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  • 2021年05月16日 11:25 (配信日時 05月16日 11:25)

秋吉 健のArcaic Singularity:捨てる神あれば拾う神あり。オークション&フリマサービス・アプリの隆盛や諸問題からコロナ禍を生きる知恵を探る【コラム】



オークション、フリマサービス・アプリについて考えてみた!

突然ですが、筆者は4月に新しいパソコン(PC)を購入しました。買い替えの際に意外と面倒なのが古いPCの処分方法です。基本的には家電量販店などで引き取ってもらうか自治体の処分場へ持ち込んで処分しますが、場合によっては安くないリサイクル料金を取られる上、古いPCでもまだまだ使える部品が数多く残っており、捨てるには少々勿体無い場合もあります。

特に筆者が処分しようとした古いPCはゲーミングPCであったため、かなり性能の良いグラフィックボード(グラボ)を搭載していました。そこで「グラボくらいは中古品として売れるのでは?」と考え、オンラインオークションサービス「ヤフオク!」で価格を調べてみたところ、同型・同クラスの製品は7~8万円とかなりの高値で取引されている様子。これは売るしかないとすぐに出品したところ、さっそく7万円以上の価格が付きました。

今や、オークションやフリーマーケット(以下、フリマ)のオンラインサービス(Webサイト・アプリ)の利用は隆盛の絶頂にあります。みなさんの中にも一度はヤフオク!や「メルカリ」などのサービスを利用したことがある人は多いのではないでしょうか。中古品をリサイクルして利用することは環境負荷やコスト的にもメリットが多く、利用用途をしっかりと考えれば確実に便利で有用なシステムです。

しかしながら、加熱するオークション&フリマ需要は「転売」などの問題も引き起こしています。オークション&フリマサービスの利用に際して気をつけるべき点や心がけることとは何でしょうか。

感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する連載コラム「Arcaic Singularity」。今回はオークションおよびフリマサービス・アプリのメリットとデメリット、そして注意点などを解説します。

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半導体不足で新PCの価格が高くて泣いたが、その高騰分は元が取れそうだ



■隆盛極まるオークション&フリマ

はじめに、消費者によるオークションサイトおよびフリマサービス・アプリの利用動向について見ていきます。

MMD研究所が3~4月に行った「2021年フリマサービス・アプリに関する利用実態調査」によると、物を売る際に利用する場所として「フリマサービス・アプリ」が「リサイクルショップ(実店舗)」の次に多く、それに「買取専門店(実店舗)」、「オークションサイト」が続きます。

利用比率に男女差が若干見られるのが面白い点で、リサイクルショップや買取専門店ではあまり大きな差がないものの、フリマサービス・アプリでは女性の利用が10%以上多く、オークションサイトの利用は男性が15%以上も多くなっています。

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フリマサービス・アプリの台頭が目覚ましい



オークションサイトとフリマサービス・アプリの大きな違いは売買成立までの時間です。

「出品→売買成立→発送→入金」といった流れはあまり変わりませんが、オークションサイトでは複数人で入札する時間が必要です(即決価格設定もあるがその価格での売買成立は例外的)。

一方、フリマサービス・アプリは基本的に一般的な商品売買と同じ「早いもの勝ち」です。そのため購入希望者がいれば出品後に即売買が成立することもあります。売買成立後に値下げ交渉を行うなどの独特な文化もありますが、それでもオークションサイトよりは時間がかからない印象です。

あまりジェンダー的なことを言うと問題が出そうなご時世ではありますが、上記の利用サービスの性差を見る限り、商品の売買そのものをゲーム的に楽しむ男性と、手っ取り早く現金化したい合理的な女性、といったイメージも浮かんできます。

また、現在利用されているオークションサイトやフリマサービス・アプリを見てみると、「メルカリ」と「ヤフオク!」が圧倒的に多いことが分かります。

オンライン売買の歴史を振り返ると、ヤフオク!が1999年から続く老舗であるため、昔から男性のPC利用が多かったことなどから、男性はオークションサイトに馴染みが深く使い慣れている、というのもあるかもしれません(メルカリは2013年開始)。

