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  • ロイター
  • 2021年05月23日 08:05 (配信日時 05月23日 08:03)

アングル:世界全体で縮小する流動性、大規模緩和策が転機に


[ロンドン 20日 ロイター] - 世界の主要中央銀行は緩和アクセルの踏み込みを弱め始めつつあり、実体経済や市場は再び「自分の足」で立つ必要に迫られている。

そうした未来図に誰もが失望しているわけではない。クロスボーダー・キャピタルの見積もりでは昨年3月以降、主要中銀と政府は約27兆ドルと、世界全体の総生産(GDP)の3割強に相当する資金を市場に注ぎ込んできた。これに伴って世界の株価は85%上昇し、新型コロナウイルスのパンデミックで痛めつけられた景気は回復しインフレ期待も高まっている。それなのに昨年のペースで資金供給を続ければ、メリットよりも弊害が大きくなるというのが一部エコノミストの主張だ。

調達コストの安い資金は依然として潤沢で、クロスボーダーの算出によると、世界で緩和的な政策運営をしている中銀の比率は3月末時点で全体の82%もあった。ただ1月の88%からは低下している。

先月にはカナダ銀行が資産買い入れ縮小(テーパリング)に乗り出し、来年中に利上げする可能性を示唆。イングランド銀行(BOE)も今月、週間の国債買い入れ規模を減らした。米連邦準備理事会(FRB)は年内に緩和縮小を開始するかもしれない。

つまり中銀と民間金融機関、政府が市場に供給する流動性の伸びはピークアウトし、既に減速しているのだ。

ピクテ・アセット・マネジメントのシニア・マクロ・ストラテジスト、スティーブ・ドンゼ氏が試算した米国、中国、ユーロ圏、日本、英国の中銀と民間金融機関の流動性供給総額は昨年、合計GDPの28.8%まで達したものの、現在は18.5%で推移している。ドンゼ氏によると、主に比率を下げたのは中国で、流動性供給量が昨年の最高水準から半減したという。

もう1つの大きな流動性供給源は政府資金だが、これもロックダウン終了に伴って労働者や企業向けの各種支援措置は打ち切られてしまう。

JPモルガンのストラテジスト、ニコラオス・パニギルツォグロウ氏は、「過剰流動性」を測定する上でよく使われる指標は全て、昨年異常なほど緩和的だった金融環境が引き締まってきていることを示していると述べた。

同氏が最初に挙げたのは、1月以降に通貨供給量の伸びがGDPと比較して下がっており、昨年と逆方向の動きになっているという事実だ。「つまりわれわれは既に、過剰流動性が縮んでいる局面に入った可能性がある」という。

次に、世界中の投資家が保有する現金は株式・債券の投資規模と比較して「異例の低さ」にあると指摘されている。これは株式市場にとって、強気相場を維持するには市場の流動性ではなく、持続的な業績拡大といった要素に頼るしかないことを意味する。

<テーパリングの潮時か>

08年の金融危機以降、市場は中銀の供給する流動性が増えるのが当然という認識が染みついてしまった。このため13年や18年終盤に緩和縮小が試みられると、市場がパニックを起こし、政策担当者は再び潤沢な資金供給に動かざるを得なくなった。

しかし景気が力強く回復し、債券市場がとうとうインフレが再来する展開を織り込むようになった足元の状況は、これまでと違うように見える。

膨大な流動性を背景に不動産市場は活況になり過ぎているかもしれない。国際決済銀行(BIS)のデータをクロスボーダーが分析した結果、住宅価格は半年間で前年比10%余りも跳ね上がっている。

だから、このままさらに景気を刺激すれば、爆発的なインフレと景気過熱をもたらす危険があると一部エコノミストは警鐘を鳴らしている。サマーズ元米財務長官は今週、FRBが超緩和的な政策を続けることで経済と物価に「恐るべき油断」を持ち込んでいると批判した。

ピクテのドンゼ氏も、FRBは年内にテーパリングを開始すべきだとし、行き過ぎた大規模緩和の弊害が顕在化して劇的な引き締めを強いられ、それが現在の景気拡大局面を損なうのを防ぐべきだと提言している。

バンク・オブ・アメリカの試算では、FRBと欧州中央銀行(ECB)、BOE、日銀による今年の資産買い入れ規模は昨年の約9兆ドルから3兆4000億ドル前後に減少する可能性がある。それでもコロナ禍前の基準に照らせば、依然として巨額だ。またカナダ銀行を除く主要中銀は、今年も年間で見たバランスシートを大きく膨らませる公算が大きい。

スイスの資産運用会社UBPのノーマン・ビラミン最高投資責任者は、中銀政策担当者が直近の引き締めの取り組みから被った経験や、彼らが雇用創出を重視している点から考えると、今回は何か政策面で失敗するとすれば、過早かつ過剰な引き締めよりも、過剰すぎる緩和が原因になる確率が高いとの見方を示した。

(Tommy Wilkes記者、Ritvik Carvalho記者)

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