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2020年のマンション市場と今後の動向-今マンションは買うべきなのか - 渡邊 布味子

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1―はじめに

2020年のマンション市場では、コロナ禍により販売戸数が大きく減少した。

一方で、現在のマンション価格は高値水準にある。マンションを買いたい人は、今買うべきなのだろうか。

2―住宅市場と需要者の購入動機

そもそも、新築マンションの供給量は需要者の購入動機に少なからず影響を受ける。しかし、住宅の購入動機は、価格や税制の変化などの経済的理由とは必ずしも結びつかない。

この点、住宅金融支援機構が2013年6月に行った「住宅を取得した動機」についてのアンケートが参考になる。当時の消費税は5%であり、翌年に8%へ、翌々年に10%へと税率を引き上げる法案が可決されていた。住宅購入を検討する人々は、建物の購入に必要な費用が消費増税分だけ増加することを容易に想像できたはずであり、また、金利も低かったので、「買い時」や「金利が安い」といった経済的理由が重視されてもおかしくはない。

しかし、実際は、「結婚を機に」「子供や家族のため」といったライフステージや、「もっと質の良い住宅に住みたい」「もっと広い部屋に住みたい」といった生活・環境の向上が動機であるとの回答が多かった。いずれも価格や税制の変化等には左右されにくいものであり、住宅市場では、常にこうした経済的理由以外の需要が一定程度見込めるといえるだろう。

3―コロナ禍の購入動機への影響

また、最近、巣ごもり需要やテレワークの影響などで、今の住まいの広さや設備に不満を持つ人が増加している。リクルート住まいカンパニーによる今の住宅への不満についてのアンケートでは、「仕事専用スペースが欲しくなった」との意見が28%と最も多く、次いで「通信環境の良い家に住みたくなった」との意見が27%と多かった。

少なくとも、コロナ収束までは、在宅勤務を導入する企業が一定数あり、今の住宅に対する不満を増加させ、生活・環境の向上のため、住み替えを検討し始める人が増加する可能性がある。

一方で、SMBC日興証券が行った大企業マネジメントへのヒアリング調査(調査期間2020/10/26~12/2)では、現在と比べたコロナ収束後の在宅勤務の頻度について「方針は未定」と答えた企業が43%となった。コロナ後の勤務状況に関する全体的な方向性はまだ不透明であり、現時点で、郊外の広い住宅や地方へ移住する、といった思い切った行動をとる人は少ないであろう。

また、仮に、週の半分以上の出社を求められるとすれば、通勤利便性はある程度重視する必要がある。コロナ収束後も、都市部の通勤利便性の高い住宅は、引き続き相対的に高い競争力を保つと思われる

4―現在のマンション供給戸数の動向

一方で、マンションの供給量は減少している。新築マンションと中古マンションの取引戸数は、2020年以降のコロナ禍で、いずれも前年比で大きく減少した。

なお、新築マンションについては、発売サイドが発売初月の売行きを見て発売戸数を調整し、高い価格を維持している。売行きの好不調は、初月契約率70%がラインと言われている。月次の初月契約率は2016年以降に70%を下回る月が増え、2018年11月には54%、2019年10月には43%にまで落ち込むととともに、発売戸数は大幅に減少した。しかし、2020年は、コロナ禍で供給量が減ったこと、4-5月の緊急事態宣言で購入を先送りした層が2020年後半に購入したと見られることなどから、初月契約率が一時的に70%を回復した月も出てきた[図表1]。

新築マンション

供給量の調整の動きは続くだろうが、発売戸数は、徐々に増えてくる可能性がある。

ただし、2020年の新築マンション供給戸数は約2.7万戸(前年比で▲16%)と少ない。不動産経済研究所の予測によると、2021年の新築マンションの供給戸数は3.2万戸(前年比+18%)と、2019年と同程度であり、コロナ禍前の状況まで回復する見込みであるが、大幅な増加ではない[図表2]。

また、中古マンションの場合はすでに居住者がおり、その人が売却するには、別の住宅に住み替える必要があるため、売却は容易ではない。従って、価格が多少上がって、新築マンションの供給量が減ったとしても、中古マンションの供給量が大きく増加することはないだろう[図表2]。

マンション取引戸数

マンション需要は今後も引き続き強いと見られ、マンション市場の需要超過は当面続くと予想される。また、新築マンション用地の取得価格の高さから、リーマン・ショック前のように、手ごろな価格のマンションが供給される可能性も低い。マンション価格は、今後も上昇傾向が続くであろう。

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