- 2021年05月15日 15:51
有名私立中学への受験合格後に不登校、山田ルイ53世に起きたこと
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お笑い芸人・山田ルイ53世さんも「長期休み明けの不登校」だったそうです。山田さんに不登校のきっかけや、過去の記憶から解放されていった経緯をうかがいました。
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――山田ルイ53世さんは、いつから不登校だったのでしょうか?
本格的に不登校が始まったのは中2の夏休み明けだったと思います。トリガーになったのは通学中にうんこを漏らすという悲しい事件(笑)。と言っても夏休み中は、何もなかったようにいつもどおりにすごしていたので、親には少々気の毒なことをしたなと。なんせ「急に」ですから(笑)。「学校へ行こうとしない息子の姿」を親が目にしたのは、その夏休みが明けたタイミング。そこが初めてだったと思います。
――学校へ行きたくない理由を、どう説明されていましたか?
一応、「夏休みの宿題をやっていないから」と説明してましたね。実際やってなかったですし。今日から2学期だという朝、「どうしよう……」と気持ちは焦るものの、ベットから出られず。
そのうち父が2階の僕の部屋へやって来て、「早く起きないと学校間に合わないぞ!」と。しばらく「う~ん……」とかなんとかモゴモゴ言ってはぐらかしていましたが、最終的に、「行かへん」と絞り出すように伝えました。親はショックだったと思います。
それ以前は運動も勉強も優秀な子で、テストの成績も学年で10番以内。まるでカフカの小説『変身』のように、ある朝、人間だったわが子が芋虫になった、そんな感覚だったかもしれません。僕自身も、そんなふうに感じていましたし。
がんばりすぎが、疲れはてた原因
――なぜ夏休みの宿題ができなかったのでしょうか?
中学受験以来、部活も勉強もちょっとがんばりすぎて、疲れ切っていたのが一番の原因かなと思います。あと、これはひきこもり始めて以降の話になりますが、僕が「ルーティン地獄」と呼んでいた、強迫神経症のような儀式の数々に悩まされていたんですね。
たとえば、勉強をする前には机の上のノートの角をすべて揃えなければならない、とか。ノートを揃えたら今度は本棚。ぴしっと横一列に本を並べなければならない。
部屋の掃除も毎回、窓拭きまでやってましたから、ほぼ大掃除と同じです。部屋が片付いたら、今度は自分の掃除。粘着テープがついたコロコロのやつで全身をきれいにする。そうしないまま勉強をしても意味がない、とにかく、きちんとしないと「何もできない」っていう気持ちに強固に支配されていた。
最終的に、定規を使って文字を書くようになってたときは、「終わったな……」と思いましたね。算数や国語のノートが、脅迫文みたいになってたんで(笑)。全部カクカクの字で「筆跡隠したいんかい!」っていう。なんとか勉強まで漕ぎつけても、シャープペンの芯がポキッと折れて飛んでいったらもうダメ。それが気になってほかのことが手につかない。折れた芯が見つかるまで勉強は中断です。
数々の儀式、心もヘトヘトに
こういうルーティンが20個から30個ぐらいありました。プロ野球選手はバッターボックスに入る前のルーティンワークを大事にするそうですが、僕の場合は、ルーティンが多すぎてバッターボックスにたどり着けない。ヘトヘトになってしまう。今ふり返ると、そういう厄介なことの「芽」が、中2の夏休みにポツポツ現れ始めていたのかもしれません。
――強迫症状で苦しまれたのだと思うのですが、それでも親は気がつかなかったのでしょうか?
ひきこもり始めはまだそこまで顕著じゃなかったですし、たぶんまったく気づいていなかったと思います。こっちも表面上は優等生を装っていたというか、そのへん、僕完璧なので(笑)。親に、いちいち言わないし、どう説明してよいのかもわからない。向こうも勉強はできたので安心していたんだと思います。
僕は小学校6年生の夏から中学受験の勉強を始めて、当時は、「関西の御三家」なんて呼ばれることもあった六甲学院中学校に合格しました。準備期間を考えると、けっこうすごいことだったらしいです。その半年ほどのあいだだけ、親に頼んで塾に通わしてもらった。
あとにも先にも塾通いはそのときだけ。しかも、僕含めて生徒2人のこじんまりした塾で、中学受験対策なんてやったことがない。たぶん月謝が安かったから親もそこにしたんだと思います(笑)。正直、ほとんど独学だったですね。親も合格するとは思ってなかったんでしょう。
僕が合格したとき、先生が浮かれて、「君も山田くんになれる」というチラシを町中に撒いたことがあって(笑)。そんなこともあって、僕は妙な優越感を抱くことになりました。自分では「神童感」と呼んでいましたが、これがまたやっかいで、以後何年ものあいだ、その優越感のせいで道を誤ることになるわけです(笑)。
いずれにしても、中学生活はしんどかった。なんだかんだで通学に2時間かかってたし、運動も勉強もがんばっていましたが、ぷつんと糸が切れてしまったというか。そこに「うんこ漏らし」事件が発生し、夏休みの宿題にも手をつけず。「優秀な山田くん」としては受けいれ難いことが次々と。不登校の始まりはそんなところです。

『ヒキコモリ漂流記 完全版』
角川文庫/748円(税込)



