記事
  • LM-7
  • 2021年05月25日 10:18

失われた30年、ささやかな経済成長に見合った賃金上昇すらなかった

1990年初頭より始まる30年にわたる経済低迷は失われた30年と呼ばれている。

この30年の間に日本国民が失ったものは多いが、中でも最も重要なものの一つは賃金だ。30年もの長きに渡り賃金上昇は無きに等しく、かつて経済大国と呼ばれ世界有数の豊かさを誇った日本はこの30年で完全に過去のものとなった。

本エントリでは賃金に注目して、失われた30年を振り返ってみたい。

まずは平均賃金を見てみよう。



図上は1990年から2019年までのOECD諸国の平均賃金の推移を示している。1990年からの30年で日本の平均賃金は2,205ドル、わずか6%の上昇に留まった。日本を示す青いラインがほとんど横ばいであることが分かるだろう。

図下のOECD内の平均賃金の順位の推移を見ると、日本は1990年では12位であったが、30年で順位を12位落とし現在では24位だ。2015年には隣国である韓国にも抜かされ、OECDでも下位層に落ちてしまった。日本は「貧しい国」となったのだ。

1990年比の平均賃金の増加額と、増加率を示したのが次の図だ(1990年のデータがあるOECD22カ国)。円の大きさは平均賃金の絶対額を示している。



日本は増加額、増加率ともワースト2位という惨状だ。日本がたった2,000ドル、6%の増加に留まっている間に、アメリカは20,000ドル、40%増加した。韓国も同額20,000ドルの増加、増加率は90%に達する。ほぼ倍になったことになる。30年も足踏みしていたら他国に抜かされ、相対的に貧乏な国となるのは当たり前の話だ。

なぜ我々の賃金はこんなにも上がらないのか?この30年経済成長に失敗したのは確かだ。この30年経済成長をしていないから賃金が上がらなかったのか?

次の図は1人あたりの購買力平価GDPと平均賃金をプロットしたものだ。各国のラインの起点が1990年、終点●が2019年を示している。



日本は図の中央あたりでほぼ水平に移動している。30年で平均賃金は2,000ドルしか上がらなかったが、1人あたりのGDPは、他国に比べれば小幅とは言え、1990年に比べて20,000ドル増加し、2019年には40,000ドルを超えた。1人あたりGDPは30年でほぼ倍になったのだ。

1人あたりGDPが倍になったのであれば、賃金も倍になってほしいところだ。実は他国はGDPの増加率よりも賃金の増加率のほうが高い。ラインの角度が日本と他国ではぜんぜん異なることが分かるだろう(ほぼ同じ推移をしているのはワースト1位のイタリアだ)。他国はGDP以上に賃金を上げてきた。

GDPの増加に合わせて他国と同程度に賃金が増加していたら、日本の平均賃金は今より10,000ドル多い45,000ドル程度にはなっていただろう。年収が100万円違えば暮らしはだいぶ楽になったのではないだろうか。

つまり、失われた30年において、日本は経済成長も十分ではなかったが、それにもまして、経済成長に見合った賃金増加がなされなかったことが分かる。この30年、日本の製造業は安い労働力を求めて海外に製造拠点を移しつつ、日本の高い給与が国際競争力を奪うとして賃上げを拒んできた。こうした賃金抑制が長く続くデフレの原因と言えるだろう。

なぜ日本企業は賃上げを抑制するようになったのかでは、日本の賃金が低い原因として次の4点を挙げている。
  • 労働組合が機能していない
  • 非正規労働者の増加と役員報酬の高額化
  • 雇用流動性が低い
  • 内部留保が大好きな日本の経営者
かつて日本の美徳とされた終身雇用制による硬直化した雇用形態が賃金の上昇圧力を奪い、非正規労働の政策的増加に伴う賃金水準の抑制が追い打ちをかけた。国内消費が増加せず、企業は売上減少に悩み、コストカットの名の下、更に人件費抑制を進める。完全に負のスパイラルだ。それが失われた30年の間に日本に起こったのだ。

先日、経団連中西宏明会長が「日本の賃金水準がいつの間にか経済協力開発機構(OECD)の中で相当下位になっている」と語ったが、経団連は明らかにその事態を招いた元凶である。

賃金を下げコストをカットすることは、短期間、各企業というスコープでは有効な局所解であったが、長期間、国というスコープでは決して良い解ではなかった。そのツケはこれから若い世代が払うことになるのだ。

あわせて読みたい

「日本経済」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    昭和の頑固オヤジ!JASRACと闘い続けた小林亜星さん

    渡邉裕二

    06月23日 08:04

  2. 2

    平井大臣の発言を文春が捏造か 内閣官房が公開した音声には企業名なし

    和田政宗

    06月23日 12:48

  3. 3

    軽自動車はEV化で高価格に 「交通弱者」が増加するいま改めて考えたい軽自動車の役割

    森口将之

    06月23日 10:51

  4. 4

    「すべては首相続投のため」尾身会長の警告さえ無視する菅首相の身勝手な野心

    PRESIDENT Online

    06月23日 08:26

  5. 5

    小池百合子知事、静養へ。1,400万都民の命を預かる重責に心からの敬意を

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

    06月23日 08:23

  6. 6

    低すぎないか、日本の物価水準

    ヒロ

    06月23日 11:31

  7. 7

    ”タコ山”だって守られたい?~「TRIPP TRAPP」高裁判決から6年、いまだ見えぬ境界線。

    企業法務戦士(id:FJneo1994)

    06月23日 10:09

  8. 8

    パソコン作業は腰への負担が1.85倍。腰痛対策には“後ろ7割”の姿勢を - 酒井慎太郎

    幻冬舎plus

    06月23日 08:40

  9. 9

    「まだ気を緩めるな」マスコミや専門家はいつまで"コロナ禍"を煽り続けるのか

    PRESIDENT Online

    06月23日 15:11

  10. 10

    赤木ファイルの開示・・財務省は徹底的な再調査を行うべき

    大串博志

    06月23日 09:13

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。