記事

9人家族の私たちが学校に頼らず「ホームスクール」を始めた理由

1/2
「フリースペース えん」で工作をする生駒家の子どもたち

 生駒知里さんは、ホームスクールで子育てをされているお母さんの一人です。お子さんの人数は、なんと7人。なぜ生駒家では、ホームスクールを始めたのかをうかがってきました。(聞き手・石井志昂/編集・小山まゆみ)

* * *

 一時は子どもたち全員が家に居ましたが、今は完全に家に居るのは14歳の長男だけ。10歳と8歳の子は週4日は神奈川県川崎市にある「フリースペースえん」(以下「えん」)に通っていますし、12歳の子も週に半分は「えん」へ。4歳と3歳の子は保育園に通っています。わが家の学齢期の子どもたちはみな、おもには学校外の学びの場で育っています。

 ホームスクールを始めたきっかけは、長男の不登校です。小学校1年生の秋に、 「学校って、やめられないの?」。そう言われたのが始まりでした。そのときはさらりと流して終わったのですが、1週間~2週間すると「自分に合わないところだとわかったから、やめる」と言われ、これはたいへんだと思いました。

 長男はやりたいと思ったら、自分で納得するまでやり通すタイプ。親からのかんたんな説得では納得しないだろうと予測できたからです。学校のどういうところが嫌なのかを尋ねると、彼の言い分はこうでした。

 「自分の学びたいことを、自分の学びたい量、自分の学びたいときにやりたい。強制されるのは好みじゃないんだ」。

 好みじゃない……ね。返す言葉が見つかりませんでした(笑)。学校は、自分とちがう同級生から社会性を学ぶ場所だよと諭す私に対して、「弟と僕とはちがう性格だよね。学校へ行かなくても兄弟からだって学べるよ」。これが彼の主張です。

 私としても反論のしようがなかったのですが、ほかに通える場も近くになく、学校以外で行く場所がありません。けれども夫は「とにかく、学校は行くものだ」と言い、休ませることに反対しました。無理に学校へ連れて行くうちに、長男は9月なのに「寒くてたまらない」と言うようになりました。

限界に達したわが子の叫び

 これはまずい。そう思っていたある日、長男は学校から帰ってくると包丁を出してこう言いました。

「俺を刺してくれ」。

 本気だったと思います。長男はもともと性格が激しく、癇癪を起こす子でした。以前にも、イライラが募ると鉛筆をボキボキ折ったり、2階から飛び降りようとしたことがあり、状況は明らかに悪化しています。これ以上、学校に連れて行くと、命に関わると思いました。

 ちょうどそのころ、私は近所に住む親どうしで未就学児の自主保育を立ち上げたばかりでした。そこでまわりの人にも相談し、学校へ行けない日は長男も下の子たちといっしょに自主保育の場へ。学校には担任の先生に会いに、週に何回か放課後に足を運ぶという生活が始まりました。

 その当時、わが家には自主保育で知り合い、なかよくしているお宅がありました。お母さんは元幼稚園の先生で、家にも親子でよく遊びに来てくれて、子育てのグチも聞いてもらっていました。ある日のこと、長男が台所にある塩を見て、いつもの調子で「塩ってなんでキラキラしているんだろう?」と言いました。

 こういうことはわが家で1日に何回もあることで、私としては「まーた、どうしてどうしてが始まった」と思ってましたが、幼稚園の先生だったお母さんは、こう言ったのです。

「すごいね、 塩を見ただけで、キラキラするって考えられるんだ!」。

 私にとってこのリアクションはものすごく新鮮でした。「どうして、そう思えるの」、と。彼女は、いつも楽しそうに子育てをしていました。一方の私は、若干個性の強い長男の子育てを「なんでこんなにたいへんなんだろう」と思ってばかり。その一方で「たいへんだ」「育てにくい」と思っていること自体もすごくいやでした。

 私みたいに、子育てがあまり上手にできないお母さんに育てられているなんて「うちの子たちはかわいそうだな」、そんな罪悪感のようなものもずっと感じていました。

 でも、彼女のリアクションを見て、ヒントを得ました。そっか、自分の目線をいったん横に置いて、子どもと同じ目線に意識的に立って見るんだ。そうすると、だんだん子育てが楽しくなってきました。

理科の先生から顕微鏡の使い方を教えてもらっているようす

 長男はその後、石にハマりました。あるとき、庭の石を割ってみたら、石の中がシマシマになっていたことが興味の始まりです。「シマシマなのはなぜ?」というところから、私も長男といっしょに探究をスタート。「どうして」「なんで」がいっぱいだったので、石の写真を撮っては科学博物館にメールを送り、学芸員さんからお返事をいただいたこともありました。

 放課後に学校へ行ったとき、長男は先生に石の標本を見せてもらいました。石が好きだとわかると、自主保育のお母さん仲間から桜島が噴火したときの石をおみやげにもらったり、まわりのみんなから石をもらうようになったんです。その石を集めて長男は標本をつくりました。あるときはいっしょに地層を見に行ったりもしました。

あわせて読みたい

「不登校」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    格安スマホ業界にまで波及した価格破壊

    自由人

    06月19日 08:14

  2. 2

    “酒類の提供19時まで”の制限に議員から厳しい声「居酒屋やバーにとっては休業要請」

    BLOGOS しらべる部

    06月18日 19:42

  3. 3

    スシロー、くら寿司、はま寿司の海外戦略 "日本食ブーム"の海外市場が秘める可能性

    三輪大輔

    06月18日 10:38

  4. 4

    山尾議員 突然の政界引退に疑問続出「説明責任果たしてない」

    女性自身

    06月18日 22:10

  5. 5

    山尾志桜里議員引退へ。悪い意味での「職業政治家」ばかりの永田町の景色は変わるのか

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

    06月18日 10:10

  6. 6

    ワクチン供与と、国際的な情報戦と韓国外交の茶番劇

    佐藤正久

    06月18日 08:21

  7. 7

    なぜクマが大量出没するようになったのか? 「エサ不足」ではない本当の理由

    文春オンライン

    06月18日 14:37

  8. 8

    尾身会長の五輪発言「飲食店」からも意見あり!! 政府復興委員として初会合に出席

    わたなべ美樹

    06月18日 12:55

  9. 9

    私が日本の経済財政再建のヒントはルワンダの過去にあると思う理由

    宇佐美典也

    06月18日 12:00

  10. 10

    ひろゆきで大流行!YouTube切り抜き動画の台頭と実際にやってみて分かったこと

    放送作家の徹夜は2日まで

    06月18日 08:06

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。