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ディズニー、カリフォルニアアドベンチャーの混乱(下)

なんでリトル・マーメイドなの?

ロス、カリフォルニア・ディズニーリゾートのひとつ、カリフォルニア・アドベンチャーのテーマ性崩壊について考えている。前回はこのパークが「ピクサー化」していったことについて展開した。

まあ、ピクサーがカリフォルニアの企業であると言うことを考えればギリギリつじつまがあわないこともない。しかし、ピクサーランド化という方向として見た場合でも、ちょっとおかしなものが存在する。

そのもっとも顕著な、そしてヒドい例がParadise Pierに2010年に新設された”The Little Mermaid: Ariel's Undersea Adventure”だ。これは、やっぱりディズニーアトラクション定番形式のリトルマーメイドの物語をライドに乗って見て回るものなのだけれど、はっきり言ってカリフォルニアともピクサーとも何ら関連がない。強いていえば、すぐ手前がParadise Bayで水際であることくらいしか”いわれ”がない(もっともここには以前からリトルマーメイドにちなんだ施設はいくつかあった。これも水際という理由だろう)。だが、このアトラクションの大問題は、これが”Golden Dreams”というアトラクションに取って代わったことだ。こちらは、カリフォルニアの歴史を映画で綴るシアターで、どうやってカリフォルニアが成立したのか、そしてどのようにして移民がカリフォルニア入り込んできたのか、更にカリフォルニアで活躍した人はどんな人たちだったのかということをウーピー・ゴールドバーグがカリフォルニアの精に扮して説明するというゴージャスなアトラクションだった(詳細については本ブログhttp://blogs.yahoo.co.jp/mediakatsuya/archive/2006/04/14を参照)。つまり、かつてここにあったのは、カリフォルニア・アドベンチャーというテーマパークのコンセプトを具現したようなアトラクションだったのだけれど、これを廃してリトルマーメイドの世界になってしまったのだ。このリプレイスは、まさにテーマパークとしてのコンセプトの崩壊を象徴している。ようするにこのパークがカリフォルニアに関するものであることを「投げてしまった」のである(もっとも、完全に”お勉強モード”のアトラクションでもあった)。

テーマ性を崩壊させる二つのパーク

ちなみにテーマ性崩壊を進行させているディズニーパークはもう一つある。それは東京ディズニーリゾート(東京ディズニーランド+東京ディズニーシー)だ。ただし、テーマの崩壊の仕方はちょっと違う。その「ちょっとの違い」が、一方はかろうじてテーマパークを維持させているが、もう一方は完全崩壊に向かうという状況に進行している。前者がカリフォルニア・アドベンチャー、そして後者が東京ディズニーリゾート(TDR)だ。つまり二つの「壊れっぷり」には質的な違いがある。

拡散:ドンキホーテ的ごった煮化を進行させるTDR

東京ディズニーランド(TDL)は83年の開園以降、最初の二十数年はディズニーのテーマパークとしてその物語性をしっかり維持してきたが、これが20世紀に入り東京ディズニーシー(TDS)などを加えてTDRとなった頃からおかしくなってくる。テーマ性を無視したレストランやアトラクションが次々と建設されるようになったのだ。アドベンチャーランドにラーメン屋ができたり(テーマ性の矛盾)、あちこちに自動販売機が置かれたり(ファミリーエンターテインメントのコンセプト逸脱)。アトラクションも同様で、TDSでは「クラッシュのタートルトーク」や「トゥーンタウン・マニア」といったちょっと関係の無いアトラクションがアメリカの港をテーマとした「アメリカン・ウォーターフロント」に設置されたりしている。

では、二つのテーマパークの崩壊は質的にどう異なっているのだろうか?それはTDRが「テーマ性それ自体の崩壊」であるのに対してカリフォルニア・アドベンチャーは「テーマ性の移行」となっている点だ。

