記事

「出世のために残業して頑張る」そういう人ほど出世から遠ざかるワケ

2/2

「時間は無制限」と思っていると生産性は落ちる

お金の浪費は稼げば取り戻せますが、人生の浪費は取り戻せません。

皆さんも、これ以上自分の人生を浪費しないために、“時間ケチ”になり、より少ない時間で労働できるように働き方を見直してみてください。時間が無制限にあると考えると、どうしても生産性は落ちます。

日本電産の永守重信会長は以前「2020年度までに残業ゼロを目指す」と公言されていましたが、もともと永守氏は「土曜も日曜も朝も夜もない、起業家は人の何倍も働かないといけない」と考え、朝は4時に起き、1日16時間も働いていたことで有名です。

ところが、企業が成長し、海外企業を買収するようになってから、外国人の働き方が日本とはまったく違うことに気付いたのです。欧米では定時になると誰もいなくなるし、ドイツ人は1カ月ぐらい休暇を取ってしまう。それでも利益をしっかり出すので、日本も海外のような働き方に変えないと世界で勝てないと悟ったのです。

今後は残業を減らせないと評価が下がる恐れも

永守氏自身が会社にいるとみんな帰らないので、早く帰るようになったといいます。最初は奥様に「早く帰ってこられたら困る」と迷惑がられていたそうですが、今は理解してもらえたとインタビューで語っていました。

結局長い目で見ると、労働時間が長くて労働条件が悪いと社員の士気は落ち、評判も悪くなって企業は衰退していきます。

既に大企業は海外でも事業を展開している関係で、残業ゼロにするよう積極的に取り組んでいます。その波は、中小企業にも必ず来るでしょう。

その時になってから残業を減らせないとなると、評価が下がる恐れもあります。今から「残業をしない習慣」を身につけておいたほうが、ゆくゆくは自分を助けることになるのではないでしょうか。

時間に「流される」ことがないように

“時間に厳しい”ドイツでは、時間管理が国の政策にも関係しています。

育児休暇を定めた「親時間法」、介護のために労働時間を減らすことを定めた「家族介護時間法」など、法律の名前に“時間”がついているのです。これは国民には個人の時間を確保する権利があるという表れかもしれません。

ドイツでは、会社でも店でも公共施設でも、始業時間も終業時間もきっちり守ります。

閉店間際の店に入ると、露骨に嫌な顔をされることもあります。日本なら、そこで「このお客様に買ってもらったらさらに利益が出る」と考えるところですが、ドイツ人は利益よりも自分の時間のほうが大事なのかと感じる場面が多々ありました。

1994年に施行された「労働時間法」によると、1日の労働時間は8時間を超えてはならないと定められています。企業の状況によっては、1日に最大10時間まで、週に60時間まで働いてもいいということになっています。

“労基法”に違反した経営者は罰金200万円弱を負う

一般企業だけではなく、農家やベーカリーなどの生産者であっても1日8時間労働を守らなくてはなりません。ただ、雇用する側としては繁忙期などはそうも言っていられないのが実情で、8時間を超えて働くこともあります。しかし、それすらも問題視されているのです。

ドイツがそこまできっちり時間を守るのは、やはり法律で定められているからでしょう。時間のルールを守ることに関しては、ドイツは世界有数かもしれません。

これを聞く限りでは、日本でも1日8時間労働、週に40時間と決まっているので同じだと思うかもしれません。

違うのは、企業がそれに違反した場合の罰則です。

ドイツでは労働安全局が抜き打ちで検査して、企業が労働時間法に違反していたら経営者は最高1万5000ユーロ(200万円弱)の罰金を払わなくてはいけないのです。場合によっては、経営者は最高1年間の禁固刑を科されます。

一方日本でも労働基準監督署があります。労働基準法に違反した場合の罰則は罰金から懲役まであります。しかし、労働量を減らすことを考えずに、規制を強化することだけでは労働時間の効率化が図れるとは思えません。

多くの日本人は時間に流されているのではないか、と私は感じています。仕事に追われている時点で、受け身になっているのではないでしょうか。

----------
隅田 貫(すみた・かん)
メッツラー・アセットマネジメント シニアアドバイザー、日独産業協会特別顧問
1959年、京都生まれ。82年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、MUFG(旧東京銀行)に入行。3回にわたるドイツ・フランクフルト勤務を経て2005年よりドイツ地場老舗プライベートバンクであるメッツラー・グループフランクフルト本社で日系機関投資家を対象とした投資顧問業務を担当。著書に『ドイツではそんなに働かない』(KADOKAWA)ほか。
----------

(メッツラー・アセットマネジメント シニアアドバイザー、日独産業協会特別顧問 隅田 貫)

あわせて読みたい

「残業」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    逮捕されても臆することなく、取材を続けよう〜田原総一朗インタビュー

    田原総一朗

    07月28日 08:07

  2. 2

    東京3000人は五輪強行開催によるモラル崩壊の証。もう誰も自粛しない

    かさこ

    07月28日 08:46

  3. 3

    コロナ対策は菅内閣にも直結 東京の新規感染者数が5000人超えなら菅内閣はもたない

    田原総一朗

    07月28日 14:43

  4. 4

    ロッキンは中止する必要があったのか?〜7 /8の議院運営委員会で西村大臣に質疑を行いました〜

    山田太郎

    07月28日 09:58

  5. 5

    「きれいごとだけでは稼げない」週刊文春が不倫報道をやめない本当の理由

    PRESIDENT Online

    07月28日 12:30

  6. 6

    酷暑下の札幌五輪マラソン 市民の冷ややかな声も少なくない

    NEWSポストセブン

    07月27日 09:36

  7. 7

    中国、ロシア製ワクチンと立憲民主と共産党 まあ少し可哀想ではあるけど、ブレインが悪いのとセンスがないというだけ

    中村ゆきつぐ

    07月27日 08:26

  8. 8

    上司も部下も知っておきたい 「1on1」を機能させるためのコツ

    ミナベトモミ

    07月28日 12:00

  9. 9

    立憲民主党・本多平直議員は「詰腹」を切らされたのか?近代政党のガバナンスにおける危機感

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

    07月28日 09:53

  10. 10

    西村大臣の酒類販売事業者への要請撤回 首相官邸の独断に官僚からも疑問の声

    舛添要一

    07月28日 08:34

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。