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新型コロナ 祝日変更策の有効性-海外では、感染抑制のために連休を活用 - 篠原 拓也

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新型コロナは、イスラエル、イギリス、アメリカなどでワクチン接種が進み、感染がやや落ち着いてきた。ヨーロッパでは、ロックダウン(都市封鎖)を緩和する動きもみられる。一方、インドでは、感染力が強いとされる変異ウイルスが猛威を振るっており、感染者数や死亡者数の増加が止まらない。

世界では、死亡者数で、アメリカが57万人、ブラジルが42万人、インドが24万人、メキシコが21万人に達している。感染者数では、アメリカが3239万人、インドが2299万人、ブラジルが1518万人を超えている。

これまでに、世界全体で感染者数は1億5865万1638人、死亡者数は329万9764人。日本の感染者数は64万5817人、死亡者数は1万941人(横浜港に停留したクルーズ船を含まない)に達している。(5月11日19:09現在(CEST)/世界保健機関(WHO)の“WHO COVID-19 Dashboard”より)

日本では、4月25日に、東京、京都、大阪、兵庫の4都府県に発令された、3回目の緊急事態宣言が、5月12日に延長されて、適用地域が愛知と福岡にも拡大された。大型商業施設等への休業・営業時間短縮、飲食店への酒類の提供停止など、強力な対策を要請することで、人流を抑えて、感染を収束させようという狙いだ。ただ、イギリス型などの変異ウイルスの蔓延が進んでおり、重症患者数が増え続けて、病床逼迫が起こるなど、なお予断を許さない状況が続いている。

そうした中、海外ではコロナの感染拡大をコントロールするために、祝日を変更する動きがみられる。祝日を減らす国もあるが、むしろ増やして連休をつくることで、外出自粛を促そうとする国が多いという。いったいどういうことなのか、見ていくこととしたい。

◇ 休日を増やして外出自粛を促す狙い

当たり前のことだが、平日と休日では人々の行動は大きく異なる。コロナ禍で、テレワークの取り組みが進んだとはいえ、平日朝の通勤・通学ラッシュ時は、相変わらず電車の車内は混雑している。小売業や建設業など、出勤しないと仕事にならない業種も多いことが要因の1つと考えられる。

一方、休日は、人々の外出抑制の余地が大きい。昨年の緊急事態宣言期間中のように、不要不急の外出自粛が進めば、感染を抑止することが可能だ。ただし、今年の緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の期間には、外出自粛があまり進んでおらず、感染抑止の効果が薄れているものとみられる。

また、休日にイベントや行楽を行うと、人々が集まって「密」が生じてしまう恐れもある。したがって、感染拡大防止のためにはイベント開催や行楽を制限することが条件となる。

では、感染封じ込めのために、平日を祝日(休日)に変えて、人々の外出自粛を強く促したらどうか? 実際に日本では、昨年の1回目の緊急事態宣言の期間中、平日の5月7日と8日を休暇とすることで、5連休(5月2日~6日)を9連休(5月2日~10日)に拡大して、出勤の機会を減らすよう、政府から経済界に提案されていた。(今年は、そうした話は聞かれなかった。)

ただ、このときは、東京五輪・パラリンピック特措法で規定する「国民の祝日に関する法律の特例」のような、法律に基づく祝日の変更までは行われなかった。一方、海外では、本当に祝日を変更してしまう動きがみられる。

◇ ブラジルでは5日分の祝日を“前借り”

ブラジルでは、同国で発生したとされる変異ウイルスが猛威を振るっており、新規感染者数、死亡者数とも高い水準が続いている。

サンパウロ市では3月18日、感染抑制のために市制休日を5日分前倒しする市政令が公布され、即日施行された。

これにより、3月26日(金)、29日(月)、30日(火)、31日(水)、4月1日(木)が祝日に変更された。もともと4月2日(金)は、祝日(キリストの受難日)のため、3月26日~4月4日(日)が10連休となった。

変更された5日分の祝日は、2021年6月3日(聖体祭)、2021年11月20日(黒人崇拝の日)、2022年1月25日(サンパウロ市政記念日)、2022年6月3日(聖体祭)、2022年11月20日(黒人崇拝の日)を前倒ししたものとされている。

来年の祝日まで“前借り”することにより、なんとか連休をつくり出して感染を封じ込めよう、という大胆な動きといえるだろう。ただ、ブラジルでは3月以降、新規感染者数が毎週40万人を超える状況が続いており、感染抑制の効果はなかなか見えてこない。

◇ ドイツは4月に5連休をつくろうとしたが…

ドイツはイギリスに比べてワクチン接種が遅れていることもあり、感染拡大が深刻化していた。

もともと4月は、2日(復活祭聖金曜日)、4日(復活祭)、5日(復活祭月曜日)が祝日だったが、1日(木)と3日(土)も祝日とすることで、4月1日~5日の期間を5連休にしようとする協議が、連邦政府と州政府の間で進められた。

この間、全土で公共空間での集会を原則禁止し、屋外飲食店も閉鎖すると発表していた。しかし、祝日の追加設定により、「経済活動の喪失は最大70億ユーロ(約9000億円)に上る」(ケルン経済研究所)、「緊急の生産ラインが停止し、大きな問題や相当なコストを引き起こす」(ドイツ機械工業連盟)、「連休前後に来店者が増えるため逆効果」(ドイツ小売業連盟)などの反対の声が上がった。

これを受けて、3月24日、メルケル首相は州政府首相との緊急協議を行い、祝日追加の法制化が時間的な面で困難であることも踏まえて、同措置を撤回し、国民に陳謝することとなった。

感染拡大防止のためとはいえ、新たな祝日を設定するという大技は、社会の影響範囲が広いため、幅広い合意を得るのに時間がかかることがうかがえる。ドイツでは、4月に襲来した第3波がやや落ち着いており、5月9日からワクチン接種者らを対象に夜間外出禁止などの行動制限が一部緩和されている。

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