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ここでもメルカリの存在感と急成長ぶりが伺える



■失われた20年とリサイクル文化

オークションサイトやフリマサービス・アプリがこれだけ活況に湧く背景には、あまり喜ばしくない内容も含め、いくつかの要因が考えられます。

1つは長引く不況と世間に漂うその空気感です。ヤフオク!が登場した1999年はバブル崩壊後の不況どん底であり、就職氷河期やリストラの嵐が吹き荒れていた時期です。

当然ながらそれまで贅沢三昧だった人々の生活は窮地に陥り、使い捨て文化などと揶揄された昭和末期の風潮は鳴りを潜め、中古製品を上手にやりくりするリサイクルに注目が集まるようになったのです。

その後、日本は2013年に「アベノミクス」によって株価が上昇に転じるまで、バブル崩壊から実に20年もの大不況を続けることとなります。実際にはその後も不況を脱した感覚は庶民的にあまり感じられず、低く雲が垂れ込めたような経済動向が続きます。

そのような世間を包む不況感がヤフオク!を広く認知させ、メルカリの急成長を後押ししたのは間違いありません。スマートフォン(スマホ)がブームになる中、メルカリがいち早く手軽なスマホアプリとしてフリマサービスを展開できたのも勝因でしょう。

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現在のメルカリはアウトレットショッピングサイト的なイメージすらある



バブル崩壊による生活困窮からのリサイクル活用は負の側面ですが、それによって「物を大切に使う」という文化が根付き、その延長として環境問題への意識が高まったことや、結果的に環境負荷の低い社会を作り出したことは正の側面だとも言い換えられます。

昭和40~50年代やその後のバブル絶頂までの日本人のマナーの悪さや環境への配慮の無さは、現代の若者がもし直接見たら軽蔑するレベルでしょう。前述の「使い捨て文化」はその最たるものでしたが、そこから現在の「道具を大事に使う」、「使えるものは極力リサイクルする」という文化へと転換できたことは奇跡に近いとすら筆者は思っています。

オークションやフリーマケット市場とリサイクル市場の相性は抜群で、イコールで繋げられる部分すらあります。環境保全やリサイクル・リユースの重要性がますます増している昨今だけに、これらのサービスと市場は今後もさらに成長していくものと推察されます。

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ヤフオク!アプリの100万件を軽く超える評価の数と評価の高さにニーズと普及の度合いを感じる



■オークションとフリマに這い寄る「転売」の闇

オークションサイトやフリマサービス・アプリの隆盛は、同時に面倒な問題も引き起こしました。中古ではない、買ってきた製品をそのまま出品する「転売」です。

フリマサービス・アプリが登場する以前にも転売はあったものの、ごく一部のブランド製品などに限定されており、大きな社会問題化することはありませんでした。

しかしスマホとアプリの普及は、それまで一部のPCユーザーが利用する程度だったオークションサイトやフリマサービスをさらに広範な一般人へと開くこととなり、それをビジネスチャンスと捉えた業者がこぞって流行の製品や限定商品を買い占め、高値で転売するようになったのです。

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市場が広がればその金の匂いに誘われて悪質な業者も集まり始める



転売が問題化しているジャンルとしては、例えば家庭用ゲーム機などがあります。

数年前には任天堂の「Nintendo Switch」が転売対象として買い占められ、長く入手困難な時期が続きました。また最近ではソニー・インタラクティブエンタテインメントの「PlayStation 5」が同様に転売の的となり社会問題化しました。

フリマサービス・アプリなどで出品されているこれらの家庭用ゲーム機のすべてが転売とは言い切れませんが、「買った値段よりも高く売れる」という事実は、長引く不況やコロナ禍によって定職を得られなかった人々や、副業的に小遣い稼ぎをしたい人々にとっては十分すぎるほど甘い誘惑でした。

