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【読書感想】禍いの科学 正義が愚行に変わるとき

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禍いの科学 正義が愚行に変わるとき

禍いの科学 正義が愚行に変わるとき

  • 作者:ポール・A・オフィット
  • 発売日: 2020/11/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


Kindle版もあります。

禍いの科学 正義が愚行に変わるとき

禍いの科学 正義が愚行に変わるとき

  • 作者:ポール・A・オフィット
  • 発売日: 2020/12/08
  • メディア: Kindle版

内容(「BOOK」データベースより)
科学の革新は常に進歩を意味するわけではない。パンドラが伝説の箱を開けたときに放たれた凶悪な禍いのように、時に致命的な害悪をもたらすこともあるのだ。科学者であり医師でもある著者ポール・オフィットは、人類に破滅的な禍いをもたらした7つの発明について語る。私たちの社会が将来このような過ちを避けるためには、どうすればよいか。これらの物語から教訓を導き出し、今日注目を集めている健康問題(ワクチン接種、電子タバコ、がん検診プログラム、遺伝子組み換え作物)についての主張を検証し、科学が人間の健康と進歩に本当に貢献するための視点を提示する。

 「科学的な根拠はあるのか?」「ソースを出せ!」と言う人を、ネットでは大勢見かけます。まあ、現実でみかけないのは、知りあいにわざわざそんなケンカ腰で対応しない、というのが大きいだけかもしれませんが。

 怪しげな民間療法やネットワークビジネスを「紹介」してくる人というのも少なからずいるのですが、いちいち「論破」しようとしても、相手にとっては「想定内」で、かえって危険な目にあうこともありますし。

 僕はネット上で、「自分はリテラシー(読解力・理解力)が高い」と思い込んでいるだけの人を大勢みてきました。

 彼らは声高に、自分が「科学的」な人間であることをアピールするけれど、出された「ソース」が妥当なものなのかどうか判断する能力に欠けているのです。

 たとえば、あまりにもn(被験者数)が少なくて統計的な意味をなさないデータを鵜呑みにしたり、リスクばかりをあげつらって、メリットを無視したり。まあでも、実際のところ、薬のデータそのものを捏造した事件もありましたし、100%信じられるデータはないし、「科学」も進歩とともに「何が正しいのか」は変わり続けているのです。

 「科学」そのものではなくて、人間の倫理観の変化によって、同じ行為に対しても、正しくなったり、誤りになったりもするのです。

 著者は、この本のなかで、7つの「世界最悪の発明」を紹介しています。

 アヘン、マーガリン、化学肥料(の研究から生まれた化学兵器)、優生学、ロボトミー手術、『沈黙の春』によって使われなくなったDDT、ノーベル賞受賞者による「ビタミン過剰摂取健康法」。

 これらの7つの「発明」は、すべて、人々の「善意」から生まれたものなのです。
 苦痛を緩和したい、飢餓をなくしたい、地球を環境破壊から守りたい……

 ところが、こうした、善意からつくられたものたちが、「兵器」よりも、多くの人の命を奪ってきた、というのが「科学の歴史」の一面なのです。

 後世からみれば「なんであんなことをやったんだ……」というような事例も、当時の人々は、本気で「それが正しいと信じていた」。たぶん、われわれがいま「科学的に正しい」と思ってやっていることだって、未来の人類(ではないかもしれないけれど)からすれば、「未知であるがゆえの愚かさ」だったと見なされることになるものが少なからずあるはずです。

 いま、日本でも新型コロナウイルスに対するワクチン接種が進められているのですが、その副作用のリスクを不安視する声も大きいのです。

 僕も正直なところ、こんな短期間で開発されたワクチンが本当に安全なのか?という問いに対しては「この短期間で可能な範囲の安全性のチェックは行われているが、副作用のリスクは重篤なものも含めてあるし、長期的な影響についてはわからない面もある」と答えざるをえないのです。

 それでも、現状では、ワクチンを接種するほうが、「日本人、あるいは人類全体としてはリスクより利益のほうがはるかに大きい」と判断しています。

 少し前に、「人間が死ななくなる方法が開発された世界」を舞台にした小説を読んだことがあります。
 そのなかで、ごく一部の人たちが、「あえて、死んでしまう人間でありつづけること」を選んだ世界。
 ところが、その作品は、「死なない治療を受けた人たちだけに致死的な影響を与えるウイルスが出現し、死ぬ人生を選択した人間のほうが生き残って人類を存続していく」というオチだったんですよ。

 実際、現実にも、長生きできない赤血球の異常が起こる遺伝的な疾患を持つ人たちが、「マラリアにかかりにくい」という特徴を持っているために、その地域では(相対的に)長生きし、子孫を残してきた、という事例があるのです。

manabu-biology.com

 35年間にわたってワクチン開発を続けてきた科学者として、私は科学が万能の力を発揮する喜びと、予期せぬ結果を生む悲しみの両方を目にしてきた。例えば、経口ポリオワクチンは西半球からポリオをなくし、今でも世界中で使われているが、ワクチン自体がポリオの感染を引き起こすことがある。

このような副作用はまれだが、現実に起こっている。1998年から1999年にかけての10ヵ月間、米国の乳幼児に投与されていたロタウイルスワクチンは、まれに腸重積(訳注:腸管が重なった状態で引き起こされる腸閉塞症)を起こすことがあり、一人の子供が死亡したことによって中止された。ヨーロッパと北欧諸国で2009年に行われたブタインフルエンザの予防接種は、ナルコレプシー(居眠り病)と呼ばれる睡眠障害をまれに発症させることが判明した。

発症すれば、影響は生涯にわたって続く。これらはどれも命にかかわる恐ろしい感染症から人々を守ろうとする素晴らしい発明だったが、少数ながらも悲劇が生まれてしまった。

 「科学的」だからこそ、「100%安心、安全」はありえない。

 でも、一定の確率で誰かに起こるリスクだとわかっていても、それが自分の身に起こったら、「運が悪かったね」と納得することはできないんですよね。

 1962年、アメリカのサイエンス・ライターであるレイチェル・カーソンは、殺虫剤(DDT)による環境破壊や生物への被害を訴えた『沈黙の春』という本を出版しました。

 この本は大ベストセラーとなり、世論の高まりによって、DDTは使用を禁止されていったのです。
 
 その結果、どんなことが起こったのか?

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