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新垣結衣と星野源の結婚を機に考える 「逃げ恥」が私たちに刺さった理由

俳優で歌手の星野源さんと俳優の新垣結衣さんが19日に結婚を発表し、大きな話題になっています。

2人の組み合わせといえば、もちろん2016年に放送されたドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS系)での夫婦役です。5年が過ぎた今年、現実世界でもドラマと同じように夫婦になった訳です。早速、“逃げ恥婚”などと盛り上がっています。

価値観に大きな影響を与えた「逃げ恥」

実は私、ドラマ放送時には各話7〜9回ずつリピート視聴しながら、火曜日の“ハグの日”(逃げ恥の放送日で、ドラマ内で2人が「火曜日はハグをする日」と決めた日でもある)を毎週楽しみに待つほどの逃げ恥ファンでして。

結婚のニュースを知ってというもの、動悸、息切れ、目の痒みが止まらず、部屋中をそわそわと歩いてみたり、カーテンを無意味に開け閉めしたりと動揺しっぱなしです。手のひらは汗でビショビショに濡れ、つるつると滑るキーボードを懸命に叩きながらこの文をしたためております。

当時、逃げ恥にハマった方であれば共感してくださると思いますが、毎週のドラマを追いかけるうちに新垣結衣さんと星野源さんが本当の夫婦のように見えてきませんでしたか?私深く感情移入したばかりに「新垣結衣と星野源、本当に結婚しないかな。。してくれたらいいのに。。」と独り言を言い続け、会社スタッフから「立川さんヤバいですよ、現実と虚構の区別くらいつけてくださいよ」とたしなめられるほどでした。

普段は理屈っぽい記事を量産している私がエモーショナルな前置きを延々と書いてしまうくらい、逃げ恥は人生で最もハマったテレビドラマであり、価値観に大きな影響を与えた作品なのです。結婚で盛り上がる今こそ、5年前のドラマ「逃げ恥」について振り返るには絶好の時期かと思います。

新垣結衣さんと星野源さん=2017年10月、東京都港区(共同通信社)

ドラマが放映された2016年 米大統領選との関連性を探る

ようやく本題です。逃げ恥は私たちの結婚観、そして社会に、どのような影響を与えたのでしょうか?

まず、逃げ恥が放送された2016年とはどのような年だったのでしょうか。

代表的な出来事といえばリオ五輪・パラリンピックでの日本人選手の金メダルラッシュや、天皇陛下が退位のご意向を示されたことが思い出されます。さらに、逃げ恥が放送されていた2016年10月11日〜12月20日の間をピンポイントで見てみると、日本とも関係が深いアメリカで大きな出来事がありました。

11月8日に実施された大統領選で、白人の労働者階級を主な支持層とするドナルド・トランプ氏が勝利したのです。多くのメディアはヒラリー・クリントン氏の優勢を繰り返し報じていましたから、世界中を驚かせました。

当時の日本の報道は、大統領選を象徴するキーワードとして「社会の分断」「ダイバーシティ」「ポリティカルコレクトネス」を紹介しました。特に「政治的正しさ」などと訳される「ポリティカルコレクトネス」についてはこの選挙で初めて耳にした方も多かったようでテレビでも話題になり、広く受け入れられていったコンセプトと言えるでしょう。

非常に分かりやすい話として、11月6日〜12日(下のグラフの突出した部分)にかけてグーグルで「ポリティカルコレクトネス」が多く検索されていることがグーグルトレンドのデータからも分かります。

参考)Google トレンド「ポリティカルコレクトネス」

「逃げ恥」から考えたダイバーシティとは

様々な価値観や人生観を持つ登場人物たちを丁寧に描いた「逃げ恥」がヒットしたのは、大統領選でそうしたキーワードが注目されたのと全く同じタイミングです。このことは100%の偶然ではないように感じます。

ストーリーの中心はもちろん、星野源さん演じる津崎平匡と新垣結衣さん演じる森山みくりの夫婦です。ただ、同時に様々な価値観やバックグラウンドを持つ登場人物たちの群像劇でもあります。それらのキャラクターが置かれた立場やパートナーとの関係のあり方について向き合い悩みながらも前に進んでいく様子は、感動と勇気を与えてくれました。

