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【読書感想】郵政腐敗 日本型組織の失敗学

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郵政腐敗 日本型組織の失敗学 (光文社新書 1129)
作者:藤田 知也
発売日: 2021/04/13
メディア: 新書







Kindle版もあります。

郵政腐敗 日本型組織の失敗学 (光文社新書)
作者:藤田 知也
発売日: 2021/04/13
メディア: Kindle版

本書内容
日本郵政グループは、2021年に郵便事業の創業から150年を迎えた。従業員40万人を超える巨大組織は「腐敗の構造」にはまって抜け出せずにいる。近年では、かんぽ生命の不正販売、内部通報制度の機能不全、ゆうちょ銀行の不正引き出しと投信販売不正、NHKへの報道弾圧、総務事務次官からの情報漏洩と癒着など、数多の不祥事が発覚した。一連の事象の底流にあるのは、問題があっても矮小化し、見て見ぬフリをする究極の「事なかれ主義」だ――。スルガ銀行や商工中央金庫による大規模不正事件など、金融業界の不祥事を追及してきた朝日新聞の記者が、巨大グループの実態にメスを入れる。

 日本郵政グループ、あまりにも酷すぎる……さまざまな報道で、その腐敗っぷりを聞いてはいたのですが、こうして1冊の新書にまとめられているのを読むと、どうなってるんだこれ……と言わざるをえないのです。
 留守にしがちな僕のところに、郵便物の再配達をしてくれる感じの良い人たちには、この一通の封書のために、いつも申し訳ない……という気持ちになるのですが。

 いまの日本郵政グループ、郵便事業のほうはそうでもないのかもしれないけれど、少なくとも保険関係は、まさに「ブラック企業」としか言いようのない状況なのです。

 生真面目な郵便局員が実績と手当を稼ぐため、独り身の高齢女性をつけ狙い、欲しくもない保険を売りつける──。
 そんな事例をひとつ目の当たりにするだけで、普通の感覚なら相当なショックを受けるはずだが、日本郵政グループの経営幹部たちは悠然としていた。
 2018年春のNHK番組で、70代後半の女性顧客が強引に保険を売りつけられたと訴え、「郵便局は嫌。信頼できない」と悔しそうに語る姿が放映された。
 だが、郵政グループは報じられた被害者の話を聞き直すこともなく、被害をただ漫然と放置した。あれはごく一部の悪質な事例なんだと、調べもせずに都合よく決めつけ、不正を防ぐための対策は万全なのだとアピールもしてみせた。
 そもそも一つや二つの事例を持ち出し、まるで郵便局員全員が悪いかのように言うのは偏向報道だ、と逆ギレする幹部さえいた。
 狂った感覚だと言うほかない。
 すでに郵便局の現場では、顧客のニーズや利益を無視した保険販売が横行していた。インストラクターと呼ばれる指導役が不正な手法を広め、入社してすぐに教わる不正販売こそ”正しいやり方”と信じ込む郵便局員を育てて野に放っていた。主要幹部が共有するデータには、不正と疑われる契約が年に万単位で出現し、NHKの報道後も拡大していた。
 顧客からの苦情で不正がバレそうになっても、郵便局員が否認すれば不正とは認めず、金融庁にも届けないという末恐ろしい運用がまかり通った。お金だけはあっさりと返し、被害者をなだめることが”
”救済”だと放言する経営者もいた。根拠のない楽観論にすがる一方で、NHKには経営陣が率先して熾烈な抗議を展開し、続報が出るのを封じ込めた。
 組織を挙げて不正の隠蔽と矮小化を重ね、問題が表面化するのを無理やり抑え込んだ。その結果、不正が膨れ上がり、顧客や現場の不満と怒りが限界を超えて噴出する事態にまで発展したのだ。
 こんな会社組織が、一体どのようにして形成されるのだろうか。

 この新書を読んでいると、日本郵政グループという会社が怖くなってくるのです。郵便局に入るときには身構え、何かのセールスをされそうになったら、ダッシュで逃げ出そうと決意してしまいます。

 「かんぽ生命」では、自分の成績を上げるため(厳しいノルマを果たすため)に、高齢者を言いくるめて新たな契約を結ばせたり、これまでよりも契約者が不利になるような保険に乗り換えさせたりしていた事例が噴出していました。

 利回りが高い間は、郵便局員が無理をしなくても保険は売れた。ずさんな営業は以前からあったが、多少の不利益を与えるとしても、それを上回る利益が出せたために、トラブルの表面化が抑えられた面もある。
 だが、金融市場は2000年前後から低金利の時代に入った。国債が中心の簡保の運用利回りも低下し、保険商品の「貯蓄性」も薄れていく。2013年からは日本銀行の大規模緩和が始まり、2016年のマイナス金利政策や長期金利誘導がダメ押しとなった。生保商品のほとんどが、払う保険料が受け取れる保険金を上回る「掛けオーバー」になり、保険が「貯金代わり」となる時代に幕を下ろした。
 かんぽの保有契約件数は1997年3月末に8432万件とピークをつけ、2013年3月末には3681万件まで落ち込んでいる。

 日本郵便が国会で示したデータによると、かんぽ生命の販売目標は民営化翌年の2008年度から2016年度にかけて1.6倍近くに増えた。その後は徐々に目標額を下げたものの、「保有契約の反転」を目標に掲げ続けて高水準を維持していた。
 割り当てられた営業目標を達成できた郵便局の割合は、2015年の60%超えが2017年度には30%程度に減り、2018年度にはさらに10%台へと沈んでいった。
 郵政経営陣が何の戦略もないまま、高すぎる営業目標を現場に押しつける間に、無理な保険勧誘も加速していった。

 いま(2021年)、40代も終わろうとしている僕は「もう、貯蓄型の保険って、時代遅れではないか」と考えてしまうのです。そもそも、収入がなかなか上がらない今の日本では、保険にお金をかける余裕もなくなってきています。ましてや「掛けオーバー」では……
 ネットなどで、「老後の生活が不安です」という質問への、ライフプランナーの回答の定番が「まず、月々の保険料を見直しましょう。保険は病気になったときの保障のための掛け捨ての安いもので十分」なんですよね。
 保険も、ネットで簡単に契約できるものが増えてきていますし、「いまの生活のためには、保険どころじゃない」という人も多いのです。

 日本の人口は確実に減っていき、高齢化もすすんでいく。若者は「保険」への興味を失っている。
 貯蓄型の保険って、「日本経済が右肩上がりだった時代の遺物」みたいなものであり、いまの時代に合わないのに、「会社を成長させ、利益をあげるため」に、現実を知らない(知ろうとしない)上層部は、どんどんノルマを上げていくのです。
 その結果が、「高齢者を言いくるめで不要な保険を売りつける詐欺まがいの販売方法」や「身内を契約させる自爆営業」の横行でした。

「民営化によって、経営が健全化され、サービスが良くなる」はずじゃなかったのかよ……
 成長性がない事業を、現実を見ない上層部が無理に「成長している体裁」を整えようとするあまり、こんなことになってしまったのです。
 どこの悪代官なんだよこの会社。

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