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  • 2021年05月17日 09:24 (配信日時 05月17日 06:17)

史上初の白人人口減と人種的多様化進む米国社会 - 斎藤 彰 (ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長)

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10年ごとに行われる米国勢調査局の最新データで、建国以来、アメリカの主役を演じてきた白人人口の減少と、逆にマイノリティ人口の増加による人種的多様化が一段と進んでいることが明確となった。政党政治への影響も注目される。

(Drazen Zigic/gettyimages)

国勢調査局は去る4月26日、2000年から2019年の10年間の全米人口が、前回比7.4%増の3億3100万人になったと正式発表した。人口増は依然続いているものの、増加率そのものは、1900年代以来、最低となり、「日本、欧州並みの高齢化社会の前兆」として警戒の声も上がっている。

州別に見ると、ヒスパニック、アジア系人口が多いテキサス、フロリダ、ノースカロライナなどの人口増が目立つ一方、ノースダコタ、ワイオミング、ミシガンなど白人の多い各州での増加率の低下が目立っており、この傾向は2030年、2040年代にはさらに顕著となるとみられる。 

この点で注目されるのが、国勢調査局が今秋にも、人口統計に続いて発表を予定している人種別、世代別、都市部/農村部の人口分布などの変化ぶりを追跡した動態トレンドだが、すでに権威あるブルッキングズ研究所は去る1月、国勢調査局の推定データを下に統計専門家による興味ある分析データを発表している。

その主なハイライトは、以下のようなものだ:

  1. 世界でも特異な「移動社会」と言われてきたアメリカだが、全世帯に占める年間平均の人口移動率は9.3%で、1947年以来、最低を記録した。1940年代から60年代には毎年、全世帯の20%、1990年代から15~16%、2000年代に入って13~14%と低下の一途をたどり、ついにひとケタとなった。しかも、世代別ではミレニアル世代(1981年以降に生まれ、2000年以降に成人を迎えた世代)の低下が目立っており、アメリカが「定住社会」に近付きつつあることを示している。

  2. 高齢者と若年層間の人口増加率ギャップが顕著になりつつある。55歳以上の人口の増加率は2010-2020年の10年間に27%増となったのに対し、55歳以下人口はわずか1.3%しか増加しなかった。55歳以上の人口のうち、65-74歳のベビーブーマー世代の人口増加率は50%にも達している。

  3. 次世代を担う18歳以下の人口増加率は、北東部、中西部、内陸部諸州においてすでにマイナスに転じる一方、逆に首都ワシントンDCほかフロリダ、テキサスなど19州においてはさらに増加が目立っている。

  4. 人種別に見ると、白人人口は2010-2019年の10年間で1万6612人実質減少した。国勢調査局が1790年に調査を開始して以来、白人人口が減少に転じたのは史上初めてとなる。白人人口は1970-80年に1120万人増だったが、2000-2010年には280万人増と縮小し始めていた。しかし、現状より減少したことが確認されたのは今回が初めてだ。減少の要因としては、高齢化、出生率低下、結婚年齢の上昇などが挙げられている。

  5. 過去10年間で全米人口は1950万人増となったが、白人がマイナスだったのとは対照的に、ヒスパニック系人口が1000万人増、アジア系が430万人増、黒人320万人増などとなっており、今後将来にかけて、これらマイノリティ人口がアメリカ社会を支える「主たる成長エンジン」となることが明白になりつつある。

今回の国勢調査結果は、アメリカの将来を占う上でいくつかのヒントを提供している。

「高齢化社会」への仲間入り

その一つは、これまで他の先進諸国とは対照的に「若さ」が際立った国であり、そのことが社会全体に躍動性を吹き込み、比類なき革新と爆発的エネルギーによって世界最強国へと押し上げてきた。しかし、今や80歳以上の人口が2歳以下の幼少人口を上回ったことに象徴されるように、日本や欧州諸国のような「高齢化社会」への仲間入りが始まった点だ。

人口増加には最低でも「2.1」の出生率が必要とされているが、昨年段階で「1.73」にまで低下した。日本(1.4)、ドイツ(1.5)、カナダ(1.5)、ベルギー(1.6)、英国(1.6)などより多少上回っているものの、高齢化が深刻化しつつあるといわれる中国(1.7)に肩を並べつつある。

しかも、建国以来、アメリカ社会の主役を担ってきた白人の出生率はすでに「1.6」以下になってきており、かつてのような「若い白人国」のイメージは遠のきつつある。

白人若年層が初めてマイノリティに

この点で興味深いのが、15歳以下の人種別人口トレンドだ。国勢調査局推定によると、2018年時点で白人若年層はすでに過半数を割り、49.9%となった。代わってヒスパニック系が60.4%を占め、白人若年層がアメリカ社会で史上初めて、マイノリティになり下がった。今後、世代交代が進むにつれて、マイノリティ化した白人年齢層は一段と拡大することが明白となり、早ければ、2050年代にも白人全体がアメリカにおいてマイノリティ人種へと変質していくことを裏付けている。

さらに今回の国勢調査では、あらゆる人種の中で、アジア系人口が最も早いスピードで増加していることも明らかになった。

Pew Research Centerの分析によると、2000-2019年の10年間にアジア系は81%の伸びを示し、1050万人から一挙に倍増に近い1890万人に増加した。増加率ではヒスパニック(70%)、黒人(20%)をはるかに上回っており、2060年には2000年時点の3倍以上の3580万人にも達すると予想されている。

しかし、かつて黒人人口の増加とともに、黒人に対する偏見や差別がアメリカ社会で広まった経緯もあるだけに、アジア系人口の顕著な増加とともに同様の人種的差別やヘイトクライムが一段とエスカレートしていくことが懸念される。

こうしたアメリカ社会における人口動態の変化がもたらす今後の政治動向も見逃せない。

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