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古畑任三郎は「100%田村正和さんです」 河野圭太監督が語る撮影秘話と感謝

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●ほとんど外景が映らない全編ニューヨークロケ

『古畑任三郎ファイナル「今、甦る死」』より=2006年1月3日放送 (C)フジテレビ

警視庁のオフィスも、捜査会議のシーンもない『古畑任三郎』は、毎話違うスタジオセットを建てるという贅沢な制作スタイル。現在に比べて予算が潤沢にあった時代だからこそだが、その様子が伝わってくるのが、鈴木保奈美がゲスト出演した第2シーズンの最終回「ニューヨークでの出来事」だ。

これは、古畑と今泉(西村まさ彦)がニューヨークに向かう夜行バスで、日本人女性、のり子・ケンドール(鈴木)と出会い、彼女が語った自身の完全犯罪の謎を解き明かしていくストーリー。ほとんどがバス車内のシーンで展開されたが、実際に全編ニューヨークで撮影されている。

バス車内は、飛行機の音が入ってくるようなスタジオにバスを入れて撮影。ニューヨークでの撮影だと分かるのは、途中で休憩に立ち寄るダイナーと、バスを降車した場面くらいで、ここも外国人エキストラをそろえれば国内でも撮影可能なシーンだが、「第1シーズンはそんなに数字(視聴率)も良くなかったんですけど、第2シーズンで人気が爆発したので、ご褒美的な感じですね。正和さんがニューヨークが大好きだったので、『ニューヨークでやりましょう!』となったんだと思います」とのことだ。

そんな河野氏が最も印象に残る回は、第1シリーズで堺正章がゲスト出演した「動く死体」。

「これは、『古畑』をやるとなって田村正和さんに石原隆さん(当時・フジテレビ編成担当)からお願いするとき、“変な刑事モノ”だけじゃ説明できないから、まずはシナリオを書いてみようということで三谷さんが作ったのが、堺さんの回だったんです。それを最初に読んだとき、めっちゃ面白かったんですよ! ふざけてるところはふざけて、締まるところは締まっているという僕が大好きな系統の話で、ものすごくいいなあと思っていたんですけど、最初の話はメインの監督(星護氏)が撮るだろうから無理かなと思って。そしたら、いろんなめぐり合わせで僕がやることになって、それはすごくうれしかったですね」

堺正章のゲスト回「動く死体」の台本を持つ河野圭太氏

■「おじいさんになった古畑も見たかった」

それから12年というロングランのシリーズになった『古畑任三郎』。06年に「ファイナル」と銘打った3作で幕を下ろしたが、河野氏はさらなる新作も密かに期待していたという。

「正和さんにとって、セリフ量が普段やられているものからすると、とてつもなく多いので、すごく負担が大きい仕事なんです。本来はしゃべらないで芝居するのが好きな役者さんだと思うので、第1シリーズが終わったときに、笑いながら『もうやんないよ(笑)』とおっしゃっていましたから。で、しばらくして頃合いを見て、またお願いするとやってくださる。そうやって第2シーズン、第3シリーズ、スペシャルとやってくださったので、『ファイナル』の後も、もしかしたらもう1回くらいできないかなと、僕はちょっとだけ思っていたんです。おじいさんになった古畑も見たかったんですけど、もうそのチャンスはなくなってしまいましたね。また元気になってやってくれると思っていたので、残念です」

河野氏らの演出に、三谷幸喜氏の脚本、本間勇輔氏の音楽、そして田村正和さんをはじめとする役者陣の演技――すべてが見事にマッチし、奇跡のような作品だった『古畑任三郎』。河野氏にとっては「この作品で一人前の演出家になれたと思っているので、いろいろ教えてもらった正和さんには感謝してもしきれないし、大好きな作品にこんなに長い間携わることができて幸せでした」という存在だ。

さらに、「毎回ゲストの方も素晴らしいじゃないですか。これだけの方々とお付き合いさせていただけたのも、本当に演出冥利に尽きるし、正和さんがいたからこそ出てくださった方もたくさんいらっしゃったと思います。本当に素晴らしい作品でした」と振り返っていた。

『古畑任三郎ファイナル「ラスト・ダンス」』より=2006年1月5日放送 (C)フジテレビ

●河野圭太
1957年生まれ、東京都出身。『古畑任三郎』『巡査・今泉慎太郎』『古畑中学生』をはじめ、『振り返れば奴がいる』『王様のレストラン』『総理と呼ばないで』『今夜、宇宙の片隅で』『さよなら、小津先生』『わが家の歴史』『オリエント急行殺人事件』といった三谷幸喜脚本ドラマを数多く演出。ほかにも、『世にも奇妙な物語』『TEAM』『白い巨塔』『フリーター、家を買う。』『マルモのおきて』(フジテレビ)、『危険なビーナス』(TBS)といったドラマ、『椿山課長の七日間』『ぼくとママの黄色い自転車』などの映画を監督。共同テレビジョン取締役の現在も、ドラマ演出を手がける。

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