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東京五輪、本当にやるんですか?

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国際オリンピック委員会(IOC)トーマス・バッハ会長(画面上)、東京2020組織委員会橋本聖子会長(右)と小池百合子東京知事(左)らの五者協議 2021年4月28日 出典:Franck Robichon – Pool/Getty Images

安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

【まとめ】

・緊急事態宣言の5月31日までの延長が決まった。

・オリンピック開催中止を求める署名がオンラインで27万筆に。

・開催するなら、菅首相は国民の不安に向き合いその理由を語るべき。

緊急事態宣言の5月31日までの延長が決まった。対象地域に愛知県福岡県も追加された。まん延防止等重点措置について北海道、岐阜県三重県を追加した。

しかし、そうすぐに感染状況は改善されないだろう。東京都の5月8日15時下時点の速報値で新たに1121人が感染した。1000人超えは5月1日以来で、4月25日からの第3回緊急事態宣言下、最多である。

菅首相の昨夜の会見も何を言っているのかさっぱりわからなかった。そして、例のごとく、記者の質問に真正面から答えなかった。首相官邸が公開している記者会会見の文字起こし(新型コロナウイルス感染症に関する菅内閣総理大臣記者会見)を読んでいただきたい。文字で読めばああ、そういうことを言っていたのか、とわかるが、実際にリアルタイムで聞いていると、つっかえつっかえ話すので、すんなり頭に入ってこない。前回も書いたが、心に響かない。

そして、本来は首相が言うべきことを、「基本的対処方針分科会」の尾身茂会長に丸投げするものだから、益々首相って何?という状態になってしまうのだ。官邸の広報は何を考えているのだろうか?

その尾身会長は重要な発言をしている。1つは、「下げ止まり」の問題だ。ようするに、あるところまで行ったらそれ以上は下がらなくなる、と指摘したのだ。そして、「下げ止まったからすぐに解除するということをすると必ずリバウンドが来ます。下げ止まっても、大まかな目安ですけれども、2~3週間はぐっと我慢するということが次の大きなリバウンドになるまでの時間稼ぎをできる」としたうえで、「解除をした後にも必要であればいわゆる重点措置についてもしっかりと活用することも一つの選択肢」だと述べた。国民に対し、そう簡単には感染は減りませんよ、緊急事態宣言を解除しても、その後も「まん防(まん延防止重点措置)」による自粛が必要ですよ、と言っているのだ。

もう一つは、「軽症状者に対する検査強化」だ。尾身会長は広島県で行われた大規模PCR検査の結果などを踏まえ、「簡便で結果がすぐ分かる抗原の検査キットというものがあるのですけれども、それを活用して今申し上げた軽症状者、病院に行くほどではない軽症状者を検査し、感染が確認されれば、その周辺の無症状者がいっぱいいますよね。その周辺の無症状者に広範なPCR検査を是非やっていただいて、そのことによって大きなクラスターを防ぐことができると思いますので、是非これを徹底的にやっていただきたいと思います。その際には、いわゆる健康観察アプリというのがいろいろありますから、そういう方法もうまく活用して、抗原の検査キットを活用した積極的な検査というのを是非政府にお願いしたい」と述べた。

▲写真 菅首相と尾身茂会長(2021年2月2日) 出典:David Mareuil – Pool/Getty Images

尾身会長の話を聞いいて、一体どちらが首相なのかわからなくなった人もいるのではないか?専門家の話を聞き、その上で対策を打ち出すのが政治家の仕事だろう。この会見の建付けは非常にまずいと思う。国民が首相の言うことに信頼を置かなくなってしまうからだ。

そして、会見ではオリンピックについても質問が相次いだ。オンライン署名サイト「Change.org」上の「人々の命と暮らしを守るために東京五輪の開催中止を求めます」と題したキャンペーンの賛同は、5月5日正午に開始されてから3日で約27万筆に達している。海外メディアからも、アスリート以外に来日する数万人の外国人関係者、報道陣と一般人との接触をどうコントロールするのか、質問が出た。

菅首相は「選手や大会関係者と一般の国民が交わらないように滞在先や移動手段、ここは設定をします。それで、選手は毎日検査を行うなど厳格的な感染対策をしっかり行います。こうした対策を徹底することによって、まず、選手と日本国民の命、健康はしっかり守る」と答えていたが、質問の答えになっていない。何万人もの外国人が来日し、8万人ものボランティアが参加する状況で、人と人が「交わらない」などということが可能なのだろうか?仮に選手に毎日検査をしても、検査で感染が防げるわけではないのだから、当然、感染は拡大するだろう。それが分かっているからみなオリンピック開催に疑問を持ち始めているのだ。

ちなみに、海外メディアでは、東京五輪を“Super Spreader”と称する記事を多く目にする。文字通り、「めちゃくちゃ感染を拡大する」イベントだと見られているのだ。日本人にその意識はあるのだろうか?

医療のひっ迫で命が脅かされ、長引く自粛で失業の恐怖に立ちすくんでいる国民に対して、何故今、オリンピックなのか説明できるのか?もし開催するのなら、菅首相には真正面から国民に向き合い、その理由を語ってもらいたい。

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