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小選挙区制の弊害を最大限に示した総選挙

〔以下の論攷は、東京土建の機関紙『けんせつ』第2052号、2013年1月1日付、に掲載されたものです。〕



 総選挙の結果は自民党圧勝・民主党崩壊というものだった。それは政権交代への期待を裏切った民主党に対する懲罰であり、嘘と裏切りに対する国民の怒りがもたらしたものである。民主党のオウン・ゴールであり、野田首相による自民党へのクリスマス・プレゼントだったといえよう。

自民虚構の「大勝利」 「第三極」乱立で漁夫の利

 このような自民党の圧勝は積極的な支持によるものではなく、支持の拡大によってもたらされたものでもなかった。それは、政党の実力が示される比例代表区での得票数1662万票が政権を失った09年総選挙の1881万票より減っているという事実に示されている。議席も前回の55から57に2議席増えただけであった。

 小選挙区で自民党は300議席の79%にあたる237議席を獲得したが、得票率は43%にすぎない。まさに4割台の得票率で約8割の議席をかすめ取ったのだ。1票でも上回った相対多数の候補者が当選してしまう小選挙区制のカラクリに助けられた結果であり、「膨らまし粉」が入った虚構の「大勝利」だといえる。

また、戦後最低の59.32%となった投票率の低さも、このような虚構を生み出した重要な要因であった。有権者の一部は民主党に失望し、政治への諦めを強めて投票意欲を失い、他の一部は政党の多さと政策の交錯に選択を迷ったものと思われる。その多くは、前回の選挙で民主党圧勝をアシストした人たちだったにちがいない。

さらに、「第三極」の乱立によって自民党は漁夫の利を得た。自民・民主・「第三極」(維新・みんな・未来)の「三つどもえ」の対決になって自民党が当選した168小選挙区のうち、109選挙区では民主党候補と「第三極」候補の得票の合計が自民党候補を上まわっていたという(『毎日新聞』12月18日付)。

かくされた争点 選挙制度の改革が必要

 選挙は代表を選ぶためにおこなわれる。こんなに民意と代表との乖離が大きくなれば、もはや選挙とは言えない。選挙の度にオセロ・ゲームのように勝敗がひっくり返り、政治は極めて不安定になっている。小選挙区制の弊害はきわまった。このようなベラボーな制度で選挙をやっているのが大間違いなのだ。

 民自公3党は消費増税への言い訳として「身を切る改革」を主張し、選挙直前に小選挙区の「0増5減」とともに、比例区定数の75議席削減で合意している。小選挙区制の比率をさらに高めようというのでは逆さまではないか。小選挙区制をなくす選挙制度の抜本的改革こそが、今、求められている。

 自民と公明の議席は325議席となって衆院の3分の2を超えた。参院で否決された法案の再可決が可能な議席数であり、衆院で憲法を変える発議ができる勢力を得たことになる。つまり、改憲に向けての「第一の砦」が突破されたわけであり、来夏の参院選は「第二の砦」を守るための重要な闘いになるだろう。

 今回の総選挙は、消費増税を決めた後の最初の国政選挙であり、本来、その可否を問うものであった。しかし、消費増税を決めた民自公3党は口をぬぐったまま、争点隠しの選挙となった。原発問題も選挙の大きな争点であったが、自民党を含めて原発の維持・推進を正面から問うことはなかった。野田首相はTPP(環太平洋経済連携協定)への参加を掲げて選挙を行うつもりだったが、党内の反対で断念した。

 消費増税を隠し、原発推進とTPP参加を曖昧にせざるを得なかったのは、これらの政策を正面から打ち出して世論の反発を受けることを恐れたからだ。そのような状況を生み出したのは、消費増税反対、脱原発、反TPPに向けての民衆運動の盛り上がりだった。

 憲法問題でも、このような形での国民的運動を盛り上げていくことが必要であろう。そうすれば、改憲を打ち出しにくくなり、参院選での改憲勢力の増大を抑え、ひいては9条改憲の国民投票で否決する力を培うことに繋がるにちがいない。

進歩的・革新的勢力の総結集を 都知事選の教訓いかして ストップ「右」への暴走

 自公政権の発足で、安倍晋三自民党総裁が首相に復帰した。この首相は右にしかハンドルを切れない。当面、参院選に向けて安全運転に徹するとの観測もあるが、安倍総裁を支持した極右勢力が黙ってそれを見守っているだろうか。

 国会には、日本維新の会という自民党よりも右に位置する新勢力が登場した。第2党の民主党よりわずか3議席少ないだけのこの党に引き寄せられ、右翼タカ派政策の実施に向けて暴走を始める可能性もある。

 このような右翼偏向を是正するためには、左にも切れるハンドルが必要だ。暴走を許さないブレーキも不可欠であろう。その役割を果たす政党や団体の役割はますます重大にならざるを得ない。一致できる課題での共闘を追求し、進歩的・革新的勢力を結集する民衆運動の役割はこれまで以上に大きくなっている。

 都知事選挙では、宇都宮健児という革新統一候補の擁立を実現した。また、日本未来の党、共産党、社民党や地域政党「東京・生活者ネットワーク」、政治団体「緑の風」など、脱原発を訴える勢力の共同も可能になった。

 残念な結果に終わったものの、このような統一と共同の経験を無駄にしてはならない。憲法擁護、脱原発、消費増税阻止、反TPP、オスプレイ飛行反対などの国民的課題に基づく運動の発展に、このような経験と教訓を生かしていくことが今後の課題であろう。

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