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「私小説的」アニメの最高峰『エヴァ』 なぜ庵野秀明監督は傑作を生み出せたのか -さやわか

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5月22日はアニメ監督、庵野秀明の誕生日だ。

彼の最新作である『シン・エヴァンゲリオン劇場版』は今年3月、新型コロナウイルスによる厳戒態勢の中で公開、ヒットを記録した。現在の興行収入は84億円を超えているという。

Getty Images

この作品は、庵野がアニメファンだけでなく一般層にも知られるきっかけとなった大ヒットシリーズの完結編だ。元々は1995年にテレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』として放映され、以後、彼は四半世紀ものあいだ、『エヴァ』に関わり続けてきたことになる。

庵野監督自身の葛藤や苦悩がうかがえたテレビシリーズと「旧劇」

"ロボットアニメ"を自称して始まったテレビシリーズは、最終2話でそれまでのストーリーを放り出すかのような展開を見せた。当時このアニメがセンセーションを巻き起こしたのも、この終盤の展開が人々に驚きを与えたからだ。最終話は画面も破綻し、ひたすら登場人物たちが自らの存在意義に苦しむ独白を続ける内容で、いま見ても、他に類例を見ない異形の作品だと言える。

1997年には、このテレビシリーズの最終2話をやり直し、本来あるべき結末へと導くとされた劇場用映画が公開された。しかしそれも、テレビシリーズと同様、もしくはそれ以上に内省的な内容で、監督自身のアニメ作りへの葛藤や苦悩すらうかがえるものになっていた。

そして2006年、『エヴァ』を全4作の「新劇場版」として作り直すプロジェクトが開始。当初はテレビシリーズとは一線を画する娯楽性の高いストーリーが展開された。

私小説的ですらあった『エヴァ』

BLOGOS編集部

いま振り返ってみると、「新劇場版」の娯楽的な路線は、最後まで維持されたように思える。完結編『シン・エヴァンゲリオン劇場版』は、いわばこの作品の三度目の「最終話」になるが、物語的には完膚なきまでの決着がついたのだ。今後、スピンオフや精神的な続編が企画される可能性はあるが、庵野は当初想定していた筋書きを、今回の完結編で完全に描ききったと見ていいだろう。

ただ、その完結編『シン・エヴァ』ですら、庵野の個人的な記憶や体験、クリエイターとしての思想などが、全面に展開されたものになっている。

私小説的であると言ってもいい。

結局、『エヴァ』はテレビシリーズの頃からあった、庵野のパーソナルな要素を捨てなかったのだ。

庵野の個人的な考えが前面に出た作品になったからこそ、「これは庵野個人の話じゃないか」や「(作品を見ている)俺たちには関係のない物語だ」などの批判をする人もいた。

ただ、そもそもテレビシリーズの頃から、『エヴァ』はそういう作品であり続けていたのではなかろうか。そうであるにもかかわらず、今回の完結編では、娯楽作品としても、ストーリー的にまとめきったことが素晴らしい、というか、驚嘆すべき作品だと言える。

アニメ映画と監督個人を結びつける日本の不思議さ

だが、ここで気になるのは、そもそも庵野はなぜ、そんなに私小説的に、監督個人の考えや経験を感じさせる内容を盛り込むのだろうか。アニメは、言ってみれば画面に映るすべてが虚構である。それなのに、なぜ現実のクリエイターの手触りを混ぜ込もうとするのか。

日本のアニメ映画は、監督個人と結びつけて論じられることが多い。『ドラえもん』『名探偵コナン』『ポケモン』『クレヨンしんちゃん』のように、作品名やキャラクター名が前面に出る作品も少なくないが、庵野をはじめ、宮崎駿、新海誠、そして細田守など、私たち日本人はアニメ映画について「監督が誰か」をことさら重視して語ろうとするのだ。

これは海外のアニメ映画と比較しても、特異なことだ。『トイ・ストーリー』や『アナと雪の女王』がどれだけ爆発的にヒットしても、我々日本人は監督の内面や生い立ちにまで思いを馳せることはあまりないはずだ。

かつてなら実写でも、黒澤明、小津安二郎など、監督の名前が強く意識される時代があった。しかしいまでは、日本映画の監督名は、とりわけアニメで強く意識されるようになっている。まして、商業アニメは徹底した集団制作で作品を世に送り出すジャンルなので、監督名だけがひときわ前に出るというのは、ちょっと不思議にすら思える。

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