記事

なぜジャニーズは海外市場を掴めない? BTSとの比較で分かった“日韓アイドル”の圧倒的格差 男性アイドルシーンの転換点 #2 - 松谷 創一郎

1/2

《ジャニーズ一強の崩壊》JO1の白岩瑠姫も…元Jr.の「韓国系プロダクション」流出が止まらないワケ から続く

【写真】この記事の写真を見る(5枚)

 日本で男性グループの群雄割拠が生じにくかったのは、それまでジャニーズが国内マーケットをなかば独占状況に置いていたからだ。

 ジャニーズは、地上波テレビを中心とする日本のエンタテインメント業界を巧みに渡り歩き、覇権を強めてきた。グループの冠番組に後輩を出演させるバーター戦略をはじめ、競合グループの露出に圧力をかけるという噂は常に囁かれていた。これが、つい最近までの日本の「男性アイドルの難しさ」の背景だった。(全2回の2回目/前編から続く)

国内市場で“圧倒的勝者”だったジャニーズ

 事実、テレビ朝日の『ミュージックステーション』に、ジャニーズ以外の男性アイドルグループが出演しにくい状況はいまだに続いている(現在は元ジャニーズJr.が在籍するJO1がいつ出演するかが注目ポイントだ)。さらに、雑誌やスポーツ新聞にジャニーズ担当を準備させることで、露出やスキャンダルもコントロールしてきた。

ジャニーズ事務所 ©AFLO

 結果、ドメスティックなマーケットでジャニーズは圧倒的な勝者として君臨してきた。それは、成熟しきったレガシーメディアへの徹底した適応によって築かれ、競争が生じにくい環境も構築した。閉鎖的な市場における限定的なゲームを攻略しきったのである。

 しかし、こうしたジャニーズの独占状況が崩れつつある。前編で見てきたように、K-POPや吉本興業、元ジャニーズJr.、そしてSKY-HIなど多くの参入が続いている。

公取委の「注意」が端緒となった

 その端緒となったのは、やはり2019年7月に公正取引委員会から「注意」されたことだ。ジャニーズ事務所は、新しい地図(元SMAPの3人)の地上波テレビ出演に圧力をかけていた疑いがあるとされた。芸能プロダクション同士の競争を阻害し、ジャニーズ帝国の支配を許していた“業界の掟”は、当局の監視によってついに終わりを迎えた。

 その後、ジャニーズからは退所(契約解除)する芸能人が相次いでいる。錦戸亮、中居正広、手越祐也、山下智久、長瀬智也、岩橋玄樹などだ。つい最近も、近藤真彦の退所が報じられたばかりだ。

 また、ジャニーズに限らず所属プロダクションからの移籍・独立も目立つ。日本の芸能界には、やっと自由競争の経済原理が働きつつある。

 ジャニーズのコンペティターが増える背景には、メディアとエンタテインメントの大きな変化も重要なポイントだ。

ネットではジャニーズの覇権は機能しない

 ジャニーズは地上波テレビを中心とした国内のメディア状況にアジャストして覇権を強めてきたが、2010年代はスマートフォンとSNS、そして映像・音楽のネットメディアのさらなる浸透によってレガシーメディアは完全に相対化された。YouTube、Netflix、Amazonプライム、Disney+、Hulu、ABEMA、Spotify、Apple Music等々、エンタテインメントを取り巻くメディア空間はこの5年ほどで激変した。

 多くの男性グループの誕生も、この多様なメディア状況があるからこそだ。主戦場は、もはや地上波テレビや雑誌などではなくYouTubeやSNSだ。音楽で言えば、単価の高いCDを国内の熱心なファンに売ることよりも、YouTubeやストリーミングサービスを通じてグローバルに音楽を届けることが必要とされる。K-POPが率先してやってきたのは、まさにこうしたことだ。

 しかし、ネットではジャニーズの覇権は機能しないどころか、2018年頃まで真剣に取り組まなかったためにいまだに後塵を拝している。競争を排除してまでドメスティックなマーケットに過剰適応し、典型的なガラパゴス化に陥って国際競争力を失った。

 公取委がジャニーズを「注意」したのは、こうした状況を重く見たためでもある。「競争法」とも呼ばれる独禁法は、各業界におけるプレイヤーが健全に競い合うことを監視する法律だ。競争を排除しようとしたジャニーズの支配体制は、明確にそれに反していた。

あわせて読みたい

「ジャニーズ」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    ワクチン接種で雰囲気は好転、一方で過激化する「反ワクチン」グループ…正しい知識に基づく感染症対策の継続を

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

    06月13日 08:21

  2. 2

    "やっぱりおかしい"消費税 安宿暮らしは「課税」なのに高級マンション家賃は「非課税」

    キャリコネニュース

    06月13日 09:08

  3. 3

    変異株で若い世代の致死率が上昇した事実はなく、40代50代も実際は4分の1に低下

    青山まさゆき

    06月13日 12:45

  4. 4

    【独自】都監察医務院でワクチン関連死が「剖検」されていない問題

    上田令子(東京都議会議員江戸川区選出)

    06月13日 18:37

  5. 5

    慣例主義の日本は、五輪やコロナのように二分化する議論で進化していく

    ヒロ

    06月13日 11:04

  6. 6

    なぜ台湾は「コロナ劣等生」に急落したのか? - 井上雄介 (台湾ライター)

    WEDGE Infinity

    06月13日 14:45

  7. 7

    森ゆうこ議員「北朝鮮にワクチンを提供せよ」立憲民主党の驚愕の外交センス

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

    06月12日 08:49

  8. 8

    9浪して早稲田大学に入学した30歳男性「まったく後悔ない」 偏差値41・壮絶いじめからの道のり

    キャリコネニュース

    06月13日 08:31

  9. 9

    自らの失敗は棚にあげ、人々の監視に注力する吉村大阪府知事

    村上のりあつ(立憲民主党大阪府第1区総支部長)

    06月13日 15:11

  10. 10

    K‐POPはなぜ世界に進出できた? 現地のクリエイターに聞いた、ファンを熱狂させる“仕掛け”とは 著者は語る『K-POPはなぜ世界を熱くするのか』(田中絵里菜〈Erinam〉 著) - 「週刊文春」編集部

    文春オンライン

    06月13日 11:42

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。