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性的マイノリティへのいじめをなくすために ―― 同性愛者の目線から見える日本社会の課題 明智カイト

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「女らしさ」「男らしさ」とはなんだろう。学生の頃に、友だちのことを「女の子みたい」「男の子みたい」とか「なよなよしてる」と悪気なくからかった経験を持つ人、それを傍観していた人は多くいるのではないだろうか。

もし友だちが深刻に悩んでいたとしたら、それに気づいてあげられただろうか。もし自分の子どもが深刻に悩んでいたとしたら、それに気づいてあげられるだろうか。

ジェンダーに関するからかいが当たり前になっている社会ってなんだろう。大人が守らずに、誰が子どもを守ってあげられるのだろう。

社会に蔓延るLGBTなどの性的マイノリティに対する偏見をなくさなければ、いじめをなくすことはできない。(LGBT=L:レズビアン、G:ゲイ、B:バイセクシュアル、T:トランスジェンダーの略称)

「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」(http://ameblo.jp/respectwhiteribbon/)共同代表であり、「ストップいじめプロジェクトチーム」(ストップいじめ!ナビ http://stopijime.jp/)にも参加されている明智カイトさんにお話を伺った。
(聞き手・構成/シノドス編集部・出口優夏)

■「互助」だけではなく「公助」も

―― はじめに、「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」とはどういった団体なのでしょうか?

もともとホワイトリボン・キャンペーンとは、
(1)開発途上国における妊産婦の命と健康を守る運動
(2)男性が男性に対し、男性による女性への暴力(特にDV)を止めようと呼びかける運動
(3)自分がLGBTなどの性的マイノリティであることに苦しみ、自殺してしまう若者を救うための運動
(4)対テロ戦争を標榜する報復攻撃を止めようと呼びかける運動の4つの社会運動のことを指します。

「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」では(2)と(3)に焦点を当て、「啓発・啓蒙活動によってジェンダー/セクシュアリティを理由とした暴力や差別のない社会を目指す」という理念のもとに、パネル展や講演会、ロビー活動などを行っています。

わたしたちは、数多くあるLGBT団体のなかでも特殊なスタンスをとっています。よく「自助」「互助」「公助」という言葉を聞くと思いますが、通常LGBTコミュニティーでは、電話相談や交流イベント開催といった「互助」が基本となっています。性的マイノリティに対する公的な支援や法整備がまったくなされていないので、「公助」をあてにしても仕方ないと考えているんですね。

しかし、「互助」はとても負担が大きいという現状があります。普通の仕事をやりつつ、ボランティアとして活動しなければいけないので、身体的にも金銭的にもどんどん疲弊してしまう。そう考えると「公助」も不可欠です。「それぞれの領域がどこまでやればよいのか」というラインを明確にする必要があるということで、わたしたちは「公助」つまり行政に対する働きかけや外部の支援者に対する啓蒙活動に力を入れています。

■自分が動かなきゃ誰も動いてくれない

―― 明智さんが「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」を始めたきっかけはなんだったのでしょうか?

わたしも学生の頃に「女の子っぽい」、「なよなよしている」という理由でいじめを受けていました。今でもいじめの後遺症に苦しんでいて、自殺未遂をしたこともあります。

もともとは「自分は助けられる方の立場であって、助ける方の立場ではない」と考えていたので、LGBTの活動はずっと傍観していたんです。でも、ある支援団体に要望を出した際に意図とはまったく異なることをされてしまった。自分は、「全部の政党に対して要望をしてほしい」と頼んだのですが、その団体は「こんな人がいるので、話を聞いて、票や支持の獲得のために使って下さい」と、特定の政党に私を売り渡してしまったんです。

「なぜ?」と聞くと、「もし他の政党に要望すると、懇意にしている政党が嫌がるので。」と言われてしまい、まったく意味がわからなかった。それならば、当事者である自分がやるしかないと思いました。

■社会が性的マイノリティへのいじめを許容している

―― 性的マイノリティの当事者がいじめの被害者になりやすいのはなぜでしょうか

性的マイノリティに対するいじめの発端というのは、学校のなかで比較的「なよなよしている」とか「オカマっぽい」、「女らしくない」ような子をからかうところから始まります。そこから殴る蹴るといった暴力的ないじめに繋がっていってしまう。

小中学生だと性自認は揺らぐし、自分が何者なのかもわかっていない、自分で情報や仲間を集めることも難しい時期です。そんな時期に自分を否定されてしまうと、立ち直りが難しくなってしまう。しかし、今の日本社会には「そういった子どもたちはいじめられて当たり前」という風潮が根強くあります。むしろ、「男は男らしく」「女は女らしく」という固定観念は、助ける側であるはずの大人の方が強く持っています。だから親や先生に相談しても、「なよなよしているのを直せばいい」とった的を射ない解決法ばかり提示され、ちゃんと向き合ってもらえないことが多い。これは教育の問題というよりも、日本社会全体の問題です。

本当であれば、理由となっているジェンダーハラスメントよりも、殴る蹴るといった具体的ないじめの中身の方が重大な問題なはずです。いじめの中身に焦点を当てたケアがされていないというのはおかしい。とくに性的いじめ、性的暴力に関しては被害を周りに訴えづらいということもあるので、それを受け止め、解決してあげる環境をつくってあげなければいけません。

■身近に相談できる人をつくる必要性

―― 現行では具体的にどんな解決策があるでしょうか?

チャイルドライン(http://www.childline.or.jp/)などが行っている電話相談が主なものです。あとはメールやインターネット上の掲示板などでの相談です。しかし、これらの方法は知らない大人や仲間に助けてもらうというもので、顔が見える援助ではありません。

いじめを受けている子にとって、身近に相談できる人がいないというのは大きな問題です。本当ならば、家族、友人や先生、地域の人や病院の先生、カウンセラーとともに立ち向かっていかなければなりません。でも、いじめや「いじめの後遺症」で苦しむ当事者が病院に行ったとしても、精神病扱いされて薬をもらうだけで終わりになってしまうという現状があります。それは本質的に間違っている。わたしの場合、「うつ病ではない」と自分では思っていますが、おそらく病院に行けば「うつ病」という診断を受けてしまうと思います。でも、それは適切なケアを受けられなかったことに起因するものであり、自分ではなく社会に原因があるはずです。その原因を解消していくことが必要です。

――そうですよね。電話相談ができる子って、じつは自分で乗り越えられる力を持っている子だと思います。苦しんでいても電話をすることができない子も大勢いるはずだから、結局のところ根本から社会を変えていかないといけない。

大人だったらハラスメントやいじめは裁判になる程の問題です。でも、子ども同士ではなかなか裁判にならない。自分から法的に訴える力もありません。まわりに支えてくれる大人がいない子どもに「一人で立ち向かえ」というのはどう考えても無理があります。子どもの問題に適切に介入していくのが大人の責任であるはずなのに、わたしには大人が大人を放棄しているとしか思えない。本来は大人によって子どもは保護されるべきなのに、子どもが大人をやらされているという気がしています。

現在の社会は、偶然にいじめのターゲットになってしまったがために、その傷が癒えずとことん堕ちていってしまうことを許容しています。もし、わたしもいじめに遭っていなければ、カミングアウトをすることもなく今ごろ楽しく生きていたでしょう。いじめのターゲットになるか否かでその後の人生が決まってしまうというのはどうしても納得がいかない。たとえ、いじめにあったとしても、すぐに立ち直れる社会をつくっていく必要があります。

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