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米4月雇用統計は予想外に弱含み、年内テーパリング観測が後退

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Job Growth Much Weaker Than Expected, Puts Less Pressure On the Fed To Talk About Tapering Prematurely.

<本稿のサマリー>

米4月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は、新規コロナウイルス感染者数が2020年10月以来の5万人を割り込み、ワクチン接種を完了した米国人が30%を超え、経済活動の再開が進むなかでも、市場予想を大幅に下回る水準にとどまった。米4月ADP全国雇用者数にかすりもせず、米4月チャレンジャー人員削減予定数と同時に発表される採用予定数通り、雇用の伸び悩みをみせた。ただし、悪材料ばかりでもない。その他のポイントは、以下の通り。

(ポジティブ)

週当たり労働時間が35.0時間と、2006年以来の最長
平均時給は予想外に上昇、20年4月に急伸した反動で前月比、前年比ともに下落が見込まれていた
労働参加率は61.7%と、20年3月以来の水準へ改善
不完全失業率は10.4%と、20年3月以来の水準へ低下
家計調査でフルタイムの雇用が大幅増、パートタイムは2ヵ月連続で減少
コロナ禍で理由で職探しをしなかった労働者、20年3月以降で最低

(ネガティブ)

NFPは前月比26.6万人増、100万人増との期待を裏切る
・3月分のNFPは速報値の91.6万人増から77.0万人増へ大幅に下方修正
失業率は6.1%へ上昇、経済活動が再開し始めた20年5月以降で初めての上昇
長期失業者の割合は43.0%と2011年9月以来の高水準近くを維持、長期失業の指標は高止まりしており、追加経済対策で失業保険の上乗せが9月6日まで延長された影響か
労働市場の先行指標ともいえる派遣が2ヵ月連続で減少、フルタイムの増加と共に改善トレンドを表すのか注意

一連の結果を受け、イエレン財務長官による利上げ言及への警戒感とテーパリング開始への懸念が後退、米時間午前11時半時点で米金利は低下した。米株相場も超緩和政策維持のシナリオを先取りし、上昇した。

米4月雇用統計の詳細は、以下の通り。

米4月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比26.6万人増となり、市場予想の100万人増を大幅に下回った。前月の77.0万人増(91.6万人増から下方修正)から急減速したものの、4ヵ月連続で増加した。7月1日からNY市が全面稼働する方針を決定するほど正常化が進むなかでも、企業側が求める人材と失業者との間でのスキルギャップがあるためか、大寒波の反動もあって急増した3月ほどの勢いが失われた。

2月分の6.8万人の上方修正(46.8万人増→53.6万人増)と合わせ、過去2ヵ月分では合計で7.8万人の下方修正となった。2~4月の3ヵ月平均は52.4万人増と、コロナ禍前の2019年平均である16.8万人増を大幅に上回った水準を維持した。

今回までで20年5月以降、1,415万人の雇用を取り戻した。ただ、同年3~4月の記録的な減少(2,236万人)を打ち消し同年2月の水準を回復するには、あと821.5万人必要となる。

チャート:コロナ禍で失った雇用を取り戻すには、あと821.5万人増加する必要あり

(作成:My Big Apple NY)

NFPの内訳をみると、民間就労者数は前月比21.8万人増と市場予想の93.8万人増を大幅に下回った。ただし、前月の70.8万人増(78.0万人増から上方修正)を含め、4ヵ月連続で増加した。民間サービス業は23.4万人増、ヘッドラインと同じく前月の54.2万人増(59.7万人増から下方修正)に遠く及ばないペースにとどまった。

チャート:NFPは4ヵ月連続で増加も小幅にとどまり、失業率は低下トレンドにブレーキ

(作成:My Big Apple NY)

サービス部門のセクター別動向は、政府を含め11業種中6種が増加し、前月から3業種減少した。今回最も雇用が増加した業種は2~3月に続き娯楽・宿泊で、3ヵ月連続で全体を支えた。続いて2~3月と同じく政府が入り、3位はその他サービスが入った。一方で、これまで増加を牽引していた専門サービス、輸送・倉庫、小売、教育など4業種は減少した。

(サービスの主な内訳)

―増加した業種

・娯楽/宿泊 33.1万人増、3ヵ月連続で増加<前月は20.6万人増、6ヵ月平均は7.4万人増(そのうち食品サービスは18.7万人増、4ヵ月連続で増加>前月は10.0万人増、6ヵ月平均は4.3万人増)
・政府 4.8万人増、2ヵ月連続で増加<前月は6.2万人増、6ヵ月平均は0.1万人増
・その他サービス 4.4万人増、4ヵ月連続で増加<前月は3.9万人増、6ヵ月平均は1.6万人増

・金融 1.9万人増、2ヵ月連続で増加=前月は1.9万人増、6ヵ月平均は1.1万人増
・卸売 0.8万人増、9ヵ月連続で増加<前月は2.1万人増、6ヵ月平均は1.3万人増
・情報 0.1万人増、5ヵ月連続で増加<前月は0.8万人増、6ヵ月平均は0.6万人増

―横ばいの業種

・公益 横ばい<前月は0.1%増、6ヵ月平均は横ばい

―減少した業種

・教育/健康 0.1万人減、3ヵ月ぶりに減少<前月は10.4万人増、6ヵ月平均は2.7万人増
(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は1.9万人増、3ヵ月連続で増加<前月は5.1万人増、6ヵ月平均は2.0万人増)
・小売 1.5万人減、4ヵ月ぶりに減少<前月は3.3万人増、6ヵ月平均は1.3万人増
・輸送/倉庫 7.4万人減、4ヵ月ぶりに減少<前月は4.5万人増、6ヵ月平均は1.6万人増
・専門サービス 7.9万人減、12ヵ月ぶりに減少<前月は6.7万人増、6ヵ月平均は7.1万人増(そのうち派遣は11.1万人減、2ヵ月連続で減少<前月は0.8万人減、6ヵ月平均は2.2万人増)

財生産業は前月比1.6万人減と、前月の16.6万人増(修正値)より弱く過去4ヵ月間で3回目の減少となった。業種別をみると、製造業が最も落ち込みが大きく3ヵ月ぶりに減少。建設は横ばいにとどまり、鉱業/伐採は、3ヵ月ぶりに増加した。詳細は、以下の通り。

(財生産業の内訳)

・鉱業/伐採 0.2万人増、3ヵ月連続で増加(石油・ガス採掘は1,500人増)<前月は1.5万人増、6ヵ月平均は0.4万人増
・建設 横ばい<前月は9.7万人増.、6ヵ月平均は2.1万人増
・製造業 1.8万人減、3ヵ月ぶりに減少<前月は5.4万人増、6ヵ月平均は2.2万人増

チャート:4月のセクター別増減

(作成:My Big Apple NY)

チャート:労働市場は改善続くも、どの業種もコロナ前の回復に至らず

(作成:My Big Apple NY)

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