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ウォルトが生きるロス・ディズニーランド〜日米ディズニーランド比較(1)

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ロス・ディズニーランドのランドマークは眠れる森の美女の城だ

現在世界にはロス(正確にはアナハイム)、フロリダ(オーランド)、東京(浦安)、パリ、香港の五カ所にディズニーランドがある。その中で最も成功を収めているのがロスの元祖ディズニーランド(1955年開園、以下DL)と東京ディズニーランド(1983年開園、以下TDL)だ。全てのディズニーランドはウォルト・ディズニーが建設したロスのDLを下敷きにしている。ただし、パーク自体はDLをそのままソックリ移植したというわけではない。また、年を経るにつれ、パークが設置された社会の文化にローカライズされるかたちで少しずつ変化していく。

さて、今回は、この最も成功した二つのパークを比較し、そこからロス・ディズニーランドの魅力について、そして日米の文化格差について考えてみたい。この二つ、同じようでいて、実はかなり異なっている。

TDLは過去を振り返らない

開園以来、30年のあいだにTDLは大きな変容を遂げてきた。そしてその変容はきわめて日本的なそれであったと言える。少し話は逸れるが、かつてNHK番組「ブラタモリ」で秋葉原を取り上げたとき、タモリは秋葉原について実に秀逸な表現をしている。それは、

「ここ(秋葉原)は過去を振り返らない街だ」

つまり、戦後、青果市場から電気パーツ屋街に代わり、次いで電気屋街となり、パソコンパーツの集結地となり、そしてオタクの殿堂となった。その際、秋葉原はこういった過去の歴史を振り返ることなく、どんどんスクラップ&ビルドを繰り返し、過去の片鱗を残さない。つまり秋葉原は何でも収容し、入れ替え可能な箱のようなものと表現したのだ。まあ、当初の計画・企画されたものがその後維持されず、どんどん変容していってしまうのは日本独特というより広くアジア全般に通用する文化とも言えるのだろうけれど。その極致としてタモリは秋葉原を「振り返らない街」と表現したのだった。

TDLはこの「振り返りの無さ」について、しっかり日本文化的なのだ。オープン当初こそ本家のウォルト・ディズニー・プロダクション(現ディズニー・カンパニー)の指導の下に、その世界が忠実に再現されていたのだけれど(いちばんの雛形としたのはフロリダにあるウォルト・ディズニー・ワールドのマジック・キングダムで、ロスにはシンデレラ城はない)、それが年月を重ねるにつれてどんどんと変容していったのだ。だが、それは言い換えればウォルトの考えたディズニー世界からの乖離ということでもあった。

今、TDLを見てみるとテーマ性は破壊され、ファミリーエンターテインメントというコンセプトもあいまいになり、経営方針のS.C.S.E(Safty、courtesy、show、efficency=安全、礼儀、ショー、効率)もかなりのレベルで守られなくなった。その代わり、多くのリピーターが訪れるようになり、このリピーターたちの多様化するディズニーへの志向に対応するようになって、ディズニー世界のごった煮みたいな脈絡の無さを露呈するようになっている(僕は、これを「ディズニーランドのドンキホーテ化」と呼んでいる)。つまり、ここは名前こそディズニーランド、つまり「ウォルトのランド」だが、実際のところディズニーオタクのためのランドに変貌を遂げたのだ。いいかえれば、ここにウォルトはもういない。そして、ゲスト=デズオタのニーズに応えてディズニー世界の限りない増殖を繰り返し、スクラップ&ビルドが展開されている。つまりここは日本文化の様式にすっかり染まった「オタクのランド」という別のパークなのだ。

その典型が、たとえば東京ディズニーシー(TDS)にあるDuffyというキャラクターで、雛形こそアメリカのテディベアの変形としてアメリカで販売されているDisney Bearなのだが、こちらにローカライズされるにあたっては、このキャラクターのいわれ=物語まが変更され、TDSにふさわしいものになっている(夜キャッスル前で仲間を待つミッキーの下に出現した→航海に出るミッキーのためにミニーが作った)。ちなみに、このキャラクター、純粋なぬいぐるみで顔や肉斑などに隠れミッキーが付け加えられていること以外、ほとんどディズニーアニメキャラクター的な文法を踏まえていない。しかし、今やこのキャラクターがディズニーでミッキーに次ぐ人気を誇り、挙げ句の果てにはDuffyとしてロスのカリフォルニア・アドベンチャーに進出するに至っている。つまり日本で生まれたディズニーオタク文化の本家への殴り込みだ(もっともディズニーランドにはBuild・A・Bearという、やっぱり熊のキャラクターが存在し、Duffyと同様様々な着せ替えセットが売られていたりする)。

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California Adventure内にあるDuffyのコーナー。本家に逆輸入?

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Downtown DisneyにあるBuild・A・Bear。Duffyと同様、ディズニーキャラクターに着せ替え可能だ。

で、僕みたいなウォルト派の人間からすると、どうも最近の東京ディズニーリゾートはあまり足を運ぶ気になれなくなっている。前述したようにそこで見られるのはウォルトの世界=ディズニーランドではなく秋葉原のようなオタクランドだからだ。オタクたちが「情報収集」という目的のために殺気だった目をしてパークを早足で歩いているようにすら思えるのだ。だから、ロスの本家を訪れるとホッとしてしまう。そう、ここはウォルトが生きてる場所、ウォルトに会える場所なのだ。

ということで、次回からロス・ディズニーランドの魅力、とりわけウォルトの精神がどのようにこのテーマパークに生き続けているかについて語ってみたい。ちなみにその生き残り策は、TDLとは逆の「過去=ウォルトの精神を徹底的に継承する」ということになる。(続く)

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