TDRのテーマの崩壊のプロセスは日本の電化製品の開発方法に似ている。たとえばガラケーの「全部盛り」みたいに、ニーズに合わせてどんどん新しいものを付け加えていき、だんだんと製品のコンセプトやイメージがわけがわからなくなるというパターン。だから、最近はTDRに出かけても、もう何が何だかわからない「ごった煮」的風景が広がっている(ちなみにゲストの方も完全にごった煮。ファミリー、家族、ツーショット、女子会、そしてオタクなお一人様)。いうならば「ドンキホーテ化」が進行しており、そこにもはや送り手側受け手側双方にテーマ性は見えない。これはディズニーに対するゲストのメディアリテラシーが上がりすぎ、ゲストがオタク化してディズニーに対する嗜好の多様化・細分化を働かせ、それにTDR側が対応した結果、「全部盛り」みたいになってしまったと僕は考えている。

ねじれ:「カリフォルニア」から「ピクサー」へのテーマ移行

一方、カリフォルニア・アドベンチャーの方は、明確にカリフォルニア→ピクサーというテーマの移行に向けてパークが変化している。だから、一部を除くとそのイメージがわからなくなるということがあまりない。まあ、それがよいことなのかどうかはともかくとして。今回(2012年12月)現地を訪れてみて感じたのは、ゲストが増えたこともあり(とにかくゲストはRadiator Springsに向かう。Radiator Spring’s Racerに乗るためだ)、以前のようなのんびりとした情緒はちょっと無くなったかな?といった印象を受けた(まあクリスマスシーズンなので、客の混み具合は多少差し引かなければならないが)。とはいうものの、パークのリノベーションについては常にディズニー側がイニシアチブを握っており、それゆえテーマが霞むということにはなっていない。いいかえればTDRとカリフォルニア・アドベンチャーの違いは、「拡散した」か「ねじれた」かにあると言っていいだろう。

カリフォルニア・アドベンチャーのゆくえ

じゃあ、これからカリフォルニア・アドベンチャーはどこへ向かうのだろう?おそらくこれからもピクサー色を前面に打ち出すような展開になっていくのではないだろうか。ただし、ピクサーでもディズニー色の強いものについてはディズニーランドにその使用を譲るかたちで(事実、”Finding Nemo Submarine Voyage”はディズニーランドの方に建設された。これは、以前ここに”Submarine Voyage”という潜水艦アトラクションがあった”いわれ”に基づく。グリーティングのアトラクション”Merida and Friends”(メリダとおそろしの森)はファンタジーランド、スモールワールドの前にある。これは「ファンタジーランド=プリンセスがいる場所」という括りだろう)。

[画像をブログで見る]
Finding Nemo Submarine Voyageはピクサー作品がテーマでありながらディズニーランド側に設置されているのは”いわれ”に基づく。

こういった二つのパークにおけるテーマ性の崩壊。実は、これこそがアメリカ文化と日本文化の違いに基づくのではないだろうか?日本は狭い土地にギッシリと人が密集し、その真ん中にTDRがあるのでリピーターが増え、ゲストはどんどんディズニー・リテラシーを上昇させ、オタクとなってTDRに様々な要求を突きつけるようになった結果、こういったドンキホーテ的なテーマ性の崩壊を生んだ。一方、アメリカのそれはディズニーランドに収まらないものをディズニー側が放り込む場所としてカリフォルニア・アドベンチャーを位置づけるようになった。アメリカは広い。だからリピーターがそんなにいるわけじゃあない。だったら、ディズニー側としては営業面を考えれば、あくまでハリウッドを介して提供するディズニー世界の再生産を行っていけばいい。テーマ性のねじれは、こういったディズニーアニメのビジネス上の需要に基づいて発生していく。

ということは、カリフォルニア・アドベンチャーはねじれたといってもディズニー世界を踏襲し続けているという点では結局テーマパークであることを維持しているということになるんだろう。だから、僕は、この崩壊したように見えるパークにもTDRとは違ったウォルトらしさの片鱗を見て取ることができた。やっぱり、ここはディズニーランド=ウォルトのランドなのだ。

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