私個人の解釈ですが、前述した「ダイバーシティ」「ポリティカルコレクトネス」といったコンセプトの根幹にある考え方は「自分とは違う立場や考え方の人を尊重し、思いやる」ことだと考えています。これらの言葉が海の向こうの選挙で対立の文脈で使われる一方、逃げ恥ではこれらを調和・融和という文脈で描いていたように感じるのです。

誤解の無いよう断っておくと、逃げ恥は決して「ダイバーシティ」「ポリティカルコレクトネス」がテーマの作品ではありません。我々が「無意識な思い込み」「生きていく中で社会からかけられてしまった呪い」で他者や自分自身を傷つけてしまう悲しさ、苦しさを丁寧に描き、それらを一つずつ解きほぐしていく作品です。その過程で結果的にそうした話題に触れ、逃げ恥なりの解決策を提案しているのです。

BLOGOS編集部

星野さん演じる平匡がとある言動で、会社同僚のゲイの人を傷つけてしまうシーンがあります。その後、別の同僚らがその件をそれとなく触れることで平匡が自分の間違いに気づいて反省します。これは無数にある逃げ恥の名シーンの中で、地味なエピソードに入るでしょうが、私はこれが非常に印象に残っています。

平匡が同僚を傷つけてしまった行動は、私も同じ状況では同様のことをしてしまったかもしれないからです。正直申し上げて、傷つけてしまったシーンがサラッと描かれるということもあり、その時点で「平匡、やっちまったな」とは思わなかったのです。その後に平匡が気付くのと全く同じタイミングで自分の過ちに気づき、反省しました。

「逃げ恥」の何に視聴者は感動したのか

ドラマを視聴済みの読者の方の中には、もしかしたら私に同意してくださる方もいるかもしれません。例に出したエピソードから学んだことは「自分が気づかぬうちに、他の誰かを傷つけているかもしれない」ということですが、逃げ恥には気づき・学びがあふれています。

逃げ恥の登場人物たちはこのような数々の出来事から学び、成長していきます。勝手な解釈ですが、みくりも平匡も2人の関係性の外で起きたこうした出来事によって成長していなければ、お互いを思いやって話し合いを重ねることはできず、最終話の感動的な大団円にたどり着かなかったでしょう。

平匡とみくりが衝突し話し合いをするシーンは作中でそれこそ、何度も出てきます。その中で2人は「結婚とはこうあるべき」というべき論からではなく、「私はこうしたい」といちいちゼロベースで話し合いを進めます。それは2人の浮世離れした感覚から来るものもあったでしょうが、2人が周りの人たちとの関係の中で学んだことも大きかったはずです。

「自分と相手は違う人間であること」「相手は、何か自分からは見えない事情を抱えているかもしれないこと」「相手を尊重しながら歩み寄ることの大切さ」など挙げればキリがありませんし、言葉にすると当たり前に感じることです。それらの学びが2人が傷つきながら自らの体験で得たものだと知っている視聴者は、そのプロセスを含めて感動するのです。

逃げ恥が社会現象を起こしてからというもの「結婚には決まった形が無い」という考え方が広まってきました。私は婚活の現場でそれを強く感じます。

BLOGOS編集部

「逃げ恥みたいに…」 新婚の夫婦の理想形に

結婚生活におけるお金のことや家事育児の分担、結婚後にも引き続き自分の名字を名乗ること、住む場所や仕事のスタンスなどなど。逃げ恥は私たちの結婚観にこれらの新たな視点を提示してくれました。

お客様から「逃げ恥の2人みたいに・・」と例に出されることは今でも多く、もはや定着している感じすらあります。そして私はそんな時いつも「そうですね。あの2人のように相手を思いやって話し合っていきましょうね」とお伝えしています。あの2人のように真摯に向き合って話し合いができる夫婦が増えたら素敵ですよね。

さて。契約結婚から本当の夫婦になった津崎平匡&森山みくり夫妻と、「テレビドラマでの夫婦役」という架空の設定から本当の夫婦になった2人、ドラマと現実があまりにリンクし過ぎです。さらにお2人とも2021年現在の今まさに大人気の俳優さんということで、あまりに要素てんこ盛りな超国民的ビッグカップルです。

しばらくは世間から過剰な注目が注がれることになってしまうと思いますが、星野源さんと新垣結衣さんがドラマで演じた夫婦のように、互いに向き合い話し合いながら幸せな家庭を築かれることを一ファンとして願っています。

ご結婚、本当におめでとうございます!

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