転売という行為自体は違法ではないことも状況を拡大させた要因の1つです。人々からどんなに「転売する人のせいで正規価格で買えない!」と批判されようと、転売を行う人々としては「買えないのが悪い。欲しければこの値段で買ってくれ」というのが現在の端的な状況です。

もはや法的に規制するか、そもそも商品を販売する側が販売方法で何らかの対策を行わなければいけない段階まで来ていると感じます。例として挙げたPlayStation 5などは、あまりにも正規価格で店頭購入できない期間が長引いてしまった結果、ユーザーから「買えないならもういいかな」と見放され始めています。

家庭用ゲーム機にとって、ローンチ時のご祝儀ムードによる購入は非常に大きな役割があります。スタートダッシュに失敗したゲームハードはなかなか巻き返せないのが業界の常でもあり、その点でPlayStation 5は窮地に立たされているのです。

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PlayStation 5のメルカリ出品状況。転売する人が悪いのか、それともそこで購入する人が悪いのか



前述のMMD研究所による調査データには、転売についてのアンケートデータもあります。

「フリマサービス・アプリで物を購入する際の転売品への意識」という調査項目では、実に21.3%もの人が「転売品でもほしければ購入する」と答えており、さらに35.8%の人は「転売品でもほしければ購入を検討する」と答えています。

合計すれば過半数を超える人々が転売品でも購入するか、購入したいと考えている点こそ、転売業者などが付け入る隙となっている可能性があります。

需要があれば供給があるのは市場原理であり、法に抵触しない限り正当性を歪めることはできませんが、しかしながらその状況が市場としての健全性や企業の成長などに悪影響をもたらすようでは問題がないとは言えません。

繰り返しとなりますが、オークションサイトやフリマサービス・アプリの健全性のためにも、何かしらの法的規制が求められる段階であると強く感じるところです。

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転売の是非についてユーザー間で議論となり、そこで争いが生まれるのも不毛すぎる



■コロナ禍を生き残る術(すべ)として

日本には元々、道具を大事にリサイクルして使うという文化がありました。質屋や古物商の存在は元より、安土桃山時代には日本各地で日本版フリーマーケットと呼ぶべき「楽市・楽座」文化が開花しました。東京都世田谷区では、現在も「ボロ市」の名で大々的なフリーマーケットイベントが毎年2回開催されています(コロナ禍により現在は中止を余儀なくされている)。

個人単位での中古品の売買を容易にしたネットオークションやフリマサービスは、昭和の使い捨て文化で私たちが道具とともに捨ててしまった「物を大切にする」という心と文化を思い出させてくれただけではなく、環境問題へ関心を寄せるきっかけともなりました。

転売などの問題は残っているものの、こういった便利な仕組みを敢えて利用しない手はありません。筆者の場合、世界的な半導体不足とマイニング需要によって高騰してしまったPC代金の差額を、オークションによって取り戻せるのです。ピンチはチャンスであり、他にも思いがけない「お宝」が自宅に眠っているかもしれません。

最後に再びMMD研究所の調査データになりますが、コロナ禍以降、フリマサービス・アプリの利用頻度が増えた、もしくはやや増えたと回答した人は50%近くもいました。仕事が減り収入が激減した人も少なくないでしょう。そういった厳しい時代だからこそ、オークションサイトやフリマサービス・アプリは上手に活用しなければいけないとも感じるのです。

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耐える時代だからこそ、人々は生き残る方法を真剣に考え始めている



みなさんも、もし自宅に「まだ使えそうだし捨てるにはもったいないな」、「誰かが使ってくれるならそのほうがいいな」と思えるものが自宅にあるなら、ぜひオークションサイトやフリマサービス・アプリを活用してみて下さい。

その商品を喜んでくれたり、その商品で助けられる人がそこにいるのなら、それは立派な互助社会の始まりと言えるでしょう。

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捨てる神あれば拾う神あり。あなたはどちらの神様にもなれる



記事執筆:秋吉 健


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