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そんな段階ではないのは確かだが

「そんな段階ではない」 テレワーク要請の西村氏に反論(朝日新聞)

 もう、そういう段階ではない――。20日、テレワークへのさらなる取り組みを要請した西村康稔経済再生相に対し、経済界側が「反論」する場面があった。経済界は新型コロナウイルスワクチン接種の加速化や、迅速な経済支援策などを相次いで注文。西村氏は「私の立場からも努力をしていきたい」としつつ、重ねてテレワークへの協力を求めた。

(中略)

 テレビ会議に参加した各団体は、西村氏の要請に協力する考えを表明したものの、感染拡大防止策としてテレワークを強調する西村氏に対しては異論が噴出。名古屋商工会議所の山本亜土会頭は「もう、そういう段階で解決できるのはちょっと厳しい」と反論。「現状を打破する唯一の手段はワクチンの接種だ。これ以外に有効な手立てがないんじゃないか」と訴えた。

 むしろテレワークに関して「できない」「やれない」と宣う企業側に対してこそ「そんな段階ではない」という言葉が向けられるべきと思われるところですが、いかがなものでしょうか。企業側からすれば(今まで通りの変わらぬ出社体制で)現状を打破する唯一の手段はワクチン接種しかないのかもしれませんけれど……

 この新型コロナウィルスの感染拡大に関しては、敗戦以来の大きな社会変革の契機であるとも私は思っています。戦争に敗れたおかげで民主化が進んでその後の発展の基礎が築かれたように、コロナのおかげで立ち後れの著しかった日本の労働習慣が先進的なものに変わるのであれば、それは社会として正しい方向に進んでいると言えるでしょう。

 小池百合子の公約の一つに「満員電車0」なんてものがありました。公約なんて選挙が終われば気にされることもなくなりがちですが、これもまた「コロナのおかげで」一時的に達成されていたわけです。夢物語でしかなかった満員電車0が一時的にでも実現されたならば、それをいかに維持するかも真面目に検討されるべきと言えます。

 テレワークに関しては地域ごと、企業ごと、あるいは企業内でも組織ごとに取り組みの温度差が大きいところです。ただ自分の会社を鑑みると、いざ政府の号令で「初めてのテレワーク」を開始したら幹部社員の予想に反して支障なく業務が回るなんてこともありました。「できない」「やれない」と言い張る企業も実際にやってみたらどうなのかと思わないでもないです。

 もちろんワクチン接種も状況を改善する有力な手段ですけれど、それで全ての感染が防げるものではありません。公衆衛生の改善や、テレワークなどを駆使して過密状況を避けることも継続して必要です。しかるに、特定の要因だけを挙げて完結してしまう言論もまた常態化しているわけです。複合的な要因の結果として事象が発生しているのに、何か一つ「犯人」を見つけて、そこで思考を止めてしまう等々。

 「現状を打破する唯一の手段はワクチンの接種」という主張も然り、ワクチン接種のみでの解決を期待するのは安易ですが、しかし経済界からすれば「ワクチン接種が唯一」の解決策であってくれれば好都合なのでしょう。テレワーク「も」解決策であるならば、そこは企業側にも努力義務が生じてしまいます。それを避けるにはワクチン接種が「唯一」でなければならない、と。

 従来型の労働習慣を「続けさせたい」と願っている経営側もまた少なくないのでしょう。利益よりも社員の支配を優先する日本的経営においては、テレワークの成果を測る代わりに社員を監視するためのソフトを導入する企業もまた少なくありません。だからこそテレワークへの取り組みを求められても「そういう段階ではない」となるわけです。

 伝染病の感染拡大を抑止する面でテレワークは効果的ですが、決してそれだけではありません。企業の指定する勤務場所に拘束され、満員電車に揺られて通勤する生活から労働者を解放するのもまたテレワークです。これはコロナがなくとも働き方の未来として進めてもらいたいものと言えます。行政にはGHQにでもなったつもりで、アンシャン・レジームの担い手たる経済界と戦って欲しいところですね。

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