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「沈黙の外交」―ミャンマー問題―

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ミャンマー問題について、「『ミャンマー国民和解日本政府代表の笹川』は何故ミャンマー国軍を批判しないのか」と、にわかミャンマー専門家やSNS上で批判を受けている。私は人を批判する人より批判される人になりたいと努力してきたので、誤りのある発言も多くあるが反論はしない。正直のところ痛痒も感じていない。スカンジナビア・ニッポン・ササカワ財団の初代理事長でスウェーデンの名外交官といわれたグンナー・ヤリング氏はかつて国連特使として中東和平に尽力された。ヤング氏が困難な問題解決には「沈黙の外交」が必要だと述べられていたことを思い出している。

太平洋戦争(正式には大東亜戦争)中の昭和20年3月10日、当時6歳だった私は、アメリカ軍による東京空襲の中、高熱で寝込んでいた母の手を引き、雨のように降り注ぐ焼夷弾で大火災が発生し、熱風が吹き荒れ、逃げまどう町内の人々のほとんどが焼死する中、奇跡的に生き残った。多くの死者の中から町内の人を探し出し、名札を付けた記憶が、今もはっきりと脳裏に焼き付いている。約3時間の爆撃で10万8000人が命を失い、何十万戸もの家屋が焼失し、まさに生き地獄を体験した。

そんな体験もあり、今回の事態が発生した2月1日以降も人命尊重に向け、懸命の説得工作を重ねた。にもかかわらず極めて残念な事態に発展したミャンマーの現状は、痛恨の極みであり、悶々とした日々を過ごしている。

ならば何故、非難声明を出さないかと人々は私を批判する。確かに私はミャンマー国民和解日本政府代表として、今回の事態発生前は約20の少数民族武装勢力とミャンマー政府、ミャンマー国軍との停戦和平交渉の仲裁役として奔走していた。相互信頼の醸成に向け130回を超える訪問を重ね、主にタイに在住する少数民族武装勢力説得のため0泊3日、すなわち深夜に成田を出発して現地で夕方6時まで活動し、早朝に成田に着き、そのまま日本財団事務所へ直行する生活を三週続けたこともある。

幸い10グループとの停戦が実現し、残り10グループの和解に向けた話し合いも続けていた。ミャンマーでは少数民族武装グループが約75年間もの間、ミャンマー政府および国軍と戦ってきた。世界各地に数多くの紛争が存在するが、これほど長きにわたり戦いが続いている事例は、ミャンマー以外に寡聞(かぶん)にして知らない。そこに今回の事態が発生した。

民間人である私がミャンマー国民和解日本政府代表を拝命したのは、長年にわたるミャンマーでの人道活動が評価された結果である。この役職に任期はない。約135の民族が存在するミャンマーは、日本で考えるほど単純な国家ではない。少数民族武装勢力は合従連衡が激しく、仏教の僧侶の発言力は強いが、一方で少数民族のカレンやカチンはキリスト教が多い。またイスラム教の人々も存在する。

私の立場はそれぞれの指導者に寄り添い、意見を聞いて話合いの場を作り、なによりも関係者から信頼を勝ち得ることが大切である。面子を重んじるミャンマーにおいて外国人である私の発言はことのほか注目されているだけに、言葉には細心の注意が必要と心している。アウンサン将軍が夢見たミャンマー統一連邦国家実現のために犬馬の労をいとわず、引き続き活動し、人生最後のお役に立ちたいと決意している。

それだけに、如何なる批判、中傷を浴びようとも、何とか問題解決への道筋はないかと日々、苦慮し、問題解決の任を負った者として、覚悟をもって任務を全うするため、あえて「沈黙の外交」を堅持する考えでいる。スーチー女史より預かった父アウンサン将軍の日本刀の手入れは順調に進んでいる。いつか女史に直接、返還する日が来ることを信じて・・・。

―――――――◇―――――――◇―――――――

ミャンマー問題に関しては、新聞、通信、雑誌、テレビなど多数のメディアから取材申し込みを受けましたが、一切、お断りしてきました。大変申し訳なく、お詫び申し上げます。現地は日々、激しく動いております。今、しばらく猶予を賜りたく、よろしくお願い致します。併せて関係記事など以下3点を参考までに掲載します。

*******************

※資料1 茂木外務大臣談話
 2021年4月27日付

我が国は、4月24日に開催されたASEANリーダーズ・ミーティングにおいてミャンマー情勢に関して議論が行われ、その成果として「5つのコンセンサス」が発表されたことを、事態の改善に向けた第一歩として歓迎するとともに、ASEANの事態打開のための努力を高く評価します。

特に、ミャンマーにおいて暴力が即時に停止されるべきこと、全ての関係者間の建設的な対話が開始されるべきことについて議長声明に盛り込まれたことは、前向きな一歩です。その上で、対話の開始のためには被拘束者の速やかな解放が重要な土台となることを強調します。
我が国はこれまで、累次の外相会談・電話会談等を通じて、こうした考え方をASEAN各国に伝達してきました。今後は、今回の「コンセンサス」を具体的な成果につなげていくことが重要です。我が国は、引き続きASEANの努力を後押しし、ASEANを始めとした関係国と協力及び連携するとともに、(1)暴力の停止、(2)被拘束者の解放、(3)民主的政体への回帰をミャンマー国軍に強く求めていきます。

日本政府は、この一連の過程において、笹川陽平・ミャンマー国民和解担当日本政府代表と緊密に連携してきており、今後もそれを継続していきます。

※資料2 ベルギーシンクタンクとミャンマーの有力民間日刊紙Mizzimaのツイッターを参考までに掲載しました。
 私が直接取材を受けたわけでございませんが、公表されておりますので参考までに掲載しました。

2020年12月23日にベルギー(ブリュッセル)のCrisis Groupが発表した論説の日本財団(笹川会長)関連部分翻訳

■Japan has helped broker an informal ceasefire between Myanmar's military and the Arakan Army in order to hold supplementary elections.

⇒日本は、追加選挙を実施するために、ミャンマー軍とアラカン軍との間の非公式な停戦を仲介している。

■In the days after the election, Japan's special envoy to Myanmar, Yohei Sasakawa, engineered a surprise diplomatic breakthrough, with the Arakan Army and the military issuing choreographed statements within hours of each other calling for elections to be held in arears here they had been cancelled. Most importantly, these statements marked the beginning of a de facto ceasefire between the two groups that has held since.

⇒選挙後の数日間、日本政府代表の笹川陽平氏は、アラカン軍と軍部が数時間以内に、ここでは中止されていた選挙を実施するよう求める声明を発表するという、驚きの外交的突破口を開いたのである。そして何よりも、この声明によって両グループの間で事実上の停戦が始まり、現在に至っているのである。

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