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週刊誌のゴシップ報道に公益性は?「クズにはクズなりに論理や倫理がある」元FRIDAY編集長&元文春記者と考える

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■「クズはクズなりに論理や倫理もある」元『FRIDAY』加藤晴之氏



 『FRIDAY』(講談社)の編集長などを歴任したフリー編集者の加藤晴之氏は、次のように話す。

 「僕が編集部にいたのは1998年頃のことだが、当時は今よりも無法地帯だったような気がするし、ご迷惑をおかけした人には申し訳ないと思っている。“プライバシー侵害だ”と言われればその通りだっただろうし、法廷に立たされれば負けることの方が多いだろう。そして言論の自由があるから何をやってもいいんだ、ジャーナリズムなんだと正義を振りかざしたり、威張ったりする気はない。

 それでも週刊誌をやっていた人間として発言をすると、自由主義社会である以上、ゴシップの世界もあっていいのではないか。全てを“プライバシー侵害だ”と裁いていては息苦しい社会になってしまうと思う。要は程度の問題で、迷惑だという人がいれば遠慮しないといけないと思う。ご批判は後で受けるわけだし、グレーなところもあっていい。



 その意味では、報道する側とされる側の間でもっとコミュニケーションがあってもいいと思う。例えば僕が『FRIDAY』の編集長だった頃、『おぅワイや!清原和博番長日記』という名物連載があった。清原さんをパパラッチのように追いかけて撮った面白い写真に、“ワイや”で始まり、“以上、清原調でお届けしました”で終わる文章を付けたもので、本人は当初、メチャクチャ怒っていた。しかし次第に面白がってくれるようになって、“そもそもワイとは言わない、ワシだ”とか、間違いを訂正してくれることもあった。そして、最終的には本になっちゃった。

 そして、人の不倫なんてどうでもいいじゃないか、というのもその通りだと思う。しかし線引きを作ったり、ましてや法律で決めてしまえば退屈な国になるし、社会が“無菌状態”になりすぎてしまう。一方で、ウケるからとにかく載せちゃおうと野放図にやっているかといえば、そういうわけではない。記者、デスク、編集長がそれぞれ公益性・公共性を考え、表現の仕方や報じられる側とのコミュニケーションも含め、皆さんの想像以上に真面目な議論をしている。あとは受け手側がどう判断するか、ということで良いと思う。僕は自分がやっていたことの自己正当化をするつもりはないし、むしろクズみたいな人間だと思っているが、クズにはクズなりに論理や倫理があるということだ」。

■「編集長クラスは顔と自宅の住所を出しては」元ZOZO広報責任者・田端信太郎氏

 オンラインサロン『田端大学』の田端信太郎氏は「この問題の背景にあるのは、報じられる側がSNSを使って発売前に“スクープ潰し”の反論ができるようになったこと。そのカウンターパンチとして、今度は雑誌側のデジタルで発信が強くなっているというところがある」と指摘。

 その上で、「政治家や、税金で飯を食っている人が取材対象になるのはいいと思うし、上場企業の役員になるとグレーではあるが、それでも不倫している事実があるのに報じられなければ、もしかしたら仮想敵国の情報機関がそれをネタに脅すようなことも可能性としてはゼロではない。また、『食べログ』の有名レビュワーが飲食店側と癒着してるんじゃないかという疑惑を『週刊文春』が報じた時、“こういう人も文春砲を食らうんだ、有名人の範囲が広がったな”と感じたが、『食べログ』のユーザーにとっては公共性というか、サービスの機能そのものに関わる話なので、報じた意味はあっただろう」とコメント。



 さらにライブドアでは「livedoor ニュース」を統括、ZOZOでは広報担当も務め、報じる側、報じられる側の双方を経験から、「新聞社や出版社からもらった記事を拡散する立場、そして広報責任者として会社の業績や前澤友作さんの女性関係について報じられる立場、その攻める方と守る方の両方の立場から考えても法規制はあり得ない」と指摘。

 「『週刊文春』の新谷学編集長(当時)と対談させてもらったときに印象に残っているのが、“書いた相手が自殺してしまう可能性を頭の片隅に置きながら、それでも書く”という意味の言葉だった。そのくらいの“美学”というか、自分たちは間違ったことはしていないという覚悟でやっているということだろう。その意味では、有名なメディアの編集長クラスは顔と自宅の住所を出して、“何かあったら来いや”くらいのスタンスにした方がいいのではないか。また、テレビやラジオの場合、異議申し立てができる自主規制の機関があるが、雑誌にはそれがないので、読者はスポンサーの商品の不買運動をするとか、“くだらないことを書いてるんじゃないよ”とメールや電話をしまくるということをしても良いかもしれない。『週刊文春』に不倫疑惑などが報じられた山尾志桜里議員の場合、選挙で当選して国会に戻ってきた。これも、最終的に読者が判断したという一つの事例だと思う」と話していた。



 また、慶應義塾大学特別招聘教授でドワンゴ社長の夏野剛氏は「誰かと誰かが付き合っているとか、そんなの個人の自由だし、どうでも良くないかと思う。報じる必要もないだろう。ただし、これは読者の鏡になっているということ。マイナンバーについてはプライバシーを問題にする割には著名人のプライベートを知りたがり、不倫をしたとか、何か悪いことをしたとか報じられると、嫉妬混じりに喜んで見る風潮がある。結局は売れなくならない限り、そういう報道は消えないのだろう」と切り捨てた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

▶映像:伝説の編集長&敏腕記者に聞く週刊誌報道

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