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- 2013年01月07日 15:42
ディズニー、カリフォルニアアドベンチャーの混乱(上)
テコ入れのお陰で盛況を見せるカリフォルニア・アドベンチャー
ロサンゼルス、アナハイムにあるカリフォルニア・ディズニーランド・リゾートといえば一般に思い浮かべるのは1955年にオープンした元祖ディズニーランド。だが、その後、フロリダにウォルト・ディズニーワールド(1970)、浦安に東京ディズニーランド(1983)、パリにユーロ・ディズニー(1993、現ディズニーランド・パリ)と建設され、全体の規模としては最も小さい存在になってしまった。そこで2001年、満を持してディズニーランドの向かいにオープンさせたのがカリフォルニア・アドベンチャーという名のパークだ。現地カリフォルニアをテーマとしたパークで、当初はGolden State=カリフォルニアの歴史や自然、Hollywood Pictures Backlot=ショービジネス、Paradise Pier=西海岸の移動遊園地という三つのテーマランドから構成されていたのだが、どちらかというと向かいのディズニーランドのオマケ的な印象が強く、当初は人の入りがあまりよくなかった。そこでテコ入れを繰り返し、現在ではBuenaVista Street、Bug’s Land、Pacific Warf、Condor Flat、Grizzly Peakが加わり(一部、かつてのランドを分割し名称を変更)、さらに2011年にはParadise PierにあるParadise Bayでのウォーターショー・World of Color、を開始。昨年にはCars Landが完成して、2007年にはダブルスコアだったゲストの入場者数がディズーランドに負けないほどの数を呼び込むことに成功した。ただし、この大幅なテコ入れはディズーランドのテーマパークというコンセプトを大幅に逸脱していったしまったことも事実で、どうも「ごった煮」的なフツーの遊園地に成り下がった感も否めない(酒もおおっぴらに飲めるし。まあ、これは「大人のディズニー」というディズニーシーと同じ設定なので、オープン当初から飲めたのだけれど)。
ピクサーランド化
テコ入れが生んだ混乱状況を見てみよう。カリフォルニア・アドベンチャーのテコ入れとしてキモとなったのはカリフォルニアとはいささか関係の薄いものだった。それは90年代後半以降、ディズニーアニメの中心となるピクサーアニメのキャラクターを用いたアトラクションやショーの増設だ。
まず最初にBug’s Land。これは2002年に増設されたもの。その名の通りピクサーフィルム”Bug’s Life”にちなんだアトラクションで埋め尽くされている。最もウリだったのは”It’s Tough to Be a Bug!”という3Dシアタータイプのアトラクションで、土の中の虫の生活がピクサーのキャラクターのドタバタ芝居で演じられる。ウリはフンコロガシがおならをするシーンで、なんと会場内におならの臭いが漂うというもの。ただし、これ以外は小さな列車や、観覧車、ゴーカートといった類いの子ども向け施設(ディズニーランドならトゥーンタウンに相当する)。これ自体がカリフォルニアと何ら関係ないだけでなく、完全に子ども向けの施設で、場違いな感は否めなかった。ちなみにいちばんのウリであった”It’s Tough to Be a Bug!”は当初こそファストパス扱いだったが、今やそのテクノロジーの古さもあり、すっかり人気薄のアトラクションに成り下がっている。
次いで2005年、”Turtle Talk with Crush”がHollywood Landにオープンする。ファインディング・ニモに登場する亀のキャラクター・クラッシュとゲストが会話するというもの(これは現在、東京ディズニーシーのアメリカン・ウォーターフロントにある)。
2006年には” Monsters, Inc. Mike & Sulley to the Rescue!”が同じくHollywood Landにオープン。これは映画「モンスターズインク」のストーリーをライドに乗って見て回るという、ディズニーランドの定番的な形式のアトラクションだった(東京ディズニーランドの「モンスターズインク・ライド・アンド・ゴー・シーク」とはちょっと違う)。
2008年、昼のパレードとして”Pixar Play Parade”が登場する。それまでもピクサーの小規模なパレードはあったが、ここからは大々的にピクサーのキャラクターが総出演となった。また、同年、Paradise Pierに”Midway Mania”(東京ディズニーシーの「トイストーリーマニア」と同じもの)が登場している(ちなみに、これは「的あて」なので、テーマ性に置かれているParadise Pierのテーマとのズレはない)。
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カリフォルニア・アドベンチャーの主役は、今やピクサーキャラクターだ!
2009年のピクサーアニメ”Up”(日本題名「カールじいさんの空飛ぶ家」)が公開されると、ブラザーベアを基調にしたアトラクション”Redwood Creek Challenge Trail”(子どもがフィールドワークができるような設備)が、同映画に登場するキャラクター・少年ラッセルを中心とするものに変更された。
さらに2011年には”World of Color”と呼ばれる噴水のショーがParadise Bayではじめられた。100メートル以上あるウォータースクリーンにピクサーの世界が展開されている。ちなみにこのタイトルはウォルト・ディズニーが生存中ABCテレビで放映されていた”Disneyland”という番組の中で、カラー番組を展開する際に使われていた名前で、このショーでも当時のタイトルソングが使われている。ただし、しつこいようだが、そこで展開されるのはあくまでもピクサーの世界だ。ピクサーアニメのハイライトシーンを中心にその映像がウォータースクリーンに投影されている。
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夜のショー、"World of Color"。タイトルこそウォルト・ディズニーにちなんだものだが、ウォータースクリーンに映し出されるキャラクターはほとんどがピクサーのそれだ。
そして2012年のCars Landのオープン。ここは映画”Cars”の舞台となったRadiator Springsの街並みが完全に再現され、Carsのキャラクターが総登場する。パークの中でもかなりの面積を誇る。三つあるアトラクションの中でもRadiator Springs Racerは大人気で、現在スタンバイだと二時間以上の待ち時間となるほどだ。
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新しくできたCars Land。映画”Cars"の舞台、Radiator Springsがキモチワルイほどに完璧に再現されている。
要するにカリフォルニア・アドベンチャーはだんだんと「ピクサーランド」と化しているのである。でも、なぜ?(続く)