記事

「異常な高値から急下落」インフレ懸念が高まる米株式市場をどう読むべきか

1/2

“バブル”の兆候が出始めている

足許で、米国やわが国をはじめ世界的に株式市場が不安定な展開になっている。特に、これまで世界の主要株式市場を牽引してきた米国市場の下落が目立った。GAFAMやテスラなど、相対的に成長への期待が高い先端企業(グロース銘柄)が中心のナスダック総合指数の下げが大きかった。

米国ワシントンD.C.にある連邦準備制度理事会(FRB)本部=2021年4月16日米国ワシントンD.C.にある連邦準備制度理事会(FRB)本部=2021年4月16日 - CNP/時事通信フォト

これまで圧倒的な上昇相場を形成してきた、先端のGAFA銘柄はかなり高値にあった。多くの投資家が、そろそろ利益確定の売りに動くタイミングだったといえるだろう。そこに消費者物価の上昇懸念が重なった影響は大きい。4月の米消費者物価指数は前年同月比で4.2%上昇し、事前予想(3.6%程度)を大きく上回った。インフレ懸念の高まりから先行き警戒感を強める投資家は多く、売りが売りを呼ぶ格好で下落幅を広げる展開になった。

今後、米国の株式市場はグロース銘柄を中心に不安定に推移した後、徐々に値を戻す可能性はあるだろう。今回の株価下落は、本格的な調整には至らない可能性がある。現在、連邦準備理事会(FRB)は低金利環境の維持を重視しているため、カネ余りの状況に大きな変化はないとみられ、それが株価の下支え役を果たすことが予想される。

ただ、株価がいつまでも上昇し続けることはない。特に、パウエルFRB議長が株式市場に“フロス(小さな泡)”が出始めているとの認識を示すなど、米国の株式市場には“バブル”の兆候が出始めている。やや長めの目線で考えると、どこかのタイミングで米国の株式市場全体が本格的な調整局面を迎える可能性はあるとみた方がよさそうだ。

テスラの株価収益率は500倍にも

5月に入ってナスダック総合指数をはじめ米国の株式市場が下落した要因の一つは、なんといっても株価があまりに上昇し過ぎたことだ。例えば、2020年5月上旬、電機自動車(EV)メーカーのテスラの株価は150ドル程度だった。その後、2021年1月下旬テスラの株価は800ドル超まで上昇した。2月以降の株価は幾分か下落したが、4月下旬の株価は700ドル台と1年前の株価水準を大きく上回る水準にあった。

足許、テスラのPER(株価収益率、5月13日時点の米ウォールストリートジャーナル公表の実績値ベース)は500倍を超え、過去の平均的な米国株式市場のPER(14~17倍)を大きく上回っている。つまり、株価は割高だ。2020年のテスラの納車(新車販売)台数は前年比36%増の約50万台であり、トヨタ自動車単体の販売台数(約870万台)との差は大きい。

株価上昇のかなりの部分がカネ余りと成長への過度な期待に支えられている。世界的なEVシフトという成長テーマに加えて、テスラが技術革新を目指していることは重要だが、現在のテスラの株価を正当化することはできない。ワクチン接種の進展が米国経済の自律回復の勢いを支える中で在来分野の企業の株価が持ち直した結果、そうした見方を持つ投資家は増えた。

利益確定に動き出した

さらに4月27日と28日に行われた連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、パウエル議長が「米国の株式市場にはフロス(小さな泡)が現れている」と述べた。その意味は、低金利環境が続くとの楽観を根底に多くの投資家が先端企業などの成長への期待を強めた結果、米国株式市場に“バブル”の兆候が表れていることだ。

自動車メーカーのテスラ ※写真はイメージです - iStock.com/DKart

その結果、株価が割高だと考える個人投資家(“ロビンフッダー”)や機関投資家が追加的に増え、株価が大きく上昇したテスラなどに利食いの売りを仕掛けた。それはGAFAMやビデオ会議システムを提供するZOOMなど、多くのIT先端企業の株価下落に当てはまる。“最強のインデックス”と呼ばれる「ナスダック100指数」に連動するETFを売りに回るヘッジファンドも増えるなど、割高感が高まる中で利益確定に動く投資家は多い。

財政出動で高まるインフレ懸念

それに加えて、米国経済におけるインフレ懸念が高まり、金利が上昇するとの警戒感が増したことも、米国の株価下落の要因だ。物価上昇の要因として重要なのは、経済対策とパイプラインの操業停止だ。

3月、米国経済が自律的に持ち直す中で、バイデン政権はコロナ禍での個人消費などを支えるために1.9兆ドル(約200兆円)の経済対策(追加財政出動)を成立させた。その結果、米国経済が"高圧経済"(経済全体で需要が増加し、景気の過熱感が高まること)に向かい、物価が勢いよく上昇し始めるとの見方が増えた。

それに加えて、5月7日にはサイバー攻撃によってコロニアル・パイプラインの操業が停止し、ガソリン価格の上昇懸念が高まった。車社会の米国において、ガソリン価格の上昇は消費者物価をはじめ経済全体での物価上昇に無視できない影響を与える。

それらを反映して、米国の債券市場では、“ブレークイーブン・インフレ率(市場参加者が予想する物価上昇率を示す指標)”が上昇した。5月10日にはブレークイーブン・インフレ率が5年物で2.7%台に上昇し、リーマンショック後の最高値を付けた。10年のブレークイーブン・インフレ率も2.5%台に上昇した。

あわせて読みたい

「アメリカ経済」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    ひろゆきで大流行!YouTube切り抜き動画の台頭と実際にやってみて分かったこと

    放送作家の徹夜は2日まで

    06月18日 08:06

  2. 2

    ワクチン供与と、国際的な情報戦と韓国外交の茶番劇

    佐藤正久

    06月18日 08:21

  3. 3

    元プロ野球選手・上原浩治氏の容姿に言及 コラム記事掲載のJ-CASTが本人に謝罪

    BLOGOS しらべる部

    06月17日 13:12

  4. 4

    山尾志桜里議員引退へ。悪い意味での「職業政治家」ばかりの永田町の景色は変わるのか

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

    06月18日 10:10

  5. 5

    ほとんどの人が「延長は仕方ない」イギリスでロックダウン解除延期、なぜ感染再拡大?

    ABEMA TIMES

    06月17日 22:31

  6. 6

    菅首相のG7「はじめてのおつかい」状態を笑えない - ダースレイダー

    幻冬舎plus

    06月17日 08:40

  7. 7

    緊急事態宣言の解除後も続く飲食店への制限 ワクチン拡大を待つしかないのか

    中村ゆきつぐ

    06月18日 08:40

  8. 8

    盛れば盛るだけ信用低下! 印象操作に走る菅総理の愚

    メディアゴン

    06月18日 09:06

  9. 9

    知っているようで知らない、チョコレートの真実 - 多賀一晃 (生活家電.com主宰)

    WEDGE Infinity

    06月17日 14:56

  10. 10

    低調な通常国会、閉幕へ。生産性を上げるためには野党第一党の交代が必要不可欠

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

    06月17日 10:00

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。