストリーミングでリーダー企業10社の台頭、100社のMCNの育成、1000社のネットトレンドによって人気となるブランド形成、1万人のライバーの育成」を目標としている。

ライブコマースが普及するや企業も役所も動き出すあたり中国はアクションが早く、なにかと行動が遅いと評される日本も見習いたいところだ。

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