記事

「消費税の増税がなければ日本は豊かなままだった」京大教授がそう嘆くワケ

1/2

日本の財政は危機にあり、再建のためには消費税の増税が避けられないといわれている。それは本当なのか。京都大学大学院の藤井聡教授は「1997年の消費税増税がすべての間違い。失われた富は数千兆円規模になる」という。ジャーナリストの田原総一朗さんとの対談をお届けする――。(第3回/全4回)

※本稿は、田原総一朗・藤井聡『こうすれば絶対よくなる!日本経済』(アスコム)の一部を再編集したものです。

梶山官房長官は「俺は大蔵省にだまされた」と謝罪した

【田原】1997年に消費税増税があった。あの時、増税に反対した人はいなかったの?

京都大学大学院の藤井聡教授(写真提供=アスコム )
京都大学大学院の藤井聡教授(写真提供=アスコム)

【藤井】いました。橋本内閣の田中秀征(しゅうせい)経済企画庁長官は、鬼のように怒って反対したんです。経済企画庁には当時、マクロ経済がわかるエコノミスト、インテリが大勢いた。そのレクを受けていた田中・経企庁長官は「絶対やめろ」といった。ところが大蔵役人たちが橋本龍太郎さんのところに、「いや、絶対大丈夫です。増税してまったく問題ありません」とこぞって説明しにいった。

たとえば、官房長官だった梶山静六さんは当時を振り返って「大蔵省の説明を鵜呑みにした私たち政治家が(中略)財政再建に優先的に取り組むことを決断した」と語っています。

で、実際に増税したら経済がメチャクチャになった。それがわかってから、梶山さんは田中経済企画庁長官のところに行って、「俺は大蔵省にだまされた。この前はすまなかった。(消費税増税の確認をした)閣議のとき、あんたがいったとおりだった」と謝罪したという記録も残っています。

つまり、弱小官庁の経済企画庁エコノミストがダメだと口をそろえても、官庁の中の官庁、いちばん格上の役所の大蔵官僚が大丈夫だと請け合った。それでみんな「大蔵省のほうが正しいのだろう」と思って、“騙された”んです。それで増税した。

ところが、日本経済は1年でボロボロになった。1997年の消費税増税は日本の命運を分けました。太平洋戦争の命運が、ミッドウェー海戦の敗北で一気に尽きていったようなものだったんです。

消費税5%から日本国民の“貧困化”が始まった

【藤井】1997年の消費税増税によって日本がダメになったことは、GDP成長率、家計消費、賃金などあらゆる尺度が実証的に示しています。

政府の資金供給量が急激に減って、実質賃金も激しく下落しました。つまり国民が“貧困化”してしまったんです。世帯所得が減ったこと、サラリーマン・サラリーウーマンの給与が減ったことを示すグラフをご覧ください(図表1、2)。

出典=田原総一朗・藤井聡『こうすれば絶対よくなる!日本経済』(アスコム)より
出典=田原総一朗・藤井聡『こうすれば絶対よくなる!日本経済』(アスコム)

出典=田原総一朗・藤井聡『こうすれば絶対よくなる!日本経済』(アスコム)
出典=田原総一朗・藤井聡『こうすれば絶対よくなる!日本経済』(アスコム)

【田原】日本人の受け取り額は、絵に描いたように減り続けている。

【藤井】こうなることは、実証的のみならず理論的にも明白です。バブルが崩壊して成長が急速に鈍化した不況のとき増税すると、経済はさらに悪化してデフレーション、つまり経済規模の縮小が始まってしまう。

世の中でおカネがグルグル回って生産や消費をしているとき、貨幣循環のあらゆる局面でおカネを取ってしまうのが消費税。医療で体内にたまってしまった血・体液・うみなどを外に出すために入れる管や袋をドレーンといいますが、あれと同じです。あらゆる血管にドレーンをさして血を抜き続けていれば、そりゃ血も循環しなくなるでしょう。体力もどんどん弱くなっていく。

世帯所得は消費税増税の1997年から一本調子で下がっています。給与所得は消費税率を5%、8%、10%と上げるたびに、ガクガクと下がっています。

だから、デフレ脱却前には絶対に増税してはダメで大至急、消費税増税の凍結、つまり「消費税0%」を実現すべきだ、と申し上げています。

財政を悪化させた真犯人は「消費税増税」

【田原】貧困化や格差の拡大を招いたのは、新自由主義をやった小泉純一郎・竹中平蔵コンビだという人が多いけど、これも違うね。小泉内閣は2001(平成13)年4月から2006(平成18)年9月までです。小泉時代は、むしろ下げかかったものの傾きを抑えているじゃないか。

ジャーナリストの田原総一朗さん(写真提供=アスコム)
ジャーナリストの田原総一朗さん(写真提供=アスコム)

【藤井】まあ、それはたまたまアメリカが好景気で外需が伸びたからです。それはさておき、支えようとしていたので残念でなりませんが、実質賃金は第二次安倍晋三内閣のもとで激しく凋落しています。実質賃金を短期間でこれだけ低下させた内閣は、戦後においては安倍内閣以外にない。実質賃金が7%も減ってしまっています。

【田原】「貧すれば鈍する」というけれども、カネがなくなってくると、経済以外のものがダメになっていく。どうですか?

【藤井】おっしゃるとおりです。GDPが大きいのは、みんな所得が多く貧困が少ないということですから、国民に余裕が生まれ、芸術や文化もさらに発展していく。

あとで話が出ると思いますが、格段に強い外交力も発揮できる。研究開発投資も旺盛で、科学技術力も、もっと高まる。リニア新幹線も通っているし、都市開発も防災対策も進んでいる。ノーベル賞をもっとガンガン取れる国になっている。

【藤井】つまり、GDPが順調に成長していけば、日本はいまよりもはるかに経済大国、文化大国、生活大国になっていたはずです。ところが、現実は逆になった。1997年の消費税の増税が、そうしてしまった。みんながお金持ちになれば、税収も増えて、政府の財政もいまよりはるかにラクになったはずです。

あわせて読みたい

「消費増税」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    平井大臣の発言を文春が捏造か 内閣官房が公開した音声には企業名なし

    和田政宗

    06月23日 12:48

  2. 2

    ウガンダ選手団2人目の陽性者の持つ意味

    大串博志

    06月24日 08:11

  3. 3

    昭和の頑固オヤジ!JASRACと闘い続けた小林亜星さん

    渡邉裕二

    06月23日 08:04

  4. 4

    菅内閣が「無観客五輪開催」を絶対に避けたい理由

    田原総一朗

    06月23日 16:02

  5. 5

    ワクチン不足で職域接種の新規受付を一時停止へ「可能配送量の上限に」 河野大臣

    ABEMA TIMES

    06月23日 21:39

  6. 6

    安倍政権下でおかしくなった霞が関 自民党の良心は失われてしまったのか

    早川忠孝

    06月24日 08:39

  7. 7

    菅内閣支持率最低に 短命政権の可能性強まる

    NEXT MEDIA "Japan In-depth"

    06月23日 17:13

  8. 8

    軽自動車はEV化で高価格に 「交通弱者」が増加するいま改めて考えたい軽自動車の役割

    森口将之

    06月23日 10:51

  9. 9

    低すぎないか、日本の物価水準

    ヒロ

    06月23日 11:31

  10. 10

    「すべては首相続投のため」尾身会長の警告さえ無視する菅首相の身勝手な野心

    PRESIDENT Online

    06月23日 08:26

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。